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クリスマスの都市伝説

登場人物:5人(男:3人 女:2人  不問:複数人)

・小鳥遊多喜  …男性

・神宮詠    …女性

・小夜     …女性

・影      …男性

・サンタさん  …男性

・子供達(複数) …不問

小鳥遊「おつかれ、えっちゃん。」
神宮 「私の名前は詠です。えっちゃんじゃないって何度言えばわかるんですか、もう!」
小鳥遊「いーじゃんえっちゃん。呼びやすいし。」
神宮 「名前にはちゃんと意味があって大事なものだって、あなたも超常的なものに関わるなら知っているでしょう?」
小鳥遊「まぁまぁ、今は日常だから、な?」
神宮 「まったくもう!」
小鳥遊「そう言うなって。んでなんか依頼あった?」
神宮 「私はここの事務員じゃないんですけど?」
小鳥遊「いーじゃん別に。他に行くところなくてうちの事務所住んでんだし。自分ちの電話取るようなもんでしょ?」
神宮 「それを言われると心苦しいのですが…一応依頼のお手伝いはしてますから!ただ飯食らいみたいに言わないでくださいよ。あとうちの実家には電話なんてありませんでした。」
小鳥遊「あー…そっか。すまん。」
神宮 「いえ、今はこうして色々出来てるんですから。だからあなたがそんな顔する必要ないんですよ。」
小鳥遊「そっか、ならいいや。」
神宮 「はい。」


SE:ドアをノックする音


神宮 「どうぞ。」
小夜 「こんにちは…」
小鳥遊「おっ、こいつは小さいお客さんだ。一人かい?お父さんかお母さんは?」
小夜 「お父さんもお母さんも私のお話信じてくれないの。だから…」
小鳥遊「だからここに来たと。うん、ようこそ小鳥遊探偵事務所へ。その様子だとここがなにの専門なのかわかってるね?」
小夜 「うん。幽霊?の専門家さんだってしょーこちゃんが。」
小鳥遊「翔子の紹介か。なるほど。おっけー、んじゃ中に入って。えっちゃん、お茶となんかお茶菓子あったよな?それ出して。」
神宮 「だから私は事務員じゃないって…ああもうわかりましたよ!それより多喜君、ちょっと…」
小鳥遊「どうしたえっちゃん。」
神宮 「あの子、ちょっと変な感じがします。気を付けてください。」
小鳥遊「マジ?俺なんも感じねーや。」
神宮 「あなたはもうちょっとちゃんと修行とかするべきだと思いますけど?」
小鳥遊「まま、この事務所に入れてるんだから大丈夫だろ?」
神宮 「そうですね、この事務所の結界なら駄目なものは弾いてくれるはずですから。」
小鳥遊「そういうこと、ま、大丈夫さ。なんとかなる。」
神宮 「わかりました。そ・れ・と!えっちゃんではなく詠です。」
小鳥遊「へーへー。おっと待たせたな嬢ちゃん。こっちどうぞ。」
小夜 「うん。」


小鳥遊「それで?今日はどうしたんだ?」
小夜 「最近、ずっと誰かに追いかけられてるの。」
神宮 「追いかけられてる?それは警察の領分では?」
小鳥遊「いーから。そんで?」
小夜 「お母さんと一緒に居たときにもね、追いかけられてたからお母さんに言ったの。誰かついて来てるって。でも、お母さんは誰も居ないって。」
小鳥遊「ん?小夜たんにはそのついて来てるやつが見えてるのか?」
小夜 「たん…?うん、なんか影みたいなのがずっとついて来てるの。」
神宮 「後をつけてくる影……」
小鳥遊「その影はお母さんには見えないと。」
小夜 「うん…お母さんだけじゃなくて誰にも見えないの。あっ」
小鳥遊「どうした?」
小夜 「しょーこちゃんには見えてたみたい。だからここを教えてくれたの。」
神宮 「翔子ちゃんには見えてたって…それは」
小鳥遊「なるほどな?把握把握。多分えっちゃんにも見えるぜ?その影。」
神宮 「ええ…」
小夜 「正体わかったの?」
小鳥遊「いんや?なんもわからん。俺そういうの詳しくないし。」
小夜 「え…?でも専門家だって…」
小鳥遊「俺はオカルトには詳しくないけどオカルトを殴り飛ばすのが得意なんだぜ!」
神宮 「いつ聞いても馬鹿丸出しの自己紹介ですね。」
小鳥遊「ほっとけ。」
小夜 「ほんとに大丈夫?」
小鳥遊「まかせとけって。しばらくは俺かこのおねーちゃんが近くに居ると思うけど気にすんなよ?」
小夜 「うん!」
神宮 「え?私もですか?」
小鳥遊「家賃…」
神宮 「わかりました!ちゃんとやりますよ!」


小鳥遊「んで、こうしてクソ寒い中二人で少女の後をつけてるわけだが。」
神宮 「寒いですね…12月ももう終わりだから当たり前ですけど。」
小鳥遊「日付見て絶望したわ。今日クリスマスじゃねーか。」
神宮 「くりすます?」
小鳥遊「……俺えっちゃんのこと舐めてたわ。まさかここまで箱入りだったとは。」
神宮 「う、うるさいですよ!しょうがないじゃないですか。そういうのとは無縁の生活だったんですから。」
小鳥遊「そうなんだよなぁ。でも大分馴染んだでしょ?今の生活。」
神宮 「そうですね。おかげさまで。お勤めとは関係のない知識ばかり増えていきますよ。」
小鳥遊「そりゃいいことだ。」
神宮 「ええ……ところで小夜ちゃん、この寒い中どこに行ってるんでしょう?」
小鳥遊「翔子んとこの施設に行くって言ってたぜ?クリスマス会やるってさ。」
神宮 「くりすますかい?」
小鳥遊「そっから説明しねーといけねーんだったわ。あのな、クリスマスってのは……」


神宮 「サンタさん、なんという懐の広いお方。きっと聖人ですね。」
小鳥遊「そうだな。」
神宮 「私の所にも来てくれますかね?割といい子にしてたと思うんですけど。」
小鳥遊「来てくれるといいなー。」
神宮 「はい!……多喜君っ!」
小鳥遊「どうした?」
神宮 「居ました、影です。」
小鳥遊「マジ?俺には見えねーけど。」
神宮 「居ます。小夜ちゃんを追いかけてるのは間違いなさそうですね。」
小鳥遊「馬鹿正直に俺らも小夜たんの後つけなくて正解だったな。最悪鉢合わせだ。」
神宮 「これ、相当ヤバそうですよ。式神を通じても感じます。」
小鳥遊「そりゃマズイな。姉貴に連絡しといてくんね?」
神宮 「いいですけど、多喜君は?」
小鳥遊「小夜たんとこ。怖がってるだろうから。」
神宮 「気を付けてくださいね。この感じ、多分…」
小鳥遊「大丈夫だって、なんとかなる!」
神宮 「あっ…まったくもう……お姉さん、苦手なんですよね……」


小鳥遊「よっ、小夜たん。」
小夜 「あ、小鳥遊のお兄ちゃん。」
小鳥遊「影、来てる?」
小夜 「うん…さっきからついて来てる。なんか…」
小鳥遊「なんか?」
小夜 「今、怒ってるかんじ?…」
小鳥遊「怒ってる?」
小夜 「うん。よくわかんないけど。」
小鳥遊「うーん。俺にもわかんねぇな。ま、小夜たんはこのまま翔子のとこ行きな。送ってくから」
小夜 「たん…わかった!お兄ちゃんはしょーこちゃんとも仲良しなんだよね?」
小鳥遊「うん。君とおんなじ感じかな。」
小夜 「おんなじ?」
小鳥遊「翔子もちょっと普通じゃないことに巻き込まれてな?それで俺の所に依頼に来たってわけ。」
小夜 「そうなんだ……」
小鳥遊「そのせいでアイツ。家族とかいなくなっちまったからさ。仲良くしてやって欲しい」
小夜 「しょーこちゃん……うん!」
小鳥遊「アイツだけじゃなくてさ、あそこにいるやつら大体おんなじ感じだから、皆仲良くしてくれると嬉しいかな?」
小夜 「皆へんなことに巻き込まれたんだ。」
小鳥遊「そう、結構しんどかったけど、今は皆楽しそうだから、うん。」
小夜 「お兄ちゃんは色んな人を助けてるんだ?」
小鳥遊「助けてるって言うか、なんだろ。そうしたいからそうしてるって感じかな?」
小夜 「そうしたい?」
小鳥遊「皆の笑顔が見たいんだ。俺は。俺の名前、多喜ってさ、多くの喜びって意味でつけられたんだって。だから名前通り、いっぱいの喜びを見たいんだ。」
小夜 「お兄ちゃんって凄いね!」
小鳥遊「そうか?そう言ってくれると嬉しいぜ。お、もう着くな。」
影  「着かれちゃ困るんだよなぁ?」
小夜 「ひっ!」
小鳥遊「なんだ?影?」
影  「おいおい?俺の事見えないとかお前マジか?いや、わざと見て無いな?」
小鳥遊「?なにを意味のわからないことを…」
神宮 「多喜君!」
小鳥遊「えっちゃん!小夜たん連れて下がってくれ!こいつは俺が!」
神宮 「駄目です!それは……」
小鳥遊「行くぜ?変な影野郎!」
影  「お前が馬鹿で助かるぜ。」
小鳥遊「うるせぇ!」
神宮 「駄目です!『それ』は、貴方の影ですっ!」
小鳥遊「は?」
影  「おいおいもうネタバレか。もうちょっと引っ張ろうぜえっちゃん。」
神宮 「ドッペルゲンガー……影の都市伝説…」
小鳥遊「おいおいおい!超有名どころじゃねぇか!全く同じ現身の影だ!」
影  「はっ!それだけじゃねぇぜ?ドッペルゲンガーってのはな?」
神宮 「早く逃げてください!ドッペルゲンガーは…」
影  「それを本人が見たら死ぬんだぜ?」
小鳥遊「俺の…顔……?」


SE:倒れる音


小夜 「お兄ちゃん!」
影  「やっと俺の顔を見やがったか。めんどくせぇな?寺生まれってやつは。無意識にこっちの特性を回避しやがる。」
神宮 「多喜君だけがあなたを見れなかったのは、見たらこうなるって知ってたからなんですね。」
影  「知ってたって言うか無意識にだろ。そいつ、寺生まれのTさんは対都市伝説においては無敵だからな?即死回避してやがった。」
神宮 「あなたを強く認識してしまったのが仇になったと。」
影  「いやに冷静じゃないか、えっちゃん。そいつ、死んじまったぜ?」
神宮 「お前のようなものが私をその名で呼ぶな!」
影  「おっと、いきなり攻撃とは、全然冷静じゃなかったか。」
神宮 「小夜さん、貴女は施設の中に、あそこなら結界が。」
影  「おいおいそいつには都市伝説の才能があるんだぜ?『寺生まれのTさん』が退治しねぇとな?」
神宮 「やっぱり…」
小夜 「都市伝説の…?」
影  「お前みたいなな?妙なものを見つけるのが上手い奴はその妙なやつになることも出来るってことさ。特にお前はやべぇ。こりゃてけてけとか猿夢クラスの災害になるぜ?それこそカンカンダラだったえっちゃんみたいになぁ?」
神宮 「うるさいうるさいうるさい!貴様!」
影  「俺はそいつの影だぜ?記憶くらい持ってるさ。」
神宮 「許さない、この子にも手を出させない!」
影  「俺に敵わないことはえっちゃんが一番わかってるだろうに?都市伝説はTさんには適わない。」
神宮 「それでも、私はここを引かない!」
影  「はっ。めんどくさいな。」
神宮 「神州霊山神宮家、決戦巫女見習い神宮詠。ここであなたを滅します。」
影  「寺生まれの小鳥遊さん、都市伝説には容赦しないぜ。」
神宮 「だから!お前が!その名前を語るな!!」


神宮 「はぁ…はぁ…」
影  「言っただろ?都市伝説はTさんには勝てねぇって。」
神宮 「くっ…」
小夜 「お兄ちゃん…お兄ちゃん助けて!お兄ちゃんは沢山の人を助けるんでしょ!沢山の喜びを見たいんでしょ!お姉ちゃん、今泣いてる!」
影  「そんな都合のいい奇跡なんて起こらねぇよ。」
???「それがそうでもないんじゃよ。」
影  「は?おっさん、お前なんだ?」
???「子供のお願いが聞こえたからね。そりゃあ来なきゃだ。なにせ今日はクリスマス。私じゃなきゃ誰が来るんだね?」
神宮 「あなたは…まさか…」
小夜 「あたしのお願い…聞いてくれるの?」
???「お嬢ちゃんだけじゃないさ。見てごらん。」
小夜 「え?」
子供達「負けるな!多喜兄ちゃん!」「立って!何とかなるんでしょ!」「信じてる!」
???「ほらな?これだけ子供たちに願われてはしょうがない。皆、今年のプレゼントは我慢するんじゃぞ?」
子供達「はい!」
影  「ふざけるな!ふざけるな!クリスマスだからってそんな!」
神宮 「やっぱりあなたは…聖人の…」
???「聖人なんかじゃやないさ。ただ、この日だけは子供たちの願いを叶えるだけの、ただそれだけの都市伝説じゃよ。」
影  「破ぁ!破ぁ!なんで効かねぇ!Tさんの破ぁ!は都市伝説特効だろうが!」
???「クリスマスにワシに敵うわけないじゃろ?なにせワシは」
神宮・小夜・子供達「サンタさん!!」
???「そう、君たちにクリスマスの奇跡をお届けに来た、サンタさんじゃ。」


小鳥遊「あ?なんで俺生きてんの?」
神宮 「多喜君!」
小鳥遊「えっちゃん…なんかぼろぼろじゃね?大丈夫か?小夜たんは?」
神宮 「馬鹿!大馬鹿!貴方今の今まで死んでたんですよ!人の心配してる場合ですか!」
影  「ふざけるな!こんな馬鹿な話があってたまるか!」
神宮 「目を閉じて!」
小鳥遊「痛い!爪食い込んでるって!痛てぇ!」
神宮 「感謝してください!もう一回死ぬところだったんですよ!」
影  「そんな状態で闘えるものか!もう一度死ね!そうすれば俺が唯一のTさんだ!」
小鳥遊「なんかよくわかんねーけど見ちゃいけねーのだけはわかった!」
神宮 「どうするんですかこれ!」
小鳥遊「えっちゃん、信じてる!」
神宮 「え?え?」
小鳥遊「アイツの居る位置報告ヨロシク!」
神宮 「嘘ですよね?そんな馬鹿な!」
影  「馬鹿が!そんなものでどうにか…」
小鳥遊「詠!なんとかなる!」
神宮 「っ!!こっち!」
小鳥遊「首ぃ!そこかぁ!破ぁ!」
影  「そんな…馬鹿な方法で……」


神宮 「やりましたよ多喜君!」
小鳥遊「いや首!折れるかと思ったわ!無茶すんな!」
神宮 「貴方が指示だせって言ったんですよ!」
小鳥遊「力技が過ぎるわ!このポンコツ巫女!」
神宮 「ポンコツって言った!むぅぅぅぅ!」
小鳥遊「いや首!それ以上曲がんねぇって!」
小夜 「あはは…無事で…良かったね?」


小鳥遊「あー終わった終わった。」
神宮 「今日は疲れました…でもサンタさんも見れましたし、結果おーらいって奴ですね。」
小鳥遊「そりゃよかったな…俺の財布は大打撃だけどな…」
神宮 「?」
小鳥遊「クリスマスプレゼント、あいつらになんか買ってやらなきゃだろ?今年の分なくなっちまったんだから。」
神宮 「命の対価にしては随分安いと思いますけど?」
小鳥遊「それはマジでそう……取りあえずは先に、ほい。」
神宮 「なんですか?これ。」
小鳥遊「話の流れでわかるだろ?クリスマスプレゼント。」
神宮 「え?え?」
小鳥遊「メリークリスマス、えっちゃん!」
神宮 「さっきは詠って呼びましたよね?」
小鳥遊「さぁ?それよりあいつらのプレゼント買いに行こうぜ。」
神宮 「ねぇ!もう一回呼んでくださいよ!ねぇってば!」

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