top of page

この先の僕らは 3話

登場人物:4人 (男:2女:1人 不問:1)

・律     :不問

・宗明    :男性

・透夏    :男性

・冬希    :女性

宗明「…よぉ。」
透夏「ちゃんと来たんだね。えらいじゃないか。」
宗明「こんだけしつこく連絡されたら誰だって来るだろ。どうにかしやがれ。」
透夏「ははは、俺の手には負えないよ。さ、あがって。」

SE:玄関ドア閉める音

SE:ビニール袋の音

宗明「これ、お袋が持って行けって。」
透夏「お気遣いどうも。あとで頂くよ。…浴衣3着あるけど、どれがいい?」
宗明「なんでこんなにあるんだよ。」
透夏「毎年母さんが買ってくるんだ。中三からほとんど身長伸びてないのにね。」
宗明「ほーん…どれでもいいから、適当に着せてくれ。」
透夏「俺の趣味でいいってことかな?それとも似合うやつ?」
宗明「なんでも…いや、まあ、無難に似合うやつでいい。」
透夏「了解。脱いだ服はこれに入れて。」
宗明「おー。」
透夏「…髪はどうする?希望があれば聞くよ。」
宗明「別にこのままでもいいだろ。」
透夏「たまにはお洒落しなよ。もったいないだろう。」
宗明「めんどくせぇ。やるなら勝手にやれ。」
透夏「はいはい。」

SE:衣擦れの音

透夏「できた。そこの椅子座って。」
宗明「おー。」
透夏「…なんだか、昔を思い出すな。」
宗明「あ?」
透夏「みんなで海に行った帰り、冬希のついでに全員ドライヤーをかけてやったことが
   あっただろう。」
宗明「覚えてねぇよ。そんな前のこと。」
透夏「お前、最後まで嫌がってたんだぞ?俺は風邪ひかないからいいんだって。風呂嫌いの
   犬みたいだったよ。」
宗明「るせぇな。今は大人しくしてんだからいいだろ。」
透夏「ははは。確かに。…大きくなったね、宗。」
宗明「は?キショ。お袋かよ。」
透夏「前向け馬鹿。まだ終わってない。」
宗明「痛っ!首もげるだろうが!」
透夏「はははっ。」

 


SE:玄関チャイム
SE:玄関ドア開ける音

律 「遅くなってごめん!結構待ったよね。」
透夏「大丈夫。俺達もさっき終わったところだよ。冬希は?」
律 「最終調整中。お母さんがこだわり出しちゃってさ。」
透夏「はは。冬希はおばさんのお気に入りだからね。」
律 「ほんとごめんね…あれ、宗明!髪形がいつもと違う。」
宗明「こいつにやられた。」
律 「かっこいいよ!浴衣もすごく似合ってる!冬希が見たら喜ぶんじゃないかな。」
宗明「…そうかよ。」
透夏「律も似合ってるよ、俺のおさがり。」
律 「ぐっ…嬉しいけどなんか複雑だなぁ。僕も二人みたいに、すらっとかっこよく着こ
   なしたかったよ。」
宗明「ちっこいのも個性だろ。気にすんな。」
律 「気にするよ!というか、気にしてるんだから言わないで!」
透夏「律はそのままでいいんだよ。あ、ヘアピンつける?もっとかわ…魅力的になると
   思うよ。」
律 「いらないよ!二人して面白がってるでしょ!」
冬希「あれぇ?りっちゃんいじめてるの、だ~れだ?」
宗明「!」
律 「冬希!終わったの?」
冬希「うん。おばさんがすごく頑張ってくれたの。どう?」
透夏「よく似合ってるよ。なぁ、宗……」
宗明「……可愛いんじゃねーの。そら、行くぞ。」
冬希「やった~!花火楽しみだねぇ。」
宗明「引っ付くな!どうせお前はメシのことしか考えてねぇだろ。」
冬希「そんなことないよ?やきそば食べて、輪投げして、から揚げ食べて、ラムネ飲んで、
   それからぁ…」
透夏「……。」
律 「…透夏?どうしたの。」
透夏「あ、いいや、なんでもないよ。…行こうか。」

SE:歩き去る音

 


BGM:がやがや

律 「わぁ、結構人いるね。先に場所取りしたほうがいいかな?」
透夏「そうだね。屋台もそんなに遠くないし、このあたりにしようか。」
律 「じゃあシート敷くね。あ、重りしないと飛んで行っちゃうかな。」
透夏「俺見てるよ。ついでに荷物おいていく?」
律 「え…。」
冬希「お兄ちゃん行かないの?」
透夏「ああ、おつかい頼めるかな。」
冬希「いいけど、なんで?お兄ちゃん一人になっちゃうよ?」
透夏「気にしなくていいから。楽しんでおいで。」
冬希「でも…」
宗明「…行くぞ。腹減った。」
冬希「しゅーちゃん!」
律 「あ…買ったらすぐ戻るから!待っててね、透夏!」
透夏「ゆっくりでいいよ。気をつけて。」
透夏「……はぁ。」

 


律 「(透夏の様子がおかしい気がする。きっと、まだ悩んでるんだ。せめて気分転換が
    できるといいんだけど…)」
律 「…やっぱり僕、戻ろうかな。」
冬希「え?」
律 「ほら、二人ずつ行けば寂しくないし、お祭りも楽しめるかなーなんて。」
宗明「…。」
冬希「りっちゃん…じゃあ、そこのから揚げ買っていってあげて?ある程度見て回ったら
   戻って来るねぇ。」
律 「うん。楽しんできてね!」
宗明「……いっちょ前に気ぃ遣ってんじゃねぇよ。くそっ。」
冬希「やっぱりそう、なのかなぁ。」
宗明「…おら、さっさとやりたいことやって戻るぞ。どこ行く。」
冬希「…うん!まずはあそこの…」

 


透夏「(俺は結局、何がしたいんだろう。勝手に傷ついて、嫉妬して、逃げて。挙句みんな
    に気を遣わせている。)」
透夏「…いつからこうなったんだか。」
透夏「(冬希の小学校入学に合わせて引っ越しをした。隣の家へあいさつに行くと、ちょう
    ど同い年の律がいた。律は俺たちを気遣って、よく遊びに誘ってくれた。そこで
    出会ったのが───宗明だった。律の幼馴染。口調こそ荒いけれど、友達想いで、
    俺にはない自由さを持ったやつ。俺たちはすぐに仲良くなって…小・中と長い時間
    を共に過ごしたんだ。)」

(宗明「進路希望調査?あー。あったなそんなの。」)
(透夏「先生には進学校に行けって言われたんだけど…少し、悩んでいるんだ。」)
(宗明「そんなもん、行きたいところ書きゃいいだろ。先生はお前の人生保証してくれ
    ねぇぞ。」)
(透夏「!…そう、だね。はは。確かにそうだ。…宗はどこにするか決めた?」)
(宗明「さあな。特にやりたいことねぇし、律と同じところでいいんじゃねーの。
    近ぇし。」)
(透夏「ふーん。そうか。」)
(宗明「…キショ。なににやけてんだ。」)
(透夏「別に。なんでもないよ。」)

透夏「(気づいたときにはもう、好きだった。この先もずっと、そばにいられればそれで
    いいと思っていたはず…なのに。)」
透夏「(……髪、昔より硬くなってたな。)」
透夏「はぁ……気持ち悪。」
律 「透夏。」
透夏「!り、律。どうしたの。」
律 「から揚げ買ってきたんだけど…もしかして、体調悪い?」
透夏「いや、大丈夫。ありがとう。」
律 「無理しなくていいからね。いただきます。」
透夏「いただきます。」
律 「……。」
透夏「……。」
律 「…透夏。」
透夏「なに?」
律 「この前空き教室で話したとき、自分が変われば周りも…って言ったよね。」
透夏「ああ、うん。実はまだ…」
律 「ごめん!」
透夏「……え?」
律 「僕、考えが足りてなかった。そのままの透夏でいいはずなのに、変われなんて…
   それって、今の透夏を否定してるのと一緒だよ。」
透夏「そんな、律が気にすることじゃないんだ。これは俺の問題で…煮え切らないのは
   事実だし、律のアドバイスは間違ってないんだよ。」
律 「そうだとしても、僕は透夏を傷つけた。だから、ごめん。」
透夏「律……頭、あげて。俺は大丈夫だから。」
律 「……うん。」
透夏「少しだけ、聞いてもらってもいいかな。あまり面白い話ではないんだけど。」
律 「聞く。聞かせてよ。」
透夏「…俺、好きな人がいるんだ。そいつは俺のことを友達だと思っていて…俺も、
   そいつのそばに居られるなら、友達のままでいいと思ってた。」
律 「うん。」
透夏「だから、そいつに好きな人や恋人ができても、幸せを願おう、応援しようって
   思ってたんだ。でも…」
律 「…。」
透夏「…見ていられなかった。どうして俺じゃだめなんだ、俺ならこうするのに、
   って…でも、だめだ。敵わない。だって俺には…あんな表情、引き出せないから。」
律 「透夏…。」
透夏「なのに…諦められなくて……っ好きで、どうしようもなくて!……もう、わから
   ないんだ。」
律 「…辛いんだね。」
透夏「……。」
律 「透夏は、諦めたい?その人のこと。」
透夏「…好きでいたい。でも、こんなに苦しいのはもう、御免だ。」
律 「そっか。その人に、自分の気持ちを伝えたいって思ったりする?」
透夏「こんな感情…気持ち悪いだろう。重いし、きっと距離を置かれる。」
律 「そうかな。その人の考えはわからないから、ただの想像になっちゃうけど…自分を
   好きでいてくれる人って、結構貴重な存在、だと思うんだよね。ずっと想い続けるっ
   てなかなかできることじゃないし、気持ちを押し付けずに相手を尊重するのって、
   すごく難しいことだと思う。それを知っていれば、透夏が想いを伝えたとしても、
   気持ち悪いだなんて思わないんじゃないかな。」
透夏「…でも、負担になる。知らなければ余計なことを考える必要もないだろう。」
律 「余計かどうかはその人が決めることだよ。それに、伝えなかったら透夏の想いに
   向き合うこともできない。…透夏は隠すのが上手いから、きっと言われるまで
   気づけないんじゃないかな。」
透夏「……。」
律 「…なーんて、言えた口じゃないんだけどね。あはは。…僕もさ、日頃思ってても
   言えない事とかあるから、少しわかるよ。伝えるって勇気がいるし、間違えたら
   傷つけちゃうこともあるでしょ。だから怖くて。その点、ストレートにものが
   言える宗明たちは本当にすごいよ。尊敬する。」
透夏「…そうだね。」
律 「あ、一人で喋りすぎた…!話聞くはずだったのに、ごめん!」
透夏「いや、いいんだ。なんだか少し、すっきりしたよ。ありがとう。」
律 「そう…?そっか。それならよかった。」
透夏「から揚げ、冷めても美味しいね。」
律 「これも食べる?甘辛ソース味。」
透夏「ありがとう。俺のも食べていいよ。」
律 「うん、ありがとう。」
冬希「二人とも~!ただいまぁ。」
律 「おかえり。わぁ、大漁だね。」
冬希「みんなで食べようと思って~。お兄ちゃんどれがいい?」
透夏「ああ。焼きそば、貰おうかな。」
冬希「はぁいどうぞ。りっちゃんは?」
律 「うーん、どれにしようかな…」
宗明「…透夏。」
透夏「ん、どうした。」
宗明「悪かったな。気ぃ遣わせて。」
透夏「…何の話かな?」
宗明「気にしてねぇならそれでいい。それなりに楽しめたから、その……感謝してる。
   そんだけだ。」
透夏「……宗。俺も───」
宗明「あ?」
透夏「俺も、お前に伝えておきたいことがあるんだ。あとで時間もらってもいいかな。」
宗明「…わかった。話すときNINEくれ。」
透夏「ああ、ありがとう。」

BGM:花火

律 「わ、始まった!」
冬希「綺麗…来てよかったねぇ。」
宗明「ふん。」
透夏「…写真、撮ろうか。花火を背景にしてさ。」
律 「いいね!冬希撮ってよ。」
冬希「ふふん。インカメはお任せあれだよぉ。みんな集まって~。」
宗明「暑ぃ。くっつくな。」
透夏「結構寄らないと入らないんだよ。ほら詰めて。」
律 「宗明見切れてるよ。ほらこっち。」
宗明「くそっ…。」
冬希「撮るよぉ?はぁい、ちーず!」

SE:写真撮る音
BGM:遠のく
 

© 2023 EK(著作権表示の例)Wix.comで作成されました。

  • w-facebook
  • Twitter Clean
  • w-flickr
bottom of page