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​ ぎ せ い 

​新星記アドアリウス 第六話「記憶」

登場人物:5人(男:1人 女:2人 不問:2)

・クサナギ トウヤ …男性

・ヤサカニ タマキ …女性

・Dr.ヤマト     …不問

・カガミ司令     …女性

・オペレーター     …不問

トウヤ「クソッ!このままここを突破されたら街の皆がっ…」
タマキ「トウヤ君!私がアレを使うよ」
トウヤ「バカヤロウ!アレは使っちゃ駄目だって、スサ先輩が言ってただろ!」
タマキ「でも今やらなきゃ!今使わなきゃ皆死んじゃうんだよ?」
タマキ「司令室、サルガタナスシステム起動の許可を」
トウヤ「やめろ!使うなら俺が使う!ヤタ司令、俺に許可をくれ!」

 


-司令室-

 


カガミ「どう思う、ヤマト博士。今はその時か?」
ヤマト「トウヤ・クサナギ君にはクロニクルに従い最後の審判まで戦ってもらわなければなりません、今はもう一人の方に時間を稼いでもらいましょう」
カガミ「わかった…」
カガミ(私はまた…子供たちに背負わせるのか…)

 


-コックピット-

 


タマキ「司令室!もう持ちません!早く許可を!」
カガミ「わかった、アドアリウス2号機にサルガタナスシステム使用の許可を出す、直ちに敵を殲滅させろ。1号機は2号機の援護に回れ」
トウヤ「司令!なんで俺じゃないんですかっ!」
カガミ「指示に従え、貴様は援護だ」
タマキ「アドアリウス2号機、サルガタナスシステム起動!」
トウヤ「やめろぉ!タマキ!俺がやるつってんだろ!」
トウヤ「クソッ!なんで起動しねーんだよ!」
タマキ「敵対機体を確認、殲滅を開始します…」
トウヤ「止まれ!タマキィ!!」

 


-司令室-

 


オペレーター「アドアリウス、1号機2号機共に帰還しました」
カガミ「損失率は?」
ヤマト「90%超え…2号機のパイロットはもうそろそろ取り換えですなぁ」
カガミ「そうか…」

 


-格納庫-

 


トウヤ「タマキ!大丈夫かタマキ!」
タマキ「……」
トウヤ「どうした?ケガでもしたか?」
タマキ「トウヤ…君」
トウヤ「おう、トウヤ君だ。お前の幼馴染で同級生でいっしょにアドアリウスのパイロットやって地球の平和を守ってるクサナギトウヤ君だ」
タマキ「そう…だよね…あれ…?」
タマキ「…なんで…?なんで…?」
トウヤ「どうした、タマキ!」
トウヤ「司令!タマキの様子がおかしい!」
カガミ「落ち着け、クサナギ」
トウヤ「だって…」
カガミ「救護班、ヤサカニを医務室へ」
トウヤ「……」
カガミ「…あれはサルガタナスシステムを起動させた弊害だ」
トウヤ「どういうことだよ、あのシステムがヤバイってことはスサ先輩が言ってたけど…」
カガミ「サルガタナスシステムがアドアリウスの能力を飛躍的に伸ばすことはわかるな?」
トウヤ「それはヤマト博士から聞いています、けど、」
カガミ「ああ、強力なシステムには大きな代償が必要になる、ということだ。だから起動には司令室の許可がいる。いたずらに君たちの命を脅かすわけにはいかないからな」
トウヤ「命にかかわるようなことをタマキにさせたのかよ!」
カガミ「そうしなければ我々も、この街も消滅していた」
トウヤ「それなら俺で良かったじゃないか!なんでタマキが!」
カガミ「我々の判断だ、君に選ぶ権利はない」
トウヤ「なんだよそれ…ふざけんなっ!」
カガミ「…落ち着いてから医務室に行くといい、ヤマト博士からシステムについて詳しい話が聞けるだろう」
トウヤ「なんでタマキが…チクショウ…」

 

 

 

-医務室-
【ノック音】

 


トウヤ「失礼します…」
ヤマト「おお、来たかねクサナギ君待っていたよ」
トウヤ「タマキの具合はどうですか?」
ヤマト「うんうん、今は薬でゆっくり眠っているよ。ただこれ以上アドアリウスに乗るのは危ないだろうねぇ」
トウヤ「それは…どこか酷いけがでも?」
ヤマト「いやいや、正確にはアドアリウスには乗れるんだ、でもねぇサルガタナスシステムを起動することが難しいんだ」
トウヤ「サルガタナスシステムが使えないとアドアリウスには乗れないのか?」
ヤマト「ふむ…その辺君は理解していないみたいだねぇ。いいだろう、私が教えてあげよう」
トウヤ「いいのか?その辺は…守秘義務とか…」
ヤマト「私は常々ね、君たちが未来のために命を懸けてくれているのに、それに報いないのは間違ってると思っていたんだ。だから君たちには誠実でありたいと思っているんだよ」
トウヤ「ヤマト博士…ありがとうございます…」
ヤマト「いいんだよ、それが『大人』の務めだからねぇ」
ヤマト「さて、さっきも言ったがね?君は一つ勘違いをしているんだ、クサナギ君」
ヤマト「アドアリウスを動かす上でね、サルガタナスシステムは常に起動しているんだ」
トウヤ「それはどういう…」
ヤマト「そもそもアドアリウスの起動に関わっているブラックボックスに干渉しているのがねサルガタナスシステムなんだ、つまりシステムが起動していないとまずアドアリウスが起動しない」
ヤマト「で、だ。サルガタナスシステムは起動にとある『モノ』が必要となっていてね、普通にアドアリウスを起動するだけならばこの『モノ』はそんなに必要とされない、微々たるものだ」
トウヤ「とある『モノ』…」
ヤマト「うむ、しかしだねサルガタナスシステムの起動、こちらは本格起動、いわゆる励起状態にするとね、とたんに多くの『モノ』を喰らい出すんだ、サルガタナスというやつはね」
トウヤ「『モノ』を喰らう…」
ヤマト「この『モノ』の量、状態によってアドアリウスはその能力を強化していく、ということなんだよ」
ヤマト「いや、違うな。このサルガタナスシステムの励起状態こそが本来のアドアリウスなんだがね?あまりにも『モノ』の消費量が多すぎてパーツの換えが足りなくなってしまうんだよ」
トウヤ「それならそのパーツ取り換えればずっと強い状態で戦えるんじゃないのか?」
ヤマト「うんうん、その考えは正しい。だがね、残念なことにそのパーツは中々に生成に時間がかかってね?そうおいそれと交換できるのもではないんだ。だから仕方なく力を抑えた状態のアドアリウスで戦っているのだよ、我々は」
トウヤ「なるほど…大体分かった。それでタマキが戦えなくなったって言うのはアドアリウスのパーツが足りなくなったってことなのか?」
ヤマト「ははははは!君は中々に察しが悪いなぁクサナギ君?」
トウヤ「なんだよ…違うのかよ?」
ヤマト「このアドアリウス、いやサルガタナスシステムの起動に必要なパーツというのが君たちパイロット、ということだよ」
トウヤ「なにを…言って…」
ヤマト「君にもわかりやすく説明するとだねぇ?サルガタナスシステムの起動に必要な『モノ』というのはね?君たちの『楽しかった記憶』なんだよ」
トウヤ「は…?」
ヤマト「だからねぇ?サルガタナスシステムというのは君たちパイロットの記憶を喰い物にして動くシステムで、アドアリウスを動かす度に君たちパイロットはその記憶を削られていくんだよ」
ヤマト「それがシステム励起なんてした日にはそりゃあもう沢山の記憶を失うだろうねぇ?一回の起動で廃人にならなかっただけでももうけものだよ、ヤサカニ君はね」
トウヤ「テメェ!ふざけてんじゃねぇ!」
ヤマト「いやいや?大真面目だよ。この組織はこうやってパイロットたちの楽しかった記憶を喰い物にして世界を守っているんだよ。誇りたまえ!君たちの多大なる犠牲のおかげで今の世界は成り立ってるのだ!」
トウヤ「そんな!誰かを喰い物にした平和なんてっ!」
ヤマト「いやいやいや、冷静になって考えて見給え、トウヤ・クサナギ君。このご時世、世界中どこもレグナの脅威におびえながら暮らしている。そんな中、君たちパイロットは何の脅威もない、平和な生活を送ってきただろう?ついこの間まで」
トウヤ「それは…」
ヤマト「それはね?君たちパイロットに期待していたからこそなんだよ。アドアリウスのパイロットとして、サルガタナスシステムのエネルギー源として、君たちには多くの『楽しかった記憶』を持ってもらう必要があった」
トウヤ「おい…」
ヤマト「だからねぇ?先輩たちの『楽しかった記憶』を犠牲にして、君たち第二世代のパーツ、パイロット達が沢山の『楽しかった記憶』が貯まるのを我々は待っていたんだよ」
トウヤ「やめろ…」
ヤマト「君の先輩…スワ君だったかな?彼も立派に戦ったよ、君との『楽しかった記憶』を使い果たして廃人になるまで立派にねぇ!」
トウヤ「やめろっつってんだろうが!」
ヤマト「っぐっ……気が済んだかね?トウヤ・クサナギ君。君がどんなに怒ったところでこれが現実で、そうする以外に世界が救われる方法はないんだよ?私に怒るのはお門違いだ、だって私は組織の指示に従っているだけにすぎない、ただの一研究者なんだからねぇ?君もそこのヤサカニ君も、人類のために最後まで立派に戦ってくれたまえよ」

 


【立ち去る足音】

 

タマキ「トウヤ…君…?」
トウヤ「タマキ…目が…覚めてたのか…」
タマキ「トウヤ君…ごめんね……」
トウヤ「なんで…タマキが謝るんだよ?お前のおかげで俺も、街も救われ…」
タマキ「違うの…そうじゃないの…私ね…?トウヤ君との記憶が思い出せない…の」
トウヤ「えっ…」
タマキ「自分の事もトウヤ君の事も、みんなの事もちゃんと覚えてるの…でも一緒に学校に通った記憶や遊んだ記憶…全然思い出せないの…」
トウヤ「そんな…なんで…なんでっ!」

ヤマト(これがサルガタナスシステムに記憶を喰われる、ということだよ、クサナギ君)

タマキ「怖い…私すごく怖いよ…トウヤ君…大事な記憶が…思い出せないの…こんなので本当に私はヤサカニタマキなの…?私は私の偽物なんじゃないの…?」
トウヤ「なんでそんなこと言うんだタマキ!大丈夫だ!お前はちゃんとヤサカニタマキだよ!他の誰がなんと言おうと、俺が保証する!」
タマキ「本当に…そうなの…?大丈夫なの?私はヤサカニタマキで、本当にいいの…?」
トウヤ「大丈夫だ、だから後は俺に任せてゆっくり休みな?」
タマキ「うん…ありがとう…トウヤ君…」
トウヤ(これ以上タマキが戦ったらタマキがタマキじゃなくなっちまう。だから…俺は…)

 


-ヤタ司令官の個室-
【ノック音】

 


トウヤ「司令官、今お時間よろしいでしょうか?」
カガミ「クサナギか…いいぞ、入れ」
トウヤ「失礼します、早速ですが司令官…」
カガミ「ヤサカニのことか…」
トウヤ「はい、これ以上タマキをアドアリウスに乗せるのは止めてください。これ以上記憶を失ったらタマキがタマキじゃなくなっちまう」
カガミ「それを決めるのは君ではない」
トウヤ「なんでっ!なんでだよ!昔はあんなにタマキと仲良かったのに…あれも俺たちに『楽しい記憶』を与えるための演技だったのかよ!」
カガミ「違う…そうじゃない…」
トウヤ「だったらなんで!そんな酷いことが出来るんですか、あんた達はっ!」
カガミ「落ち着け、クサナギ」
トウヤ「どうせあんたたちにとって俺たちは只の使い捨ての部品なんだろ?だからそんなに冷たいことが出来るんだ!」
カガミ「……一つ、君に話しておくことがある」
トウヤ「なんだよ神妙な顔して…俺はお前たちのおためごかしに騙されないぞ」
カガミ「いいから黙って聞け、スサ…スサ・アラシの事を覚えているな?」
トウヤ「あんたからあの人の名前が出るとは思わなかったよ、今ならわかる。どうせあの人もあんたたちに利用されて、サルガタナスシステムに喰われちまったんだろ?」
カガミ「私とスサ…アラシは恋人同士だった」
トウヤ「…は?」
カガミ「当時私とスサ、それともう一人の三人で、アドアリウスのパイロットだったんだ、今のお前たちと同じようにな」
トウヤ「そんな…あんたが…?」
カガミ「私たちもその時はサルガタナスシステムの事は知らなくてな…ただがむしゃらに戦ってたら…気づいたら一人いなくなっていた」
トウヤ「……」
カガミ「そいつは周りの事を良く気にかけてるやつでな?私とアラシが喧嘩した時に良く仲介してくれたり、戦闘中も良く周りを見て私たちをサポートしてくれる奴だったんだ」
カガミ「だからだろうな…戦闘中、窮地に陥った私とアラシをかばうようにシステムを起動させて…そのまま『楽しかった記憶』だけでなくほとんどすべての記憶を失って、廃人のようになってしまった」
トウヤ「それが…俺たちパイロットの最後だっていうのかよ…」
カガミ「それで…システムの事を知った私は怖くて震えた…コクピットに座っても、アドアリウスを起動することが出来なくなってしまった」
トウヤ「そりゃ…そうだろ…俺だって今は怖くて次乗れるかどうかわかんねぇよ」
カガミ「でもな…アラシは違ったんだシステムの事を知っても、それでもあいつはアドアリウスを降りることなく戦った」
カガミ「私は聞いたさ、怖くはないのか?って。そしたらあいつ、なんて答えたと思う?」
トウヤ「俺には…わかんねぇ…」
カガミ「怖い、死ぬほど怖い。皆との楽しい記憶を忘れるのがこんなに怖いとは思わなかった。でもな?楽しかった記憶をくれた皆が死んじまうことの方が、その何倍も怖いんだ」
トウヤ「……」
カガミ「俺はここで皆を守るからさ?お前はその間、あいつらに…俺たちの次の奴らにもっとたくさんの『楽しかった記憶』を教えてやってくれ。きっとそれが、最後の最後誰かを守るために必要になるから。あいつらが本当に守りたいものを守りたいときに、絶対に必要になるから。だから、俺とお前とで、アイツらにもっともっと『楽しい記憶』を残してやろうなって」
カガミ「スサはそう言いながら戦って戦って戦って…後はお前も知っている通り、最後にはシステムに喰われて…いなくなった」
トウヤ「スサ…先輩…」
カガミ「お前がどう思おうともな、私にも預かった思いがあって、守りたい思いもある。そのために私は、心を鬼にしても戦い続けるよ。それがあいつが私に残してくれた、大切な思い出だからな…」
トウヤ「ヤタ司令…俺は……」
カガミ「クサナギ、貴様が本当にタマキの為を思うのならば、貴様は貴様のなすべきことを成せ、それがきっとタマキを守ることとなる」
トウヤ「……まだ納得はできない…けどあんたとスサ先輩の思いは…多分分かった…と、思う」
カガミ「そうか…」
トウヤ「気に入らねーけどな?いいよ、わかった。すまねぇな、司令官、しんどい話、させちまったな…」
カガミ「構わんさ、お前らにはアイツの思い、知っておいて欲しかったからな」
トウヤ「スサ先輩のおかげでさ、自分のやりたいこと、やるべきことがわかった気がするんだ。司令官、もう、タマキは戦わせないでくれ」
カガミ「クサナギ…それは…」
トウヤ「スサ先輩がそうだったように、俺もさ、俺たちの後に続くやつらを守りたい。俺だけじゃ、レグナの奴らをぶっ倒せないかもしれないけどさ、いつかきっと、俺たちの後輩がやってくれるって信じてる。だから俺は、そんな後輩たちの、『楽しかった記憶』が少しでも多くなるように戦いたいんだ」
トウヤ「でさ…やっぱりそれと同じくらいタマキの奴も守りたいんだ。多分さ、スサ先輩が司令官にそうだったように、俺もタマキにはずっと俺のことを覚えていてほしいんだ…それでさ、いつか後輩が迷っちゃったときにさ…俺みたいなカッコいい先輩がいたって、笑って話してほしい」
トウヤ「俺さ、多分アイツの事好きだから…うん、そう思っちまうんだ」
カガミ「ハァ…当事者でもないのに告白される私の身にもなってくれ…」
トウヤ「あっやっべぇ。今の無し!なーし!」
カガミ「まったくお前はいくつになっても……はぁ…しょうがない、なるべくならという条件付きでヤサカニは戦場には出さないと、そう一応約束しておいてやる」
トウヤ「ほんとうか!?」
カガミ「お前こそ本当にわかっているのか?ヤサカニが戦場に出ないということはその分お前が…」
トウヤ「大丈夫、わかってる。俺は、背負うよ。タマキの分も、スサ先輩の分も、そんで司令官の分もさ」
トウヤ「全部背負って、全部忘れるまで俺、全力で闘うからさ。だからその時までは頼むよ、カガミねーちゃん」
カガミ「その名前では呼ぶなと言っておいただろうが……まったく貴様といいスサといい都合のいい時だけ…」
トウヤ「ん?なんか言った?」
カガミ「何でもない…要件が終わったらとっとと自室に帰って休んでおけ」
トウヤ「うっす、失礼しましたっ」

 


カガミ(これではまるで詐欺師だな…詭弁と方便で子供を騙して諭して戦わせる……アラシ…これで本当に私は間違っていないんだろうか…)

 


-医務室-

 


トウヤ「うっす、タマキ。元気か?」
タマキ「うん…トウヤ君…なんか機嫌よさそう?」
トウヤ「ああ!ちょっとなんというか…うん、いい話が聞けたからな。いつかお前にも話してやるよ」
タマキ「うん…楽しみにしてるね…」
タマキ(サルガタナスシステム…『楽しい記憶』を喰らうシステム…このままだと私の大切な皆との…トウヤ君との『楽しかった記憶』が消えちゃう。でもトウヤ君の記憶から私が消えるくらいなら……私の記憶でトウヤ君を救えるなら…私はまだ…アドアリウスで戦える…)

 


ヤマト「さてさて、今度の子供たちは果たしてサルガタナスシステムの真理へとたどり着き、ソロモンの扉を開くことが出来るのか…楽しみですねぇ……あぁ早くあなたに会いたい…そのためなら私は…私は…」

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