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この先の僕らは 2話

登場人物:4人 (男:2女:1人 不問:1)

・律     :不問

・宗明    :男性

・透夏    :男性

・冬希    :女性

SE:チャイム

冬希「今日はお弁当作ってきたよぉ。じゃじゃ~ん。」
律 「わあ!かわいい!冬希って料理できたんだね。」
冬希「ふふん。これぐらい朝飯前だよぉ。はい、しゅーちゃん。」
宗明「購買行くなって言ってたのはこれかよ…いただきます。」
冬希「…どう?」
宗明「わ、わかんねぇよ。食いづれぇからあんま見んな。」
冬希「ふふ。ごめんね。あ、お兄ちゃんおかえり~。また生徒会?」
透夏「ああ。資料取りに来ただけだから、またすぐ出るよ。…おや、食べてもらえたんだね。美味しいだろう。」
宗明「るせーな。とっとと行け。」
透夏「はいはい。練習した甲斐があったね、冬希。」
冬希「お兄ちゃん!そういう余計なことは言わなくていいの!」
透夏「ははは。じゃあまたあとで。」
冬希「もー。」
律 「透夏、最近忙しそうだね。今朝も先に学校来てたし。」
宗明「文化祭の準備だろ。あー出店めんどくせー。」
律 「D組は何やるの?」
宗明「喫茶店。あいつにウェイター押し付けられたんだよ!クソッ!サボれねぇじゃねーか!」
律 「なんだかんだ真面目だよね。」
冬希「しゅーちゃんエプロン着るの?見たいなぁ。」
律 「じゃあみんなで遊びに行こっか。」
冬希「やったぁ!」
宗明「来るんじゃねぇ!来ても追い出すからな!」
冬希「ええ~。」
律 「冬希のクラスは何やるの?」
冬希「劇なんだけどね。お姫様役になっちゃった。」
律 「主役ってこと?すごいね!…あんまり嬉しくなさそうだけど。何かあった?」
冬希「断ったのに、クラスの子に押し切られちゃったの…王子さまはしゅーちゃんじゃなきゃ嫌だって言ったのに!」
宗明「げほぉっ!!!!」
律 「宗明!?大丈夫?」
冬希「でもお芝居は手を抜きたくないし、せっかくやるならいいものを作りたいでしょ?だからしゅーちゃんに許可をとって、劇の間だけはお姫様になりきるって約束したの。」
律 「あー。なるほどー。」
冬希「いっぱい頑張るから見に来てね。りっちゃんは何やるの?」
律 「お化け屋敷だよ。僕は会場づくり担当だから、当日は仕事がないんだ。」
冬希「それなら、いろんなところ回れるね。いいなぁ。」
宗明「暇なら生徒会手伝ってやれよ。見回りのボランティア募集してただろ。」
律 「そうだっけ?…手伝ったら、透夏も僕たちと一緒に回れるかな。」
宗明「さぁな。聞いてみたらいいんじゃねーの?…ごちそうさまでした。」
冬希「は~い。おそまつさまでした。」

 


SE:ノック
SE:ドア開く音

律 「おつかれさま。今大丈夫?」
透夏「律。どうしたの。」
律 「何か手伝えることないかなって。ほら、ボランティア募集してたよね?」
透夏「そういうことか。気を遣わなくていいのに。」
律 「ずっと忙しそうにしてるからさ。何か力になれたらいいなって思ったんだけど…だめかな。」
透夏「…ボランティアは規定が少し厳しいんだ。用紙あげるから、もし条件に合うようだったらそこの箱に出しておいて。正式にお願いすることになったら声かけるよ。」
律 「わかった。ありがとう。」
透夏「こちらこそ。…募集しておいて審査とかさ。人の厚意がどれだけ貴重かわかってないよね、ほんと。」
律 「仕方ないよ。それだけ責任のある立場ってことでしょ?」
透夏「まあね。…愚痴ってごめん。」
律 「いいんだよ。たまには息抜きしないと。あ、そうだ。」

SE:鞄を探る音

律 「はい、これあげる。」
透夏「ラムネ?」
律 「頭使う時に効くって聞いたから。よかったら食べて。」
透夏「ありがとう。」
律 「あんまり遅くならないようにね。じゃあ、また明日。」
透夏「ああ。気をつけて。」

 


SE:ドア閉める音

透夏「…ただいま。」
透夏「(父さんたち、今日は遅くなるって言ってたな。冬希は…2階か。)」

SE:階段あがる音
SE:ノック

透夏「冬希、ただいま。夕飯食べた?」
冬希「あ、お兄ちゃん。ちょっと待って。」

SE:ドア開ける音

冬希「おかえり。下準備してあるから、すぐ作るね。」
透夏「いいよ。俺がやる。何かしてる途中だったんだろう。」
冬希「NINEしてただけだし、いいよ。」
透夏「…じゃあ一緒に作ろうか。着替えてくるから、きりのいい所でキッチンにおいで。」
冬希「うん。ありがとうお兄ちゃん。」

SE:ドア閉める音

透夏「……。」

 


BGM:がやがや

律 「どう?準備進んで…」
宗明「らっしゃっせー!!!!ぁんめいさまっすかー!!!!」
律 「わあああ!?なになになに!?」
宗明「あ?んだよ律じゃねーか。どうした。」
律 「どうしたはこっちのセリフだよ!なに今の?恐喝?」
透夏「接客の練習だよ。いらっしゃいませ、お客様。」
律 「なんだ、練習…って、透夏。その恰好、透夏もウェイターやるの?」
透夏「いや、サイズ合わせに付き合ってるだけだよ。他のウェイターが先生に呼び出しくらってさ。背格好が似てるから捕まったんだ。」
律 「そっか。よく似合ってるのに勿体ないね。写真撮る?」
透夏「やめておく。ほら宗、もう一回。…いらっしゃいませ。」
宗明「…っしゃっせー。」
律 「わぁ、極端。」
宗明「だああああもう!わっかんねぇよ!アドバイス通りやっても違うって言われるし、どうしろってんだ。」
透夏「アドバイス?具体的になんて?」
宗明「大きな声で、目を見て、元気よく。」
透夏「なるほどね。じゃあ追加で、ゆっくりと、丁寧に、笑顔で、物腰柔らかくやろうか。」
宗明「注文が多いんだよ!くっそ…鏡見て練習してくる。ついてくんなよ。」
律 「あはは、これは難航しそうだね…。」
透夏「そういえば律、何か用があったんじゃないの?」
律 「うん?ああ、コピーのついでに様子見に来ただけだよ。」
透夏「じゃあ俺もそろそろ行こうかな。エプロンとタイここに置いておくから!最終調整よろしく頼むよ!…行こうか。」
律 「あ、うん。」

BGM:がやがや遠のく

 


SE:印刷機

律 「…すごい量だね。」
透夏「まさかまだ終わっていないとは。もう少し原稿が早くできていたら、印刷所に頼めたんだけどね。」
律 「仕方ないよ。ゆっくり待とう。」
透夏「そうだね。」
律 「……最近さ。」
透夏「うん?」
律 「透夏が忙しくて、3人でお昼食べることが多いでしょ。それで…その。ちょっと気にしてることがあってさ。」
透夏「どうしたの。」
律 「僕、邪魔じゃないかなって。きっとそんなこと思ってないんだろうけど…なんだか二人の時間を減らしちゃってるような気がして、申し訳ないんだ。」
透夏「…。」
律 「あ、透夏がいないせいとか、そういうのじゃないよ!ただ僕の中で…勝手に思ってるだけっていうか。」
透夏「…律の言う通り、あいつらは気にしてないと思うよ。十年の積み重ねは俺たちが思っているよりも大きいし、そんなことで友人を仲間外れにするほど俺たちは子供じゃない。」
律 「そう、だよね。」
透夏「大丈夫だよ。二人で会いたいときは勝手に会ってるだろうし、やりとりもしてる。むしろ一緒にいるのに楽しめてないことの方が、あいつらは気にするんじゃないかな。」
律 「透夏…そうだね。変に気を遣うのはよくないよね。うん。ありがとう。」
透夏「思ったことを言っただけだよ。」
律 「ううん。おかげで気が楽になったよ。ありがとう。」
透夏「…よかったね。」
律 「透夏は?なにか悩みとかないの?」
透夏「え、うーん…悩み、か。」
律 「もしあったら聞かせてよ。話すだけで心が軽くなることもあると思うし。」
透夏「そうだね……じゃあ」

SE:エラー音

透夏「!紙詰まりかな。先生呼んでくるよ。そこで待ってて。」
律 「あ、うん。いってらっしゃい。」
律 「(今、何を言いかけたんだろう…。)」

 


BGM:がやがや

冬希「お兄ちゃん。こっち~!」
透夏「ごめん。だいぶ遅れた。」
冬希「りっちゃんと時間潰してたから大丈夫だよぉ。ね?」
律 「うん。縁日楽しかったね。」
冬希「お菓子もらったの。お兄ちゃんにもあげる。」
透夏「ありがとう。じゃあ行こうか。」

SE:入店ベル

宗明「らっしゃいませ。何名様で……来やがった。」
律 「あはは。制服似合ってるね。」
冬希「見た目はいいけど態度がなってない!やりなおし。」
宗明「はぁ!?んだよちゃんと”いらっしゃいませ”って言っただろうが!」
冬希「お客様相手なんだから、もっと丁寧にエスコートしてよぉ。」
宗明「なんだそりゃ。」
透夏「練習の成果が見たいんだってさ。お姫様だと思って頑張れ。」
宗明「ぐ……いらっしゃいませ。3名様でよろしいでしょうか。」
冬希「はぁい。そうです。」
宗明「お席にご案内します。こちらへどうぞ。」
律 「おお…なんかちゃんとしてる。」
冬希「さすがしゅーちゃん。やればできる子だねぇ。」
透夏「頑張った甲斐あったね。えらいえらい。」
冬希「えらいえら~い♡」
宗明「ご注文がお決まりになりましたらお声がけください失礼しますクソが!!!!」
冬希「最後のがなかったら80点だったのに。」
透夏「いや、あれはあれで需要あるよ。…今から店の方向性変えるのもアリか?」
律 「ややこしくしないであげて!宗明がんばってるんだから!」
冬希「折角なら衣装もアレンジしようよ。しゅーちゃんの魅力を100%引き出すならぁ、カマ―ベストとか。」
透夏「ループタイも外せないね。接客態度はやや渋め、ツン八割に優しさ二割のヤンキー系統でどうだろう。」
冬希「しゅーちゃんなら塩対応俺様キャラがいい!これは譲れないよぉ!」
宗明「るせぇなとっとと注文しやがれ!!!!」

 


透夏「なかなか美味しかったね。」
律 「宗明ってラテアートできたんだね?びっくりしたよ。」
宗明「簡単なやつ練習しただけだ。誰でもできる。」
冬希「じゃああとで一緒に作ろ~。やり方教えてね?」
宗明「めんど……っわーったよ!教えるからそんな目で見んな鬱陶しい!」
透夏「…あ、ごめん呼び出しだ。みんなで楽しんでて。」
律 「僕も行こうか?」
透夏「今から律のクラス回るんだろう?案内役がいなくてどうするのさ。」
宗明「おーおー行ってこい。どうせこいつはお化け屋敷程度じゃビビらねぇよ。」
透夏「はは。よくわかってるね。じゃあまた後で。」
律 「…やっぱり忙しいんだね。」
宗明「しょうがねぇだろ。そういや、結局ボランティアはどうなったんだ?」
律 「参加してるよ。ほら、腕章。といっても、トラブルを見かけたら報告するだけなんだけどね。」
宗明「楽でいいじゃねーか。仲裁なんてしようもんならお前吹っ飛ばされるぞ。」
律 「そ、そんなに弱くないよ!たしかに宗明ほど力はないけど…」
宗明「小動物みてぇなもんだろ。お前もこいつと大して変わらな……あ?」
律 「どうしたの?」
宗明「冬希がいねぇ。」
律 「え!?さっきまで一緒にいたはずじゃ…」
冬希「こんなことで騒ぎ立てて恥ずかしくないの?はやく謝って。」
宗明「いた。あいつあんなところで何してやがんだ。」
律 「人に絡まれてる?とりあえず透夏に報告を…」
律 「(でも、さっき呼び出されてたよね。頼ってばかりじゃ透夏への負担が…)」
冬希「こんな人の多いところで肩ひじ張って歩いてたらぶつかるのは当然でしょ?そんなこともわからないお猿さんなの?」
律 「(わああなんかヒートアップしてる!報告はしなきゃだけど…だめだ、頼れない。どうにかして止めないと。)」
冬希「…なに?怒鳴ってるだけじゃ何も解決しない。そうやって威圧して相手を思い通りにしようなんて…人をナメるのも大概にして!」
律 「!冬希、あぶな」

SE:殴りかかる手を止める音

宗明「…はぁ。」
冬希「!しゅーちゃん…。」
宗明「てめぇ、誰の女に手ぇ出してんだ。とっとと失せろ!!!!」

SE:振りほどく音
SE:走り去る音

宗明「けっ。根性ねーな。だっせ。」
律 「冬希!宗明!大丈夫だった?」
冬希「うん。しゅーちゃんが助けてくれたから。」
宗明「なんだってあんなチンピラ相手に説教垂れてたんだよ。絡んでも碌なことねぇの知ってんだろ。」
冬希「隣のクラスの子があいつにぶつかられて、持ってた飲み物を零しちゃったの。それであいつの服がびしゃびしゃになって…さっきのとおり。楽しい雰囲気ぶち壊しで最悪だよねぇ。」
律 「なるほど…でも、あんまり無理しちゃだめだよ?怖い目に遭うかもしれないし。力じゃ敵わないんだから。」
冬希「…うん。心配かけてごめんなさい。」
宗明「……。」
透夏「みんな!…無事みたいだね。」
律 「透夏。来てくれたんだ。」
透夏「報告見たよ。どうやらさっきのやつと同一犯だったみたいでね。速やかにご退場頂いたから安心していいよ。」
律 「そっか。よかった。」
宗明「早く行こうぜ。お前のクラス、結構混んでるんだろ。」
律 「そうだね。優先券とってあるから、少し待てば入れると思う。行こっか。」

透夏「いやぁ、よくできていたね。演出も素晴らしかった。特にあの”何かを踏んだ”と思って足元を見た瞬間、手がスッと出てきて足を絡めとろうとしてきたのはなかなかスリリングだったよ。あと終盤の…」
律 「二人とも、大丈夫?」
宗明「…何も言うな。クソッ!離せよこら!」
冬希「嫌!絶対離さない!離したら死んじゃう!死ぬならしゅーちゃんと一緒じゃなきゃ嫌!」
律 「うん。だめそうだね。」
透夏「そんな状態でお姫様が務まるのかな、冬希?もうすぐ劇の時間だよ。」
冬希「!そうだったぁ。準備してくるね。」
律 「切り替えはっや!」
透夏「それが冬希のいいところだよ。ね、宗?」
宗明「見方によってはそうかもな。振り回される方はたまったもんじゃねぇけど。」
透夏「はは。…まんざらでもないくせによく言うよ。」
宗明「はぁ?勝手なこと言ってんじゃねぇぞ。あいつがずけずけと我儘言うのはてめぇが甘やかしてるからで」
律 「宗明落ち着いて!ほら、体育館行こう!透夏も!ね!」

 


BGM:がやがや遠め

冬希「ごめんなさい。私、もう帰らないと…さようなら!」

SE:走り去る音(ヒール)

律 「わぁ…すごい。冬希って器用だったんだね。さっきもあんな動きにくそうな格好でダンスしてたし。」
透夏「家でも練習してたよ。絶対いいものにするんだって、張り切ってた。」
宗明「まぁ、成果は出てるんじゃねーの。」
律 「あはは。素直じゃないなぁ。」

SE:靴を置く音

冬希「ぴったりでしょう。そうです、あの晩、あなたと踊った娘はまさしく、私なのです。」

SE:歓声が沸き上がる

律 「(クライマックスだ。あっという間だったな。)」
律 「…あれ、宗明?どこ行くの。」
宗明「大体見れたからもういい。混む前に先、出てるぞ。」
律 「え、でも折角なら最後まで…行っちゃった。」
透夏「様子見てくるよ。律は最後まで見届けてあげて。」
律 「うん、わかった。いってらっしゃい。」

BGM:がやがや

透夏「…体調不良、ではないみたいだね。」
宗明「んだよ。最後まで見なくてよかったのか。」
透夏「それはこっちのセリフだよ。冬希が悲しむぞ。」
宗明「気にしねーよ。そもそも俺が、この手のもんに興味ないって分かってんだろ。」
透夏「それなら、どうして途中まで見た?中途半端に退場したら、自分に非があったのかと思って落ち込むだろう。」
宗明「…知るか。客の勝手だ。」
透夏「はぁ…大方、ラストシーンで王子と結ばれるのを観たくなかったんだろう。ダンスの時から渋い顔をしていたようだし。」
宗明「だったらなんだよ。悪いか。」
透夏「!……悪いかどうかは、冬希が判断することだ。せいぜい誤解されないように気をつけなよ。」
宗明「……。」
律 「宗明大丈夫?何かあった?」
宗明「あ?あー…。」
透夏「照明で目がやられたんだってさ。もう大丈夫なんだろう?」
宗明「…ああ。途中で出ていって悪かったな。」
律 「そうだったんだ。もう少し後ろの席にすればよかったね。ごめん。」
宗明「気にすんな。前の方が見やすかっただろ。」
冬希「うんうん。舞台からもよぉ~く見えてたよ?」
律 「冬希、おつかれさま!ダンスもお芝居もすごかったね!」
冬希「ふふふ。見てもらうんだから、これぐらいは当然だよぉ。」
透夏「練習で躓いていたところも完璧にできてた。よく頑張ったね。」
冬希「そういう裏事情はいいの!もー……ねぇ、しゅーちゃん。どうだった?」
宗明「…気に食わねぇ。けど、作品としてはよかったんじゃねぇの。」
冬希「気に食わない?どこが?」
宗明「あ?そんなの……いいからさっさと着替えて来いよ。」
冬希「え~。じゃあ写真撮ろう?撮ってからじゃないと着替えないよぉ。」
宗明「はぁ?」
律 「受付の人にカメラお願いしようか。すみませーん!」
透夏「……。」

 


BGM:がやがや遠め

冬希「ふふーん。一仕事終えたあとのご飯は最高だねぇ。」
宗明「おいこら、垂れるぞ。」
冬希「わ、あぶないあぶない。ありがと~しゅーちゃん。」
律 「透夏、どこいったんだろう。いつの間にかいなくなってたけど…。」
宗明「生徒会の何かだろ。どうせすぐ戻って来る。」
律 「そうなんだろうけど…ちゃんと楽しめてるかな。ずっと気を張ってるみたいだし。」
宗明「それはお前も一緒だろ。自分から進んでやってんだから気にすんな。」
律 「まあそうなんだけどね。」
冬希「あ、お兄ちゃん。」
律 「えっ、どこ?」
冬希「あそこ。3階の廊下歩いてるよぉ。」
律 「僕、ちょっと手伝ってくる!二人は好きなところ回ってて!」
冬希「うん。いってらっしゃ~い。廊下走っちゃだめだよ~。」
律 「あ、うん!いってきます!」


BGM:フェードアウト

律 「(確かこの辺りに…でも、報告用のNINEに3階のことは書いてなかったんだよね。それにこの先は、一般入場者立ち入り禁止で生徒もほとんどいないはず。どうしてこんなところに…)」
律 「おーい。透夏。いる?軽く食べられそうなもの持ってきたんだけど…。」

SE:ドア開ける音

律 「…透夏?」
透夏「ああ、律。どうしたの。」
律 「こっちに行くのが見えたからさ。時間あるならこれ、食べようよ。お腹すいたでしょ。」
透夏「ありがとう。頂くよ。」
律 「…なにしてたの。こんなとこで。」
透夏「休憩、かな。少し、疲れてね。」
律 「そっか。そうだよね。ずっと忙しそうにしてたし。」
透夏「……。」
律 「……何かあった?」
透夏「…どうして?」
律 「なんか、元気なさそうに見えたから。それにこの前、何か言いかけてたよね。悩み事はある?って聞いたときにさ。」
透夏「ああ、それか……自分でも、どうしたいのかわからないんだ。」
律 「え…。」
透夏「わかっているのは、今の状態が自分にとって辛いってことと…この環境を変える権利は、俺にないってことだけ。」
律 「…そんなこと、ないよ。人は変われる。自分が変われば、周りの景色も少しは変わると思うよ。」
透夏「はは。律はいい子だね。いつも人に寄り添って、優しい言葉をくれる。」
律 「そんなこと…僕にはこれぐらいしか、できないから。」
透夏「…変わる、か。難しいね。」
透夏「(この想いを捨ててしまえば、きっと…でもそれは、果たして俺と言えるのだろうか。”今”の俺は、肯定されないまま、消えていくんだろうか。)」
透夏「……もう少し、考えてみるよ。」
律 「そっか。何かできることがあったら言ってね。協力するから。」
透夏「うん。ありがとう。」

 


BGM:閉店っぽいやつ

宗明「…はぁ。疲れた。」
律 「今日一日あっという間だったなぁ。」
冬希「結局お兄ちゃんとはあんまり回れなかったねぇ。このあとも残るんでしょ?」
透夏「ああ、片付けとか色々あるからね。みんなは先に帰っていいよ。…おや、これで本当に、最後だね。」

SE:花火一発

律 「わぁ。綺麗。」
冬希「一発だけ…風情が足りないねぇ。」
宗明「終了の合図だろ。そんなもんに風情求めんな。」
冬希「もっとたくさん打ち上げた方が盛り上がるのに~。学校ってケチ。」
律 「じゃあ、みんなで花火大会見に行こうよ。来月の半ばぐらいだったよね?」
冬希「やった~!みんなで浴衣着ようねぇ。」
宗明「却下。持ってねぇ。」
冬希「買おうよぉ。選んであげるから、ね?」
宗明「いらねぇ。私服でいい。」
冬希「そんなぁ。りっちゃんは?」
律 「甚平ならあるかも。探してみるよ。」
透夏「俺のおさがりでよければあげるよ。今度持ってくる。」
律 「本当?ありがとう。」
透夏「宗も、当日うちに来てくれれば貸すし、着付けるよ。それでいいよね、冬希。」
冬希「いいプランだねぇ。さすがお兄ちゃん。」
宗明「おいこら、勝手に決めんな。俺は着るなんて一言も…」
冬希「きーまりっ。ふふふ!みんなで楽しい夏にしようね。」
透夏「…そうだね。」
宗明「はぁ、くそっ…。」
律 「あはは!……。」
律 「(…少しだけ、不安がよぎる。このざわめきは一体、なんだろう。)」

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