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​異世界行ったけど最初の村から進みません

登場人物:6人(男:3人 女:0 不問:3)

・サトル :男性

・神   :不問

・受付  :不問

・ザック :男性

・コボルト:不問

・ベック :男性

サトル「ほい、依頼にあった黒猪の肝10個納品ね、あと報告書はこっち。」
受付 「お疲れ様です。よく10頭も見つけられましたね。」
サトル「だーいぶ苦労したっすけどね。」
受付 「はい、確認いたしました、それではこちら報酬となります。」
サトル「ほい、どーも。」
受付 「……サトルさん。」
サトル「なんすか?」
受付 「何度も言っておりますがサトルさんはもうEランク試験を受けてランクを上げられた
    方がよろしいかと。」
サトル「俺もとっととそうしたいんですけどねぇ。」
受付 「それでは」
サトル「でもまだまだFランクの依頼いっぱい残ってますから。」
受付 「それは他のFランクの方たちが受けられますので。」
サトル「放置依頼は?」
受付 「それは…」
サトル「俺以外に誰も受けないんだったら俺が受けるしかないっすよね。大丈夫っすよ、全
    部終わったらちゃんと昇級試験受けにでかい街行くんで。」
受付 「…わかりました。」
サトル「んじゃこれで、また来ます。」

 


神  「おい、人間。」
サトル「ん?あーカミサマか。」
神  「お主いつまでそこで遊んでおるつもりだ?ワシがお主をその世界に送り込んだのは
    魔王を倒して世界の危機を救うためじゃぞ?それなのに辺境の村の小さなギル
    ドで小さな依頼ばっかり請けおって。いつまでたっても魔王の所に向かおうともせ
    ん。」
サトル「そうは言われましてもねぇ、これは俺の信条ってやつだから譲れないんすよ。」
神  「ワシはその信条とやらいまだに理解できんのじゃがな。」
サトル「えー、シンプルっすよ。ただミッション欄にサブミッションとか通知とかが残ってる
    のが嫌なだけで。だからあそこに残ってる放置ミッション全部終わらせたら
    ちゃんと先に進むつもりではあるんすよ。」
神  「そう言い続けてはや一年半、このままではせっかく与えた能力も宝の持ち腐れ
    じゃな。」
サトル「いやぁカミサマには感謝してるっすよ?こんな便利な能力くれたんすから。だから、
    いつかきっと約束通り魔王倒しますんで。」
神  「何年先になることやら。」

 


サトル「おはようございまーす。」
受付 「おはようございます、サトルさん。今日も?」
サトル「うっす、いつも通り裏にあるやつ出してください。」
受付 「よっとと…はい、こちら依頼されてから半年以上放置された依頼の束です。」
サトル「あざます!なんかいいのあるかな~っつってもそのうち全部やるんすけどね。」
受付 「本気でこれを全部終わらせるつもりなんですね。」
サトル「まぁそういう信条なんで。」
受付 「はぁ。」
サトル「こういうのは古い方からやった方がいいかな…っというわけでこれだ!」
受付 「失せ物探し、ですね。依頼自体は5年前に出されてます。」
サトル「うわ大分前っすね、んでなにを探せばいいんすか?」
受付 「えーと…亡くなられた息子さんの遺品を探してほしいとのことです。」
サトル「遺品?」
受付 「冒険者だった息子さんがダンジョンでお亡くなりになられた際に失われたそうで
    す。」
サトル「なるほど、だからギルドに依頼が来てるんすね。」
受付 「ええ、各ダンジョンは冒険者ギルドによって管理されていますので、冒険者以外
    は立ち入れませんからね。」
サトル「でもなんで放置されてたんすかね?これだったら他の依頼のついでとか冒険の
    ついでにこなせばよさそうなのに。」
受付 「この依頼先のダンジョン、丁度依頼を出された後くらいに攻略済みになってるん
    ですよ。」
サトル「なるほど、わざわざ足を運ぶ人がいなくなってしまった、と。」
受付 「攻略済みとは言ってもモンスターの出没報告はありますからね、コボルト、ゴブリ
    ン、大狼等々。うま味もないのに態々危険を冒しに行く人はいないでしょう。」
サトル「あーまぁ普通はそうっすよね。」
受付 「依頼主も他の依頼のついでくらいの気持ちで依頼を出したのでしょうね、依頼料
    が低く設定されていますから。」
サトル「おっけーおっけー理解した、んじゃこれ受けますね。」
受付 「いいんですか?先ほども言ったようにダンジョンは攻略済みな上、依頼料は安
    い、名声もお金も得られる依頼ではありませんが。」
サトル「別に富名誉名声が欲しくて冒険者やってるわけじゃないんでいいっすよ。」
受付 「それではサトルさんは一体何のために冒険者を?」
サトル「魔王倒す為っすね。」

 


サトル「というわけでやってきました、ダンジョン奥地。といっても攻略済みだから宝箱の一
    つもありゃしねぇ、っと」

SE:剣で切る音

サトル「それでもモンスターは湧いてくるっと。ゴブリンに大狼くらいならなんとでもなるけ
    どさ、こう数が多いと滅入るね。」
サトル「さてと、目的の遺品は…剣か。鉄作りの装飾なし、鞘は依頼主の手作りね。
    ん~俺の能力はこういうのに向いてないから地道に探すしかないんだけど…」
サトル(道すがら、モンスター以外の死骸は見つからなかった。ギルドがきちんと清掃し
    てるんだとしたら遺品が帰ってきてもおかしくはない、でも帰ってきてないってこ
    とは死体漁りに持ってかれたか、そこいらのモンスターに原型もないほど食い
    ちぎられたか……)
サトル「隠し通路かなんかに運よく残ってるといいな、シル!」

SE:風の吹き抜ける音

サトル「簡単な魔術覚えてて良かった、これで風を辿っていけばっと……」

SE:歩く音

サトル「あった、この壁の向こうに空間がある。」
サトル(スイッチスイッチ……あった。)

SE:扉の開く音

サトル「さてさて鬼が出るか蛇がでるか…」

サトル(隠し扉の先には死骸がそのまま放置されてる、ということはギルドの雇われも
    死体漁りもここまでは来ていないということ……)
サトル「しっかし結構奥まで来たけどこの辺はモンスターとか全然いねぇな。」
コボ 「オマエ、ココデナニシデル?」
サトル「言ったそばから出るじゃん、しゃべるコボルトか?」
コボ 「ココ、ナニモナイ。デデイゲ。」
サトル「ご親切にどうも、でも俺ここに用事あるんだよね。」
コボ 「コレイジョウススム、ダメ。」
サトル「奥になんかあるん?」
コボ 「ナイ、カエレ。」
サトル「あっそ、んじゃついでに一つ聞くけどさ。」
コボ 「ナンダ。」
サトル「お前その剣どこで拾った?」
コボ 「……」
サトル「その剣と鞘、探してたんだよ。返してくんね?」
コボ 「カエザナイ、コレタイゼツ。」
サトル「代わりにこの剣やるからさ、こっちの方が価値あるぞ?」
コボ 「イラナイ、ゴレガイイ。」
サトル「なんでそれにこだわるのさ?」
コボ 「コレスキ、ソレイラナイ。」
サトル「埒があかねぇ、しゃあねぇな。真打(トゥルーズールツール)。」

SE:魔法の音

コボ 「ナンデ、オマエガソレモッデル?」
サトル「武器のコピー、これが俺の能力だからだよ、まぁこっからが本番なんだけどな。」
コボ 「ナニヲ……」

 

ベック「おーい、コボいるかー?」
コボ 「マダギダ、ニンゲン。」
ベック「お、いたいた。この前はお前に助けられたからよー、お礼しようと思って。」
コボ 「ヘンナニンゲン。オレニハナジカケルノヘン。」
ベック「えー?だって俺ら友達じゃん?ほらこれ。」
コボ 「!キレイナイシ!クレル?」
ベック「やるよ、俺がもっと上級の冒険者になれたらもっといいやつもさ。」
コボ 「オマエ、イイヤツ。」
ベック「ここの探索手伝ってもらってるしな。」
コボ 「テツダウ、イシ、クレル?」
ベック「おう、やるやる。」
コボ 「オレモットデツダウ!」
ベック「現金なやつめー!」

 


ベック「コボ!逃げろ!」
コボ 「!!」
冒険者「なぜモンスターをかばう、ベック。」
ベック「こいつは友達なんだ、だから」
冒険者「なにを馬鹿なことを!」
ベック「やめてくれ!!」

SE:剣で切られる音

コボ 「オマエ、ナンデ。」
ベック「友達だろ、俺ら。」
冒険者「チッ、しょうがねぇ。名誉の戦死ってことにしといてやるよ。」
コボ 「ガァァァァァァ!」
冒険者「コボルトが剣を!?」
コボ 「トモダチキズツケル、ユルザナイ!」
冒険者「ぐはっ!」

SE:倒れる音

ベック「…お前、剣使えたのかよ…」
コボ 「オマエ、ミテオボエダ。」
ベック「そっか……んじゃそれ、やるよ。」
コボ 「ナンデ。」
ベック「約束、守れそうにねぇからよ……だから…」
コボ 「オイ……」
ベック「……」
コボ 「ベッグ……」

 


サトル「そっか…その剣、ベックの形見なんだな。」
コボ 「ナンデ、オマエガ」
サトル「まぁカミサマからもらった恩恵ってやつだよ、使い勝手悪いけど。」
コボ 「コレワダザナイ。ベッグ、ダイセツ。」
サトル「わかったわかった、もう取らねぇよ。」
コボ 「トラナイホントウ?」
サトル「その代わりベックの所に案内してくれ、その剣の代わりに思い出位は持って帰って
    やんねぇとな。」

 

サトル「こんちわっす。ザックさんのお宅ですか?」
ザック「そうですが、あなたは?」
サトル「ギルドの方に依頼だしてましたよね?」
ザック「確かに依頼はしましたが…もう無理だと、忘れ去られているのだと思っていました。」
サトル「ちょーっと危なかったっすけどね、はいこれ。」
ザック「これは息子の、」
サトル「ちょっと事情がありまして、息子さんの剣は持ち帰れなかったんですよ。」
ザック「ですがこれは…」
サトル「だから寸分たがわぬ贋作ってやつです、オマケ付きですけど。」
ザック「なにを?」

SE:魔法の音

サトル「……」
ザック「……ありがとうございます。」
サトル「すみませんね、本物持って帰ってこれなくて。」
ザック「いえ、とても良いものを見せていただきました。」
サトル「そっすか、そりゃよかった。」
ザック「本当に、ありがとうございました。」
サトル「いいんすよ、俺は依頼こなしただけなんで。」

 


神  「また能力を無駄遣いしおってからに。」
サトル「無駄じゃねーだろ、爺さん喜んでたんだから。」
神  「最後何を見せた?」
サトル「あの剣の記憶だよ、持ち主の小さい頃のな。」
神  「あの時死体に剣を握らせてたのはその為か。本来はそんな使い方するもんじゃな
    いんじゃがなぁ。」
サトル「応用力の勝利ってやつだな。さて魔王倒すために明日も頑張るぞー!」
神  「一体いつになることやら……」

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