”払い屋”鳳雷、バズり道
登場人物：6人（男：2人 女：0 不問：4）
・鳳雷 ：男性
・桐原 ：男性
・コメ ：不問（複数人、兼ね役可）
・客 ：不問（兼ね役可）
・CM ：不問（兼ね役可）
・動画①：不問（兼ね役可）
・動画②：鳳雷と同じ
鳳雷「これは……だーいぶ”ついてる”ね。」
コメ「ついてる？」
コメ「何が？」
コメ「あなたつかれてるのよ…」
鳳雷「そりゃあもう、とんでもなく。ごまかせないぐらいめちゃくちゃ”ついてる”。」
コメ「語彙力無くて草」
コメ「何がついてるんだ」
鳳雷「それはずばり……運。」
コメ「運。」
コメ「運？」
コメ「運！？」
鳳雷「うん。要するにツキが回ってきてるってこと。例えば会社で自分の企画が通るとか、
好きな人といい感じの雰囲気になれるとかそういうやつ。」
コメ「そんな占い師みたいな」
コメ「適当言ってないか」
コメ「嘘乙」
コメ「こいつほんとに祓い屋？」
鳳雷「それだとゴーストバスターズになっちゃうから！俺のは簡単な方の払うね。まあいい
や。お便りでさ『ずっと体が重く、気分が乗らないため仕事に身が入らずつらいで
す』ってあったじゃん。そもそもさ、不調ってのは２つに分けれるんだよ。体の不調
とメンタルの不調。もちろんお互いがお互いに影響するからきっぱり別れてるわけ
じゃないんだけど。これはどっち寄りだと思う？」
コメ「体」
コメ「メンタルじゃね知らんけど」
コメ「病院行ったって言ってた希ガス」
コメ「病院行ったって言ってたよね？」
鳳雷「そうそう。体の不調寄りなら、病院行って原因がわかればある程度対処できるんだよ
ね。でも『病院にもかかりましたが特に異常はなく』って言ってるじゃん。この人三
食ちゃんと食べてるっぽいし、規則正しい生活送ってるのに調子悪いなーって。だか
ら、どっちかっていうとメンタルにきてるのかなって推測。病は気から、ってよく言
うし。」
コメ「適当で草」
鳳雷「案外バカにできないんだって。実際、病気で重度麻痺になった人が…ってそんな話し
てもしょうがないか。とにかく、自分はとてつもなくラッキーで順風満帆バラ色の人
生送ってます！みたいな思い込みが大事ってこと。」
コメ「無茶苦茶じゃん」
コメ「やっぱ詐欺師か」
コメ「まあ一理ある」
コメ「人によるくね？」
鳳雷「確かに個人差はあるよ。でも、試してもいないものを憶測で否定してたら、可能性っ
てどんどん消えていくんだよ。そんなの勿体ないじゃん。だから、一度認めてみて欲
しいんだよね。例えば、そうだな…『これしかできなかった』よりも『これができ
た！』のほうがお得感あるじゃん。そういう感じ。ほんとちっちゃなことでもいいか
らさ、少しずつ認められることが増えれば自然とテンション上がるし、自分を好きに
なれる。そういう人のところにまた人が集まって、いい循環が生まれていくんだと思
うよ。」
コメ「すげぇ」
コメ「なんか真面目なこと言ってる」
コメ「配信までに起きれた！とかでもいいの？」
鳳雷「それめっちゃ偉いじゃん！リアタイしてくれてるのすごい嬉しいし。正直、何時だろ
うと起きて俺の動画みてる時点で最高なんだよね。しかもコメントしてるし。」
コメ「急に媚びるな」
鳳雷「媚びてない媚びてない！ちょっと褒めただけじゃん！なーんでそういう流れにするか
なぁ…あーあ！今日は終わり！終わりです。はいｗｗｗ。参考になったなーって思っ
たら、チャンネル登録高評価SNSのフォローよろしくお願いします！あ、でもガチで
体やばいならちゃーんと精密検査してね。俺責任持てないから。」
コメ「草」
コメ「熱いてのひら返し」
コメ「ｲｲﾊﾅｼﾀﾞｯﾀﾉﾆﾅｰ」
鳳雷「明日は動画投稿の日だからよろしく！払い屋”鳳雷”今後もご贔屓に！じゃあね！」
SE：椅子にもたれかかる音
鳳雷「ふいー。疲れた。」
切原「いい商売だな。」
鳳雷「切原。授業どうしたの、サボり？ワルだなー。」
切原「お前と一緒にするな。そもそもここは俺の家なんだよ追い出すぞ居候。」
鳳雷「ごめんて。冗談通じないなー。そんなんじゃモテないよ。」
切原「うるさい。次の予定は。」
鳳雷「えーっと、１４時から通話が入ってる。遅れるかもって言ってたけど。」
切原「は？あと４０分…？さっさとメシにするぞ。」
鳳雷「人気者は辛いね～へへ。俺煮物食べたい。」
切原「コンビニで買え馬鹿。」
客「先日はありがとうございました…！先生にはなんとお礼を言ったらいいのか。」
鳳雷「いやいや。俺はちょっとお手伝いしただけで、結局はご自身の努力の賜物ですよ。」
客「先生の言葉があったから変われたんです。本当にありがとうございました！」
切原「終わったのか。」
鳳雷「報酬上乗せしてくれるってさ。ありがたいね。あ、俺もチョコ食べたい。」
切原「ん。…それなら今月は多めに払えるな？滞納してる分の家賃と食費、用意しろよ。」
鳳雷「急に現実をつきつけないで！！！！俺泣いちゃう！！！！」
切原「俺だって親父からチクチク言われてんだよ！待ってもらえてるだけありがたく思え。」
鳳雷「それに関してはほんとに…返す言葉もありませんありがとうございます。」
切原「ふん。」
鳳雷「ありがとうついでに聞きたいんだけどさ、この家って埃をパタパタするやつあったり
する？」
切原「は？」
鳳雷「なんだっけ、名前忘れたんだけど。」
切原「はたきだろ。うちはワイパーしかないぞ。」
鳳雷「じゃあ買ってくる。お金貸して。」
切原「は…？何に使うつもりだよ。掃除ならワイパーでいいだろ。」
鳳雷「Short動画。やっぱ見た目でパッと伝わる方がいいからさぁ…『プロの払い屋が埃
払ったったwwww』どうよ？」
切原「……。」
鳳雷「え、面白くない？」
切原「ごっこ遊びに金かけんな。コピー用紙ぐらいくれてやるからこれでどうにかしろ。」
鳳雷「嘘でしょ！？あ、でも作る過程も動画にできるからお得か。アリだね。」
切原「……。」
鳳雷「何その顔。お前が提案したんじゃん。」
切原「はぁ……このあとワークショップだから静かにしろよ。」
鳳雷「あー、おっけおっけ。静かめに撮影する。」
切原「（そういうことじゃねぇよ。）わかった、金はやるから買い出しついでに外歩いてこ
い。」
鳳雷「まじで？やり～！おつりもらっていいの？」
切原「ダメに決まってんだろ。」
SE：録画開始音
鳳雷「どうも！払い屋”鳳雷”でっす。今日はおつかいを頼まれました～！で、折角なら俺
の日常をみんなにも届けようかなーって思って動画回してまーす。おつかいの内容は
こんな感じ。上白糖？なんだこれ…ま、まあ楽勝でしょ！２０００円貰ったのでね、
これで華麗に買い物して！代金を支払っていきたいと思います！払い屋だけに！」
SE：録画終了音
鳳雷「……よし、こんなもんかな。…マジで上白糖って何？糖ってついてるから砂糖か
な。」
SE：ドア開く音
鳳雷「ただいまぁ……。」
切原「遅かったな。夕飯の仕込みするから袋よこせ。」
SE：袋置く音
鳳雷「もうだめ疲れた……ごはん……。」
切原「買い物ごときでそんな疲れるか？…モノはちゃんとある、けどなんだこのでかい
砂糖。」
鳳雷「種類がたくさんあって……どれがいいかわかんないから、店員さんに一番コスパいい
やつ訊いて買ってきた。」
切原「業務用だろこれ。まあ、どうせ使うしいいか。」
鳳雷「今度から大きさも書いて……俺わかんないってことがわかったから……。」
切原「そういえばはたきは？結局買わなかったのか。」
鳳雷「はたき…？はたき……ああああああああああ！！！！！」
切原「忘れてたのかよ。」
鳳雷「嘘じゃんえええええええ？？？嫌だもう俺行きたくなぁい……。」
切原「諦めて自作するんだな。…ほら立て。手洗ってこい。」
鳳雷「うーん……はっ！これいいネタになるじゃん。」
切原「今日は青椒肉絲だ。肉多めにしてやるから手伝えよ。」
鳳雷「ごめん俺動画とってくる！」
切原「手伝えって言ってんだよ自由人が！」
鳳雷「この動画が面白いなって思ったら、チャンネル登録高評価SNSのフォローよろしくお
願いします！払い屋”鳳雷”今後もご贔屓に！じゃあね！」
SE：録画終了音
切原「…飯できたから冷めないうちに食えよ。バイト行ってくる。」
鳳雷「いってらっしゃーい……よし、編集は夕飯食べてからにしよう。先に明日の動画だけ
公開予約して…あ、やっべサムネ用意してなかった。いい感じの素材あるかな～。お
えかきやさん、おえかきやさんは確かこのへんにブクマして……はっ！動画ができる
までの流れを面白おかしく撮影したらいいネタになるのでは…？メモしとこ。ネタ帳
は確か…」
SE：レンジのチーン
鳳雷「いただきまーす……お、バズるカンパニーの動画上がってるじゃん。うわCM。」
CM「ちょっと聞いてよ！彼氏に『もうすぐバレンタインだね』って言ったら『ふーん』っ
て。ありえなくない！？『デート行こうよ』とか『チョコ楽しみにしてるね』とかな
んかあるじゃん！」
鳳雷「（でたでた。このタイプのCM毎回展開が一緒なんだよな。いい加減プレミアム…でも
そんな金ないしな～。）」
CM「それはさみしいね。じゃあ一緒に映画とか見に行く？今『13人目の犯人～囚われた目
撃者～』っていうとっても面白そ」
動画①「今日の企画は～『バレンタインドッキリ』！メンバーからチョコレートと一緒に手紙
を渡されたらどんな反応をするのか、検証していきたいと思います！」
鳳雷「（やっぱ季節ネタは乗っかった方がいいか。投稿から１時間で結構回ってるし。俺が
やるなら…そうだな…）」
動画①「『健康には気をつけてください。チョコレートにはポリフェノールが含まれているの
で、血圧がハイなバズないとさんにはうってつけの…』やかましいわ！」
鳳雷「っははははは！あははは！やっぱおもろいなー。こういうのがやりたいよな、最終的
には……はっ！」
切原「…なんだよ。帰って早々話とか。」
鳳雷「実は日々の感謝を込めて手紙書いたんだよね。読み上げるから聞くだけ聞いてくれな
い？」
切原「はぁ。」
鳳雷「拝啓、きり……キリフキンさんへ。」
切原「誰だよ。」
鳳雷「一応ね？ピー音入れるのめんどいから。」
切原「まさか動画回して」
鳳雷「いつも俺の生活を豊かにしてくださり誠にありがとうございます。生活力皆無の俺が
こうして健康に活動できているのも、貴方様の協力あってのことです。心よりお礼申
し上げます。」
切原「はあ。」
鳳雷「このたび感謝の気持ちとして、バレンタインにあやかりチョコレートをご用意いたし
ましたので受け取って頂けますと幸いです。テーンテーン、テテーンテーン、
テーテーテー、テテーン。」
切原「……なんだこれ。」
鳳雷「冷蔵庫にあったABCチョコ。」
切原「俺のじゃねぇか！せめて買って来いよ！」
鳳雷「さっき思いついたんだからしょうがないじゃん。お前それ好きでしょ？」
切原「そういうことじゃねぇだろうが。」
鳳雷「わかったわかった！買ってくる！明日買ってくるから、そのかわり俺の頼み一つ聞い
て。」
切原「は？なんで？」
鳳雷「今後も俺の動画に出演して欲しい。毎回とは言わないから、週一…いや週二！週二は
譲れないな。どう？」
切原「どう？じゃねぇ。なんで俺が出なきゃいけないんだよ。」
鳳雷「お前とならいい動画が作れるって思ったからだよ！いつも勉強とか頑張ってるし、家
事もバイトもやって忙しいのは知ってる。でも、ずっとお前を見てきた俺だからこそ
わかるんだよ！お前となら、もっと上を目指せるって。」
切原「何言って…」
鳳雷「お前イケメンだし、ツッコミもうまいから絶対動画映えすると思うんだよ。あとカッ
トするからぶっちゃけるけど、今コンビとかグループ売りってめちゃくちゃ需要あっ
て、特に関係性オタクにはめっちゃ刺さるから認知も広がるし動画の幅も視聴者層も
広がるんだよ！再生が回れば収益にもつながる！いいことだらけ！」
切原「……。」
鳳雷「お前は出演してくれるだけでいい。他のことは全部俺がやるから！視聴者の明るい未
来のために、”払い屋”やろうぜ☆」
切原「……はぁ。カメラどこだ。」
鳳雷「え、棚の上だけど。」
SE：歩く音
切原「絶対やらない。じゃあな。」
SE：録画終了音
切原「勝手をするのはいい。でも、俺を巻き込むな。動画消したからな。」
鳳雷「なあああ！」
切原「風呂入って寝る。」
鳳雷「最低！切原の馬鹿！もったいないじゃん！」
切原「許可なく撮影しておいてどっちが最低だ馬鹿。少しは反省しろ。」
鳳雷「ああ、データが…データがぁああああ…」
鳳雷「…なーんてね。」
鳳雷「録画しつつＰＣに転送されるようにしてたから、ばっちりデータは残ってるんだよ
なぁ。鉄は熱いうちに打て。さっそく編集するぞ！」
SE：鳥の鳴き声
切原「…寝てないだろ、お前。」
鳳雷「ご名答～。パン焼いてみた。ちょっと焦げたけど削ぎ落したからうまいはず！」
切原「ああそう…おい、カメラ回してないだろうな。」
鳳雷「まさかぁ。どう？おいしい？」
切原「……食える。」
鳳雷「よし！」
切原「（喜ぶところか…？）」
鳳雷「じゃあ俺寝るから！あとはごゆっくり～。」
切原「？そっちはキッチン…おま、やっぱり撮ってたんじゃねぇか！」
鳳雷「っははバレた！おやすみ～！」
切原「あいつ……はぁ。珈琲淹れよう。」
SE：通知音
切原「…ん？なんであいつNINEなんか送って…」
切原「（『ショートがバズった』…なんだこのURL。嫌な予感がする。）」
動画②「『お前は出演してくれるだけでいい。他のことは全部俺がやるから！視聴者の明るい
未来のために、”払い屋”やろうぜ☆』『絶対やらない。じゃあな。』『SE：チー
ン』
」
SE：怒り気味の足音
SE：ドアを勢いよく開ける音
鳳雷「……や、やった～バズった～…なんて。」
切原「……。」
鳳雷「オー、カオコワーイネ。オチツイテ？ボウリョクハヨクナ…」
切原「うるせぇ。死ね。」
鳳雷「ちょ、ああああ痛い痛い痛い無理無理無理無理足つぼ無理！！！！死ｎ、あ”あ”
あ”マジで痛い、無理だってごめｎああああああああああああ！！！！」