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​絡々

登場人物:12人 モブ多数(男:3 女:1人 不問:8人)

・ウォーカー/デューク  :男性

・ヴィンス        :男性

・少女/ニーナ      :女性

・ロレンツォ       :不問

・ゲイツ         :不問

・上司          :不問

・同僚          :不問

・同僚②         :​不問

・同僚③         :不問

・被害者         :不問

​・被害者②        :不問

・男           :男性​

少女   「っあ、ああああああ!」
ヴィンス 「ははは…あっはっはっはっはっは!!!!」※まで裏で続ける
少女   「(許さない…絶対に殺してやる!)」※


ロレンツォ「世間を騒がせている連続失踪事件、進展はあったのかい。」
ゲイツ  「どうも犯人のしっぽが掴めないらしい。恐ろしいね~。」
ロレンツォ「僕が見た雑誌ではエイリアン説もあがっていたよ。」※2
ゲイツ  「未知との邂逅か!それならちょっとワクワクできるんだけどね~。」※3
ウォーカー「はぁ、くだらん。」

SE:ページめくる音

ウォーカー「(”Kタウン連続失踪事件、犯人は権力者!?政界との癒着も…”じゃねぇよ。ロクな調査もせずに適当こきやがって。)」※2※3
ウォーカー「…はぁ。」

SE:雑誌を閉じてがさごそを支度をする音※4

ロレンツォ「さて続いては話題の新作、舞台『エーリッヒより愛を込めて』からヴィンセント=ウッドの登場だ!よろしくヴィンス。」
ヴィンス 「会えて嬉しいよロレンツォ。それにゲイツ。楽しい時間を過ごそう…」※4

SE:ドアを閉める音

 


SE:がやがや

上司   「ウォーカー!あのゲロみてぇな原稿はなんだ!」
ウォーカー「事実を書いた。」
上司   「その結果が”何もわかりません”か?小学生でももっとマシなもんが書けるぞ老いぼれ野郎。うちはシケたニュースなんて扱ってねぇんだよ。とっとと失せな。」
ウォーカー「そんなこと言われなくてもこっちから…」
上司   「目ェ引くようなタイトル持って来いよ。今日中だ。16時には戻るからデスクに置いておけ!」
ウォーカー「…ちっ。」
同僚   「お、ウォーカーいいところに。これ編集長のところまで運んでくれ。あ!ルイス~!一緒にモーニング行かない?」
同僚②  「ウォーカー!昨日頼んだ資料どこに…なんだそのデカい包み。パシりか?笑えるな!」
同僚③  「ちょっと触らないで。ぶつかっただけ?嘘よ編集長に言いつけるわ。」
同僚   「ウォーカーついでにこれも」
上司   「ウォーカーまだ終わってねぇのか!15時には戻るって言っただろ!」
同僚③  「ウォーカー。」
同僚②  「ウォーカー。」
全員   「「「ウォーカー。」」」

 


SE:歩く音

ウォーカー「(…疲れた)」

SE:ぶつかる音
SE:退職届が落ちる音

ヴィンス 「おっと。すまない。」
ウォーカー「ああ。」
ヴィンス 「ん、何か落としたようだよ。封筒?…これは。」
ウォーカー「ただのゴミだ。ぶつかって悪かったな。」
ヴィンス 「…いい仕事が見つかることを祈っているよ。」

SE:歩く音

ウォーカー「(妙な奴もいたもんだ。ただの通りすがりに……いや、俺の周りがクソな
       だけか。)」


上司   (「うちはシケたニュースなんて扱ってねぇんだよ。とっとと失せな。」)
同僚②  (「パシりか?笑えるな!」)
同僚③  (「嘘よ編集長に言いつけるわ。」)
上司   (「まだ終わってねぇのか!15時には戻るって言っただろ!」)


ウォーカー「……さっさと辞めてぇな。辞めて、どこか遠くにでも…」
ヴィンス 「それなら、うちにくるかい?」
ウォーカー「…は。」

SE:電気棒
SE:倒れる音

 


ウォーカー「……んん。」
ウォーカー「(どこだ、ここ。俺は何を……)」
ウォーカー「!?」
ウォーカー「(な、拘束されて…!)」
ヴィンス 「おはよう。気分はどうだい?」
ウォーカー「お前…誰だ。何のつもりでこんなことを。」
ヴィンス 「君が仕事を辞めたいとぼやいていたから。ちょうどいいと思ってね。」
ウォーカー「!あの時の…なんだ。人を攫って転職案内か?クレイジーが過ぎるぞ。」
ヴィンス 「まさか。僕はただおもちゃの調達をしただけだよ。」
ウォーカー「は…」

SE:電気棒

ウォーカー「!?……ああ!」
ヴィンス 「先日廃品所で見つけてね。まだ使えそうだったから拾って来たんだ。キャトル・プロッドって言ったかな。」

SE:電気棒

ウォーカー「ああ!……っは……っは。」
ヴィンス 「家畜用らしいんだけど。どうかな。前回の子は痙攣したっきり喋れなくなってしまってね。感想を聞きそびれたんだ。」
ウォーカー「(こいつ、まさか…)」
ウォーカー「…Kタウン、連続失踪事件は…お前、の仕業か。」
ヴィンス 「世間ではそう呼ばれているらしいね。うーん。次は足かな。」

SE:電気棒

ウォーカー「っぐ!……っはぁ……くそっ。」
ヴィンス 「まだまだいけそうだね…腕。」

SE:電気棒

ウォーカー「っ!!!!……った……は……。」
ヴィンス 「腿。」

SE:電気棒

ウォーカー「っあ”ぁ!!!!……っは……っ。」
ヴィンス 「盛り上がって来たね!次はどうしようか…」
ウォーカー「(だめだ、死ぬ。殺される。うまく息ができない。どうしてこんな…)」
ヴィンス 「肩。」

SE:電気棒

ウォーカー「!!!!!!……ひゅ……っ……ぁ……。」
ウォーカー「(クソみてぇだ。ただ消費されるだけの、空っぽな…)」
ヴィンス 「首。」
ウォーカー「(くだらねぇ人生だった。)」
少女   「(要らないなら貰うわよ、その体。)」
ウォーカー「…は。」

SE:電気棒

ヴィンス 「……壊れてしまった。結局感想は聞けなかったな。残念。」
ウォーカー『…っ最悪の、気分よ。』
ヴィンス 「ああ!まだ生きていたんだね!素晴らしいよ。早速続きを…」
ウォーカー『よくも、あたしを…殺してやるわ。絶対に、あんたを…!』
ヴィンス 「(!さっきとは雰囲気が…)」
ヴィンス 「君は何だい?二重人格なのかな。」
ウォーカー『忘れたの?あんたが、殺したんでしょ。ネロのこと、知ってるって言うから…信じたのに。』
ヴィンス 「!」
ウォーカー『許さない。殺して、やる……絶対に、ころ、して……』
ヴィンス 「……驚いた。まさか君、あの色白の子かい?すごいね幽霊が存在するとは思わなかったよ!憑依って言うんだろうそういうの。主人格は消えてる?共存してる?体の主導権は完全に握れているのかい?」
ウォーカー「……。」
ヴィンス 「…ふむ。起きてからのお楽しみとしよう。これは楽しくなりそうだ!」

 


ウォーカー「…んん。」
ヴィンス 「おはよう。気分はどうだい?」
ウォーカー「!?っああああ!」
ヴィンス 「元気そうでなにより。残念ながら仕事でね。質問の続きは帰ってからにするよ。ここにあるものは自由に食べてくれ。じゃあね、いい子にしているんだよ。」

SE:ドア閉める音
SE:施錠

ウォーカー「…なんで生きてるんだ、俺は。」
少女   「(しぶとくて羨ましいわ。大人って得ね。)」
ウォーカー「!?…誰かいるのか?」
少女   「(え、覚えてない?昨日あんたにとり憑いたんだけど。こんな感じで)」
ウォーカー『うわ、動かしにくい。まだ痺れてるのね。』
ウォーカー「(どうなってるんだ。勝手に動いて…昨日の拷問でイカれたか?)」
ウォーカー『そうかもね…うーわパンしかない。せめてジャムとか置いておいてよ。』
ウォーカー「(おい食うな。俺の身体だぞ?毒が入っていたらどうする。とにかく返せ。)」
ウォーカー『嫌よ。あいつにやり返すんだから。お腹空いてたら勝てないでしょ。あー』
ウォーカー「(おいやめろ。食うな!)」
少女   「(っわ!)」
ウォーカー「……は。戻った、のか。」
少女   「(ちょっと何すんのよ!返して!)」
ウォーカー「俺の身体だって言ってんだろ!…はぁ。なんなんだお前は。」
少女   「(あんたと同じ、あいつの遊びに付き合わされたのよ。ヴィンス…なんだっけ。最近人気の人。)」
ウォーカー「ヴィンセント?……まさかヴィンセント・ウッドか?舞台役者の。」
少女   「(それよ!あいつに騙されて、奪われたの。だからあたしも奪う。泣いて叫んでも許してやらないんだから。)」
ウォーカー「俺の身体で、か?勘弁してくれ。幽霊ならもっと超常的な力でどうにかしろ。」
少女   「(ちょうじょ……なに?)」
ウォーカー「あぁ?……お前何歳だ。」
少女   「(10歳だけど。なによ。)」
ウォーカー「いや…とにかく殺すのはなしだ。生き残ることだけ考えろ。」
少女   「(なんで。あんな酷いことされて、やり返したいって思わないの?)」
ウォーカー「うるせぇ。この話は終わりだ。」
少女   「(はぁ?勝手に終わらせないでよ!そっちがその気なら…)」
ウォーカー「(なっ!)」
ウォーカー『あたしも勝手にさせてもらうから!もぐもぐ。もぐもぐ。ごっくん。』
ウォーカー「(こいつ…!)」
ウォーカー『どのみち食べなきゃ死ぬのよ。そんなこともわかんないの?おじさん。』
ウォーカー「(ふざけんな。考えなしに行動したらどうなるか)」
ウォーカー『ひよってるよりマシでしょ!さっさとここを、出て……あれ。』
ウォーカー「(やっぱり毒か…!)」
ウォーカー『力が入、らな……』

SE:倒れる音

 


SE:開錠
SE:ドアを開ける音

ウォーカー『…んあ。誰…』

SE:ドアを閉める音
SE:施錠

ヴィンス 「ただいま。よく眠れたかな。」
ウォーカー『っヴィンセント!』
ヴィンス 「おや、いつ名前を?まあいいか。少し手伝ってくれないかい?今日のおもちゃは重くてね。運ぶのは骨が折れそうなんだ。」
ウォーカー『殺す!!!!…っあ!』
ヴィンス 「わあ、大丈夫かい?君じゃ話にならなそうだ。彼を出してくれるかな?」
ウォーカー『嫌よ。ここで、あんたを……っなんで動けないの!』
ヴィンス 「ふむ。仕方ない。じゃあここでやろう。」

SE:鎖の音

ウォーカー『は、何するの…。』
ヴィンス 「今は手持ちがこれしかないからね。取りに行くのも面倒だ。ほら、起きてごらん!」

SE:鎖で殴る音

被害者  「っ!んんんん!ん……っん。んん!」
ヴィンス 「おはよう。今日は見物人もいるんだ。楽しませてくれよ?」
被害者  「んん!んん!」
少女   「(最悪…見てらんない!)」
ウォーカー「……っは、おい。なんだこれ。」
ヴィンス 「やあ。どの程度で骨が折れるのか試そうと思ってね。君も見ているといい。」
ウォーカー「おいやめろ。なんでここで。」

SE:鎖で殴る音

被害者  「んんんんんん!!!!」
ヴィンス 「あはは!愉快だね。」

SE:鎖で殴る音

被害者  「んん!!!!……んんんんんんんんんん!!!!」
ヴィンス 「折れたかな?じゃあ次は…」
ウォーカー「……ははっ。」
ヴィンス 「!……楽しいかい?いいね!僕も気分がノッてきたよ!はは!あはははは!」※5 拷問続ける
ウォーカー「はっ。ははは!ははははは!」
ウォーカー「(俺は、どうして笑っている?おかしくなっちまったのか?違う。安心したんだ。あいつの標的じゃなくなったことに、安堵した。最低だな。でも、誰だって死にたくないだろ。痛いのも辛いのも嫌なもんだ。何もできなくていい。ちっぽけな正義なんてここじゃ何の役にも立たない。生きていればいい。俺が生きていれば、それで…)」※5

SE:鎖で殴る音

ヴィンス 「……ふぅ。だいぶ散らかしてしまったね。片付けないと。手伝ってくれるかい?」
ウォーカー「…拒否したら殺すのか?」
ヴィンス 「気分によっては、ね。」
ウォーカー「…。」
ヴィンス 「君は物分かりがいい。彼女とは大違いだ。…時間をあげるよ。ついでに彼女にも
      理解してもらおう。少し辛いかもしれないけど、付き合ってあげてくれ。」

 


ウォーカー「(…どれだけ時間が経ったんだろう。あいつも最初は騒いでいたのに、もうずっと静かだ。体が重い。視界が、焦点が合わない。俺は死ぬのか。ずっと同じ事を。同じことが頭を巡って…思考がまとまらない。ああ、眠い。一体どれだけ時間が…)」

SE:開錠
SE:ドアを開ける音

ウォーカー「!……っ。」
ヴィンス 「やあ。ちゃんと生きているね。」
ウォーカー「……み、ず…。」
ヴィンス 「さて、もう一度聞こう。僕の手伝いをしてほしい。どうかな?」
ウォーカー「(拒否権は、ない。)」
ウォーカー「…ぁぁ。」
ヴィンス 「彼女はなんて?…ああ、表に出る余裕もないか。二人の総意ってことでいいかな?」
ウォーカー「ぅ……ん。」
ヴィンス 「そう言ってくれると思っていたよ!さあ、食事にしよう。シャワーを浴びて、服はこれに着替えるといい。今日から君たちは家族だ。」
ウォーカー「(家族?)」
ヴィンス 「そうだ、名前を付けよう。君たちって呼ぶのも不便だからね。そうだな…君はデューク。彼女はニーナだ。」
デューク 「……。」
ヴィンス 「ハッピーバースデー、デューク、ニーナ。これからよろしく頼むよ。」

 


SE:パンを割く音

ヴィンス 「おはよう。だいぶ回復したみたいだね。」
デューク 「…そうでもねぇよ。」
ヴィンス 「数日前は喋る元気もなかったじゃないか。おかげで少し退屈していたんだよ。反応がないのはつまらなくてね。」
デューク 「(お前がやったんだろ。)」
ニーナ  「(あんたがやったんでしょ。)」
ヴィンス 「なんだい、じっと見て。僕の顔に何かついてる?」
デューク 「いや…お前、ヴィンセント・ウッドだろ。舞台役者の。」
ヴィンス 「ニーナから聞いたのかい?それとも職業柄知っていたのかな、ゴシップライター?」
デューク 「お前、なんでそれを。」
ヴィンス 「君の鞄から出てきたのさ。カメラやレコーダーと一緒にね。”Kタウン連続失踪事件、犯人は権力者!?政界との癒着も…”っく、あはは!面白いじゃないか。」
デューク 「そいつは俺の記事じゃない。他の…クソ野郎が書いたもんだ。」
ヴィンス 「もう君は記者じゃない。誰かの作為を気にする必要はないんだよ、デューク。」
デューク 「…。」
ヴィンス 「僕もここではただのヴィンセントだ。それ以上でも以下でもないよ。…仕事の時間だね。また帰ったら話そう。」

SE:ドアを閉める音
SE:施錠

デューク 「…おいニーナ。」
ニーナ  「(なによ。っていうかそれ、あいつが勝手につけた名前でしょ!やめてよ!)」
デューク 「お前の本名なんざどうでもいい。それより…お前の未練はなんだ。」
ニーナ  「(は?なんであんたに教えなきゃいけないの。)」
デューク 「内容によっては協力してやる。その代わり、俺の身体を乗っ取るのはやめろ。命がいくつあっても足りない。」
ニーナ  「(嫌よ。あいつをぶっ殺すんだから。)」
デューク 「馬鹿言うな。どんなクソ野郎だろうと奪っていい命ってのはないんだよ。」
ニーナ  「(む…じゃあ死刑にしてよ!警察にいって)」
デューク 「なんでこいつが捕まっていないと思う?少しは考えろ。いいか、警察やメディアなんてものは大して役に立たない。俺はよーく知ってる。」
ニーナ  「(大人のけーけんそくってやつ?呆れた。ビビってるだけじゃない。)」
デューク 「あの腐った上層部は金さえあればなんだってもみ消すんだ。この部屋を見ろ。設備が整いすぎてる。あいつをどうこうしようなんて馬鹿な考えは捨てるんだな。」
ニーナ  「(大人しくあいつの言いなりになれって言うの?冗談じゃないわ!あたしにはこのチャンスしかない。あんたの身体を使うしかないの!生きてるくせになんでそんなこともわかんないのよ!!)」
デューク 「生きてるからこそだ。この世に未練なんてこれっぽっちもないがそれでも、死にたくはない。本能だ。嬢ちゃんもそろそろ諦めて、成仏することに専念しろ。」
ニーナ  「(知らない!!ばーか!!!!)」
デューク 「……はぁ。なんだかな。」

 


SE:開錠
SE:ドアを開ける音

ヴィンス 「……。」
デューク 「遅かったな。…なんだよこの袋。」
ヴィンス 「好きに食べてくれ。僕はもう寝る。」
デューク 「あ?ああ……。」

SE:ドアを閉める音

ニーナ  「(酷い顔。クッタクタじゃない!いい気味ね!今ならあいつのこと)」
デューク 「やめとけ。殺されるぞ。」
ニーナ  「(っ!ねぇ、鍵閉め忘れてる!チャンスよ!追いかけて!)」
デューク 「は?……おいおい、まじかよ。」

 


ニーナ  「(ねぇ、あたし追いかけてって言ったんだけど。)」
デューク 「……。」
ニーナ  「(無視しないでよ!さっきからなにしてるの?逃げるならさっさと逃げればいいじゃない!)」
デューク 「うるせぇな。探しものだよ。」
デューク 「(せめてレコーダーがあればと思ったんだが…クソッ。こうも散らかってるときついな。)」
ニーナ  「(うわ、なんで服脱ぎっぱなしなのよ。ゴミだらけだし。大人のくせにだらしないわね。わぁ!そこなんか濡れてる!踏まないで!)」
デューク 「(うるせぇ…。)」
ヴィンス 「そこで何をしているんだい。」
デュ・ニ 「「(!?)」」
デューク 「あ、ああ。部屋の鍵、かけ忘れてたぞ。それよりお前、ふらついてるが。」
ヴィンス 「…疲れていてね。苛々が納まらないんだ。少し手伝ってくれないか!」

SE:掴みかかる音

デューク 「っ!おいお前!…この!!」

SE:突き飛ばす音
SE:倒れる音


ヴィンス 「…っ。」
ニーナ  「(今なら…!)」
デューク 『っはは!捕まえた!』

SE:首を絞める音

デューク 『最後のチャンスよ!ネロは、お兄ちゃんはどこ!答えないならお前を』
デューク 「(っ!やめろ嬢ちゃん!)」
ニーナ  「(ぐっ!)」
デューク 「っはぁ、はぁ…。」
ヴィンス 「…やめるのかい?」
デューク 「っ当然だ…誰かさんみたいに人を殺す趣味はないんでな。」
ヴィンス 「優しいね。」

SE:電気棒

デューク 「ぐっ…!」

SE:打撃音

デューク 「っかは!」

SE:倒れる音

 


デューク 『……んん。』

SE:鎖の音

デューク 『ん?…っ頭いたい。』
ヴィンス 「おはよう。昨日はすまなかったね。」
デューク 『!あんた、昨日はよくも!』

SE:鎖の音

デューク 『な、これ取れない。ちょっと、んあああもう!』
ヴィンス 「はしたないよニーナ。ほら、お腹すいただろう?食べるといい。」
デューク 『ふん…いつもパンだけ。お金持ちなんじゃないの?』
ヴィンス 「家事は不得手でね。誰か雇ってもいいんだが、詮索されるのはめんどうだ。」
デューク 『だらしな。大人のくせに。』
ヴィンス 「子供のあたしでもできるのに、って?ママ直伝の特別レシピでも振舞ってくれるのかな?」
デューク 『は?しね!!!!』
デューク 「……なんなんだあいつ。」
ヴィンス 「元気だね。子犬みたいだ。…デューク、どうして逃げなかったんだい。部屋の鍵は開いていたんだろう?まさか玄関が見つからなかったとか。」
デューク 「野暮用だ。」
ヴィンス 「ふーん。そういえば君がもっていたレコーダー。いまいち音が悪くてね。微妙だったよ。」
デューク 「使い方の問題だろ。ってか勝手に使ってんじゃねぇ。」
ヴィンス 「そうなのかい?じゃあ君が録ってくれよ。」
デューク 「俺は片付け以外了承した覚えはないぞ。返せ。」
ヴィンス 「ああ、後でね。今日は帰ったら買い物に行くよ。君たちも一緒だ。」
デューク 「は?」
ヴィンス 「いい子で待ってるんだよ。じゃあね。」
デューク 「ちょ、待てこれ外せ!これだとトイレに行けな…部屋に戻してくれ!おい!」

 


BGM:街のがやがや

デューク 「…はぁ。最悪だ。」
ヴィンス 「悪かったって。大丈夫、たとえ漏らしたとしても僕は気にしないよ。」
デューク 「俺が気にするんだよクソが。」
ヴィンス 「あはは。小鹿みたいに震えていて、とても愉快だったよ。またやろう。」※6

 

(ヴィンス「つんつん。つんつん。つんつん。」)
(デューク「おいやめろ!う!ああ!」)※6


デューク 「断る。」
ヴィンス 「それで、どうだい?久々の街は。」
デューク 「…別に何も。それより、雑すぎやしないか、その変装。人気俳優様だろ。」
ヴィンス 「もっとがっつりやるときもあるけどね。今日はいいんだ。」
デューク 「はぁ。」
ニーナ  「(ねえなんで買い物なんか付き合ってるの。逃げればいいじゃん。)」
デューク 「(逃げようもんならすべての責任を押し付けられて俺がお縄になる。俺とあいつ、どっちの言い分を信じるかなんて考えなくてもわかるだろ。)」
ニーナ  「(弱虫。)」
デューク 「(冷静って言え。)」
ヴィンス 「なにが食べたい?今日は機嫌がいいからね。好きなものを買おう。」
デューク 「ブイヤベース。」
ヴィンス 「なんだいそれ。売ってる?」
デューク 「作る。食材買うぞ。」
ヴィンス 「あー、僕は料理ができないんだ。悪いが他のものに…」
デューク 「俺がやる。パン生活には飽きたんでな。」
ニーナ  「(あたしイカ入ってるのがいい!イカ!イカ!!!!)」
デューク 「はいはいイカな。わかったから頭ん中で騒ぐな。」
ヴィンス 「…。」

BGM:フェードアウト

 


SE:食器の音

ヴィンス 「器用なものだね。今度から調理は君に任せようかな。」
デューク 「家政婦かよ。」
ヴィンス 「うそうそ。頼むなら掃除や洗濯にするよ。」
デューク 「(同じようなもんじゃねぇか。)」
ヴィンス 「うん、美味しかった。ありがとう。少し失礼するよ。」
デューク 「ああ。」

SE:食事の音
SE:鎖の音

デューク 「食いづれぇ。」

 


SE:食器が落ちる音(食材ぶちまける音)

(男   「おい!!食べ物粗末にしていいとでも思ってんのかこのクソガキ!!!!」)
(ヴィンス「あああ!…っごめ、ごめんなさい。」)
(男   「いいか、全部残さず食べろよ。終わるまでここから離れるな。床にシミが残ってようもんなら…わかってるよな。」)
(ヴィンス「はい。すぐに片付けます。一滴残らず、綺麗に…。」)
(男   「いい子だ。手は使うなよ。じゃあな。…さあ行こう、マイスイート。ああ?大丈夫放っておけばいい。それよりも…なあ、いいだろ?早くいこうぜ。」)
ヴィンス 「はぁ、はぁ……は……っうぷ。」

 


デューク 『おいしかったー!お片づけはあたしがやってあげるよ。』
デューク 「(俺の身体なんだがな…。)」
ヴィンス 「戻ったよ。片付けは後にして、ついておいで。」

SE:鎖をいじる音

デューク 『は?ついていくって、どこに。』
ヴィンス 「食後の運動だよ。」

 


被害者② 「あああああああああああああ!!!!」
デューク 「俺がここにいる必要はないだろ!」
ヴィンス 「あるよ。君の反応も含めて楽しんでいるんだ。」
デューク 「こいつ…おい嬢ちゃん!しっかりしろ!」
ニーナ  「(最っ悪!!!!なんで食後にこんなもの見せられなきゃいけないのよ!!!!)」
ヴィンス 「あははは!せーの!!!!」
被害者② 「ひああああああああああああああああああああ!!!!」
ニーナ  「(やめてよその悲鳴!!嫌!聞きたくないの!!!!やめて!!!!)」
デューク 「クソッ…こいつら…。」
ヴィンス 「あはは!あはははははは!!!!」※7
被害者② 「っああ!!!!ぐっ!あっ!あああああああああああああ!!!!」※8
ニーナ  「(やめて!!!!やめてよ…ねえ、ねええええ!!!!)」※9
デューク 「う……ぁ……あああああああああああああ!!!!」※7,8,9

 


BGM:焼却炉の音

デューク 「もういいだろ。話せよ嬢ちゃんの目的。」
ニーナ  「(……。)」
デューク 「これからずっと、こんな光景見せられるんだ。嫌だろそんなの。早く楽になれ。本当なら嬢ちゃんはとっくに自由なはずなんだ。」
ニーナ  「(あいつに復讐したい。)」
デューク 「この期に及んでまだそんな…無理だ。本当のことを言え。」
ニーナ  「(本当よ。あいつに復讐して…お兄ちゃんを見つける。お兄ちゃんとあいつ、友達だったから。)」
デューク 「どういうことだ。」
ニーナ  「(突然、お兄ちゃんが消えちゃったのよ。友達のところに行くって言って。それがあいつ。家の場所は知らなかったから、あちこち探しまわって…やっと見つけたの。そしたら、お兄ちゃんの居場所を知ってる、案内するから着いてきてって言われて…あとは知ってる通りよ。)」
デューク 「結局、兄貴の居場所は教えてもらえなかったわけか。」
ニーナ  「(うん。だからあいつを始末するしかないの。お葬式を開けば、お兄ちゃんに会えるかもしれないでしょ。)」
デューク 「そうはならないだろ。兄貴の居場所がわかればいいなら、他にもやれることはある。」
ニーナ  「(なんなの、そうやってあたしの邪魔ばっかりして!あんたどっちの味方なわけ?)」
デューク 「人殺し以外のことなら協力してやる。俺は…人間を辞めるつもりはない。」
ニーナ  「(じゃあ今やってるこれはなに?人殺しの手伝いでしょ!)」
デューク 「そうだな。でもやらないよりいい。俺にとっては、これが弔いだ。見ていることしかできなかった。その贖いだ。」
ニーナ  「(なにそれ。難しいこと言わないでよ。わかんないでしょ…。)」

 


デューク 「ここ数日ずっと家にいるな。仕事はどうしたんだ。」
ヴィンス 「飽きが来てね。長期休暇だよ。」
デューク 「そうか。俺もそろそろ飽きが来た。ここはラジオとかないのか?」
ヴィンス 「あるよ。何が聴きたいんだい?」
ニーナ  「(音楽。)」
デューク 「情報ならなんでもいい。」
ニーナ  「(ちょっと!)」

SE:ラジオ回す音

ロレンツォ「…ースを伝えないわけにはいかないよ。彼も例の事件に巻き込まれてしまったのかい?」
ゲイツ  「まだ定かじゃないらしいがね~。ヴィンスが怪しげな男と歩いている姿を目撃した人もいるようだ。一体どこに消えたのかね~。」
デューク 「は……消えた?お前まさか…!」
ヴィンス 「ナイスタイミング。いいシナリオだろう?相次ぐ失踪事件、巻き込まれた人気俳優!直前に接触していた謎の男、その正体は…?」
デューク 「クソッたれ。何が長期休暇だ。」
ヴィンス 「あはは。この鎖ももう必要ないね。外してあげよう。うーん。捨てるのは勿体ないし次のおもちゃ用にとっておこうか。」
デューク 「俺らはもう用済みってことか。」
ヴィンス 「まさか。君たちの意思に委ねるだけさ。賢い君なら、わかるだろう?」
デューク 「それはお前の返答次第だな。」
ヴィンス 「うん?」
デューク 「ネロという男と知り合いらしいな。どこにいる?」
ヴィンス 「なぜ君がそれを?ニーナの頼みかい?」
デューク 「こいつが会いたいってうるさいんだよ。会わせないならお前をぶち殺して葬式に呼ぶってな。」
ヴィンス 「っあはは!僕の葬式には来ないよ。そもそも、関係の深い人しか呼べないだろうしね。でも……うん。そうだね。いいよ、彼を連れてこよう。」
ニーナ  「(!)」
デューク 「本当か。」
ヴィンス 「ああ。午後にでも会えるようにセッティングしよう。少し待っていてくれ。」

 


SE:足音

デューク 「裏にこんな場所があったのか。」
ヴィンス 「使われなくなった教会でね。改築したんだ。ロマンチックだろう?」
デューク 「ウェディングじゃねぇんだぞ。ったく…嬢ちゃん、出てこい。」
デューク 『……。』
デューク 「(さっきまでの威勢はどうした。)」
デューク 『こんな、あっさり。』
デューク 「(まあ、言いたいことはわかるが…仕方ないだろ。会えるだけ御の字だ。)」
ヴィンス 「入らないのかい?」
デューク 『…入るわよ。やっとここまで来れたんだから。』

SE:重い扉が開く音

デューク 『…誰もいないじゃない。ちょっと、また騙したの!』
ヴィンス 「まさか。ちゃんと奥にいるよ。ほら。」
デューク 『はぁ?奥ってどこ、に……え?』
デューク 「(おい、まさか…!)」
ヴィンス 「組み立てるのに苦労したよ。いくつか骨が足りなかったから、スーツで着飾ってもらったんだ。オシャレだろう?」
デューク 『ッヴィンセントオオオオオオオオオ!!!!』

SE:殴る音

ヴィンス 「っ……会えてよかったじゃないか。これで未練はなくなったかな?」
デューク 『っはぁ……っは……はぁ……ぅ……あああ。』
ヴィンス 「そうか、よかった。」
デューク 「(……クソッ。)」
デューク 『…………埋める。花も、供えて。』

 


ヴィンス 「その花は?」
デューク 『裏庭に咲いてたの。お兄ちゃんが好きだった花よ。』
ニーナ  「(遅くなってごめんね。今行くよ。お兄ちゃん。)」

SE:風が吹き抜ける音

ヴィンス 「成仏したのかい?」
デューク 「ああ。嬢ちゃんの…ニーナの遺体はどこにある。」
ヴィンス 「灰にして撒いたよ。君が来る少し前にね。」
デューク 「…そうか。」
ヴィンス 「彼女はずいぶん怒っていたようだけど、君は違うんだね。」
デューク 「お前が誰を殺してようと、今更驚かねぇよ。」
ヴィンス 「へぇ。怖くはないのかい。ニーナが消えて、面白みのなくなった君を、僕は処分してしまうかもしれないよ?」
デューク 「それならそれでいい。もちろん抵抗はするがな。どのみちここから逃げたところで犯罪者扱いだ。だったらここでクソみてぇな生活送った方がマシだろ。」
ヴィンス 「賢い選択だね。今後もよろしく頼むよ。」
デューク 「……。」
ヴィンス 「食事にしよう。適当に何か作ってくれ。」
デューク 「自分で作れよ。俺のじゃ吐くだろ。」
ヴィンス 「おや、隠していたつもりだったんだけどね。」
デューク 「無理して人の作ったもん食うな。俺だっていい気分はしない。」
ヴィンス 「…はは。そうだね。今日のところはパンにしよう。でも、また何か作ってくれ。」
デューク 「それなりの食材があればな。」
ヴィンス 「ああ、楽しみにしているよ。…なにしてるんだい。」
デューク 「いや……好きな花を聞いておけばよかったと、思っただけだ。」
ヴィンス 「真面目だね、君は。」
デューク 「どうとでも言え。」

SE:風の音

デューク 「っ!花が…」
デューク 「(……いや、いい。もういいんだ。)」
デューク 「……じゃあな、嬢ちゃん。」

SE:足音遠ざかる

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