
ミッション・イン・フェルミオン
登場人物:4人 (不問:4)
・ジーン :不問
・レイ :不問
・ノエル :不問
・グレン :不問
ジーン「世界有数の権力者、その子孫が集う全寮制の学園、フェルミオン。…想像していたよりもずっと大きいね。」
ジーン「ここへ潜り込んだ家出お嬢様の確保と連行、これが今回の依頼か……うん、ちょろいね。」
ジーン「(先方曰く、ターゲットは他の生徒に扮している。まずは提示された候補者に接触して…)」
SE:黄色い悲鳴
ジーン「…ん?」
レイ 「静粛に!道をあけるのである!まったく、なぜ毎度毎度こうなのだ…。」
ノエル「仕方ないですよ~。みんな会長のことが大好きなんですから。」
グレン「ねむ。」
ジーン「(あの三人は…生徒会!先方の提示した候補者たちだ!なんて運のいい。)」
ノエル「は~い。みなさんおはようございます~。あ、コロン変えました?そこの彼女は髪を切ったんですね、とても素敵です~。」
レイ 「はぁ…大体貴様のせいであるぞ。ノエル。」
ノエル「え~?私は挨拶してるだけですよ~?ね、グレン。」
グレン「ん。クッキー。」
レイ 「食べ物で釣るな!グレンも簡単に釣られるでない!まったく貴様らは…何度言えば分かるのだ。我々は学園を取りまとめる立場であって、模範生としての責務が…」
グレン「会長、鍵。」
レイ 「今度はなんであるか、鍵ならここに…ない!」
ノエル「あれ~なくしちゃったんですか?」
レイ 「そんなはずは…なぜだ。先程まで確かに身に着けて…」
ジーン「あの、鍵ってこれかな?」
グレン「ん。」
レイ 「な、それをどこで。」
ジーン「そこに落ちていたよ。大事なものなのかい?」
レイ 「ああ、まあな。協力感謝する。…貴様見ない顔だな。」
ジーン「今日が初登校でね。ニューオイリアから転入してきたんだ。ジーン・ウィットロック。よろしくね。」
レイ 「レイ・アスター、生徒会長である。そちらが副会長のノエル・ベルジエ。」
ノエル「よろしくお願いします~。」
レイ 「会計のグレン・フォブス。」
グレン「ん。」
レイ 「以上が生徒会のメンバーである。覚えておくように。」
ジーン「任せて、記憶力には自信があるんだ。ところで職員室はどこかな?」
レイ 「本当に来たばかりなのだな。仕方ない、案内しよう。ノエル。」
ノエル「は~い。こちらです~。」
ノエル「…ジーンはどこからいらしたんですか~?」
ジーン「うん?さっきも言った通りニューオイリアから…」
ノエル「書類上は、そうですね~。本当は?」
ジーン「…本当って?」
ノエル「気づかないと思いましたか~?会長の鍵を拾った、なんて嘘。私は耳がいいので、落としたらすぐに気づきます~。」
ジーン「生徒たちの声でかき消されてしまったんじゃないかな?私は嘘なんて…」
ノエル「目的はなんですか~?場合によっては……んふふふ。」
ジーン「…悪かったよ。君たちと話してみたかったんだ。」
ノエル「へぇ、何が知りたいんですか~?」
ジーン「それは…君たち自身のこと、かな。」
ノエル「ん~。回答になっていませんよ?」
ジーン「頼まれたんだよ。君たちが学園でどんな成果をあげているか調査してくれ、ってね。もちろん依頼主については教えられない。」
ノエル「ふ~む…まあ、今はそういうことにしておきましょう。妙なことをしたらメキャってすればいいですからね~。」
ジーン「ははは。恐ろしいね。肝に銘じておくよ。」
ノエル「んふふ。ここが職員室です。私はお先に失礼しますね~。」
ジーン「ああ、助かったよ。よかったらまた頼らせて欲しい。」
ノエル「もちろんです、それでは~。」
ジーン「(…さすがの警戒心だな。なかなか面白くなりそうだ。)」
SE:チャイム
ジーン「(さて、次は…)」
ジーン「やあ、グレン。よかったら食堂に案内してくれないかい。」
グレン「…ん。」
ジーン「助かるよ。グレンはどうして生徒会に入っているんだい?」
グレン「おかし。」
ジーン「お菓子?」
グレン「紅茶。」
ジーン「…もしかして、ティータイム?」
グレン「ん。」
ジーン「そ、そうかぁ…会計の仕事はどうだい?」
グレン「ケーキ。」
ジーン「ティータイムが好きなのはわかったよ。」
グレン「んん。1切れ。」
ジーン「1切れ?なにが…はっ。」
ジーン「(ケーキ1切れ…ピースオブケイク。楽勝ってことか…!)」
ジーン「なるほど、グレンの言葉はとても…個性的だね!興味深いよ。」
グレン「ん。」
ジーン「ああ、ここが食堂か。広いね。おすすめのメニューとかあるかい?」
グレン「ブラウニー。」
ジーン「すまない聞き方が悪かった。昼食のメニューでお願いするよ。」
グレン「?ブラウニー…ザッハトルテ、ティラミス。」
ジーン「そうか…うん、試してみるよ。ありがとう。」
グレン「ん。」
ジーン「(情報を引き出すのは難しそうだな。あとは…)」
レイ 「…む。何か用か。」
ジーン「少し話を聞きたくてね。仕事中だったかな?」
レイ 「構わん。本題に入るのである。」
ジーン「生徒会に入りたい。どうしたらいいかな?」
レイ 「生徒会に?入って何をしたいかによるのである。」
ジーン「運営に興味があるんだ。過去に行事や企画の進行をしていてね、そのスキルを活かしたいと思っているよ。」
レイ 「ふむ。嬉しい申し出であるが、こちらの一存では決められん。まずは担当顧問の先生に許可を得た上で選挙に参加し、選出されるよう努めるべきである。」
ジーン「なるほど承知したよ。それなら選挙までの間、少しだけお手伝いをさせてもらってもいいかな?」
レイ 「貴様、話を聞いていたか?生徒会の活動は正当な手順で選出されてから…」
ジーン「雑務で構わないよ。邪魔になるようなことはしない。」
レイ 「…はぁ。勝手にするのである。ただし、素行には十分気をつけるのであるぞ。我々生徒会は生徒を取りまとめる立場であり…」
ジーン「模範生としての責務がある、かな?」
レイ 「わかっているならよい。用事はそれだけか?」
ジーン「ああ、もう一つ。食堂のおすすめメニューを知りたくてね。グレンに聞いてもスイーツ以外答えてくれなかったんだ。何かあるかな。」
レイ 「奴はいつもそうなのだ。気にしないでやってくれ…そうだな、私はパエリアが好きだ。アクアパッツァもたいへん美味である。」
ジーン「海鮮か、いいね。明日食べてみるよ。」
レイ 「あくまで私の好みであるからな!どのメニューもシェフが丹精込めて作った逸品に違いはない。いろいろと試してみるといいのである。」
ジーン「そうしよう。話せてよかった!何か手伝えることがあったらいつでも頼ってくれ。」
レイ 「ああ。そのうちな。」
ジーン「失礼するよ。」
レイ 「……ふむ。妙な奴だ。」
ノエル「会長もそう思いますか~?」
レイ 「うわあああああああああ!な、なな、いつから!」
ノエル「ずっといましたよ~?ジーンは気づいていたみたいですけど。」
レイ 「心臓に悪い…もっと普通に登場するべきである。」
ノエル「(普通に声かけたんだけどな~。)」
ノエル「ジーンのこと、どう思います?」
レイ 「どうと言われてもだな……意欲のあるやつだ。話もしやすくユーモアに溢れている。あれは懐に入るのがうまい。」
ノエル「結構好感触ですね~?気に入ったんですか?」
レイ 「そういうことではない!生徒会に居ても困りはしない人材だと思っただけである!」
ノエル「ふ~ん。そうですかぁ…ちなみに私はエスカルゴが好きです~。」
レイ 「急に何の話であるか。」
ノエル「食堂のメニューですよ~。海鮮好きなんでしょう?」
レイ 「食堂にエスカルゴなんてないであろう?」
ノエル「裏メニューです。言えば作ってくれますよ~。お昼に誘ってみたらどうですか?お友達少ないんですから~。」
レイ 「やかましいのである!」
グレン「タルトタタン!」
ノエル「グレン。お疲れ様です~。スイーツも裏メニューがあるんですか?」
グレン「イチゴダイフク!」
ノエル「和菓子もあるんですね。ティータイムに頂きましょう~。」
グレン「ハギノツキ!キクフク!」
レイ 「まずは仕事をするのである…。」
ジーン「…以上が報告になります。ええ、分かっていますよ。お任せください、こちらもプロです。お嬢様は必ずお連れ致します。…はい。では動きがあり次第報告します。…はい。失礼します。」
SE:通話を切る音
ジーン「(…お嬢様は必ずお連れ致します、ね。)」
ジーン「ふ……ははっ、あははははは!ああ、飽きたらすぐにでも出向いてあげるよ。何も
知らない、貴方たちのところにね。」
ジーン「(まさかターゲット本人と話してるなんて思いもしないだろう。それもそうだ。少しの情報操作で、何の関係もない生徒をターゲット候補にしてしまう、情弱なのだから!なんて簡単なんだろう。正体を現したとき、彼らはどんな顔をするかな…ああ、愉快だ!)」
SE:着信音
ジーン「はい。こちらジーン。」
レイ 「レイ・アスターである。夜分遅くにすまない。寮にいなかったので電話させてもらった。」
ジーン「会長。何かあったかい?」
レイ 「いや、大した用事では、ない…その……ノエルから食堂のおすすめメニューを教えてもらったのだが。」
ジーン「ああ!そういえばノエルにはまだ聞いていなかったな。」
レイ 「明日の昼、どうであるか。」
ジーン「もちろん、構わないよ。食堂に集合でいいかな?」
レイ 「!うむ。食堂集合で、頼む。」
ジーン「何が食べれるんだろうなぁ。楽しみにしているよ。」
レイ 「ああ。そ、それだけだ。早めに寝るのであるぞ!失礼する!」
ジーン「また明日!おやすみ。」
SE:通話を切る音
ジーン「…あはは。友達みたいだな。」
ジーン「(いつかは帰らなきゃいけない。仮初の生活、仮初の関係。でも今は…もう少しだけ
楽しませてもらうよ。)」
ジーン「うん、ちょろいね。」