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日堂探偵事務所のお仕事

登場人物:4人(男:2人 女:2人)

・日堂  …女性

・九鬼  …男性

・佐藤健介…男性

・佐藤美紀…女性

SE ドアの開く音

美紀「すみません、こちら日堂探偵事務所で間違いないでしょうか?」
九鬼「ようこそお越しくださいました、依頼者様ですね?どうぞどうぞ」
美紀「あ、ありがとうございます。あの、貴方が日堂探偵さんでしょうか?」
九鬼「いいえ、私は九鬼、この探偵事務所で助手をさせてもらっています」
美紀「あら、失礼しました。とても探偵らしい見た目をなさっているからあなたが所長さんなのかと」
九鬼「所長である日堂はですね…おっ丁度そろそろですね」
美紀「重役出勤ですか?」
九鬼「いえ、下校時間です」
美紀「下校時間!?」
日堂「九鬼!帰ったぞ!」
九鬼「所長、今来客中ですよ」
日堂「おお、そうか。ではでは依頼人殿、こちらへ座るが良いぞ」
美紀「あの…小学生…なのですが」
九鬼「ええ、小学生ですが、うちの所長です」
美紀「えぇ……」
九鬼「ちっちゃいですが優秀ですよ、うちの所長は」
日堂「今私のことをちっちゃいとかなんとか言わなかったか?」
九鬼「聞き間違いでしょう。少々チャイについてお話していたので」
日堂「そんな話はどうでもいいから早く依頼人を椅子に案内しろ、馬鹿者」
九鬼「おっと失礼いたしました。こちらへどうぞ」
美紀「え、ええ」
九鬼「私はお茶など淹れてきますのでお話は所長へとお願いしますね」
日堂「うむ、それでは話を聞こうか。依頼主の…」
美紀「佐藤です」
日堂「佐藤。それでどのような依頼で?」
美紀「はい、実は私の夫の事なのですが」
九鬼「浮気調査ですか?」
日堂「こら、九鬼。恐らくはほぼ間違いなくそうであろうが失礼であろう」
九鬼「おっと失礼いたしました。こちらアッサムでございます」
日堂「私は」
九鬼「はい、砂糖3つですね。依頼人様が佐藤だけに」
日堂「そのギャグを言うのは貴様で一万人目だ」
美紀「あの……」
日堂「おお、すまぬな、佐藤。うちの馬鹿が失礼をした」
美紀「いえ…その、お恥ずかしながら九鬼さんのおっしゃったとおり、うちの旦那がどうやら浮気をしているようでして」
九鬼「大当たり。景品はお褒めの言葉です」
日堂「あっぱれなり。それで、どうして佐藤は旦那が浮気していると?」
美紀「最近夫がスマホを眺めてはニヤニヤしている機会が増えまして」
九鬼「キッモ」
日堂「しっ」
美紀「それでですね。悪いとは思いつつ夫のスマホをこっそりのぞいたんですよ」
九鬼「うわっサイテー。おっと本音が出てしまいました、失礼」
美紀「最低なのは自覚していましたが、気になって気になって。なにもなければちゃんと後で謝るつもりでした」
日堂「なにかあったのだな?」
美紀「はい、そこにはですね…」

 

 

SE ドアの開く音

健介「ちょっと待ってくれ!」
美紀「あなた!」
日堂「誰じゃ?」
九鬼「流れ的に佐藤様の旦那様ではないかと」
健介「あれは浮気じゃないと何度も説明しただろう!こんな探偵なんかのところまできて恥ずかしい!」
九鬼「探偵”なんか”とは失礼ですねぇ」
日堂「貴様も失礼だからおあいこだろう」
美紀「いいえ、アレは絶対に浮気です。今からこの探偵に依頼して決定的な証拠をつかんでもらいますからね!」
健介「証拠なんて出てくるものか。そもそも浮気なんてしてないんだから」
美紀「じゃあいいじゃないですか。あなたの潔白を証明するために探偵さんに依頼しても」
健介「それは、その……お金とか、そう!依頼料がもったいないだろう」
九鬼「今完全に思い付きでしゃべりましたねこの人」
日堂「安心しろ、うちは格安で依頼を受けておるゆえ」
美紀「依頼料は私のヘソクリから出しますから大丈夫です。白黒はっきりさせましょう」
健介「いや、だからなぁ!」
九鬼「まぁまぁ佐藤様も旦那様も落ち着いてください」
日堂「うむ。感情的になっても良い事なぞないぞ?」
九鬼「とりあえずはお話だけ、無料でお聞きしますのでお話されてみてはいかがですか?解決したら成功報酬ということで」
健介「余計なお世話はやめてくれ。探偵なんぞに話せるか」
日堂「貴様今我々を馬鹿にしたか?死ぬか?あ?」
九鬼「所長、感情的になっても良いこと無いですよ」
美紀「聞いてください、この人のスマホを見たらですね…」
健介「あーあーあー!」
日堂「九鬼、黙らせろ」
九鬼「御意」
健介「んー!!んー!!」
美紀「この人のスマホを見たら可愛いアニメのキャラのTwitterに好きだよ、とか愛してるよ、とか言っていたんですよ!」
健介「んーーー!!!」
日堂「ん?」
美紀「それだけじゃないんです。そのアニメのキャラクターが動いてる動画?にも可愛い!とかエッチだ…とかコメントしたりですね?」
健介「んんーー!」
九鬼「あっはい」
美紀「挙句の果ては投げ銭?というのやグッズを買ったりで月に何万円もそのアニメキャラクターにお金をつぎ込んでいるんですよ?」
健介「んん……」
日堂「いや…それは…」
美紀「これって立派な浮気ですよね?ね?」
九鬼「違います」
美紀「え?」
九鬼「違います」
日堂「九鬼、その男が哀れになってきたから拘束を解いてやれ」
九鬼「はい」
健介「っぷはぁ!……はぁ…はぁ…」
日堂「佐藤よ……それはな……」
九鬼「所長、ここは私の方から」
美紀「浮気じゃないというならなんなんですか!」
九鬼「説明しましょう。それは所謂バーチャルユーチューバーと言われる存在で、簡単に言うとネット上、バーチャル空間に存在するアイドルのようなものです。つまりあなたの旦那様はアイドルにお金をつぎ込むドルオタ的なものでありそれは浮気とは言いません。だってあなたの旦那様がアイドルグッズを買ったりアイドルに可愛いとか好きとかのたまってもそれは浮気ではないでしょう?だからこれは浮気ではないんですよ。あなたの旦那様はバーチャルに恋するアレな人なだけで浮気はしておりません。良かったですね」
健介「何にも良くねぇよ!人が恥ずかしくて隠してるのに全部ばらしてくれちゃったよこの人!」
健介「あぁぁぁぁ!だから言いたくなかったのに!だから他所様に言ってほしくなかったのにぃぃぃぃ」
九鬼「いい具合に発狂しましたね」
日堂「哀れだな」
美紀「え…?浮気じゃ…無かったんですか?」
日堂「先程九鬼も言ったがな?これはアイドルに対する応援、エールのようなものでじゃな?浮気には結びつかぬのよ。その男が隠したがっておったのもオタク趣味がばれるのが恥ずかしかったからじゃろう」
美紀「そうだったの……貴方、ごめんなさい」
健介「許して…くれるのか?バーチャルな存在に好きだよとか言って月数万円も投げ銭する俺のことを…」
美紀「結婚するときに言ったじゃない、お互いの趣味は尊重するって」
健介「そう…だったな…そんな大切なことも忘れてたんだな、俺は」
美紀「これからは私もあなたの好きなものを理解するためにバーチャルユーチューバー?というものを見てみるわ」
九鬼「流れ変わりましたね」
日堂「良い話だったんだけどなー」
健介「それなら俺のお勧めのブイチューバーを紹介してやるよ」
美紀「それは素敵ね、それじゃあ帰りながらゆっくり話しましょう」
健介「ああ、このサバゲー大好きブイチューバーの……」

 

SE ドアの閉じる音

九鬼「あの……」
日堂「依頼料……」
 

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