top of page

​ハロウィンの悪夢

登場人物:4人(男:2人 女:2人)

・鷺宮 …男

・瀬戸 …女

・紫藤 …女

・神崎 …男

SE:足音


鷺宮「……」
瀬戸「……」


SE:早くなる足音


鷺宮「……」
瀬戸「……」


SE:足音が止まる


鷺宮「お前……いつまでついて来るんだ?」
瀬戸「えっ…あっ……」
鷺宮「もうガキが出歩いていい時間じゃないだろ、とっとと家に帰れ。」
瀬戸「あの……」
鷺宮「悪いがお前の事情なんて知ったこっちゃないし知りたくもない。このご時世だ、お前みたいなやつは五万といる。」
瀬戸「……」
鷺宮「そして俺は面倒事が大嫌いなんだ、お前みたいなガキ連れ歩いてるとお上に睨まれるからな。」
瀬戸「でも……私…」
鷺宮「おい、話聞いてるか?黙って回れ右して帰れ。」
瀬戸「帰る家がないんです。」
鷺宮「はぁ……」

 


鷺宮「それ食ったらとっとと帰れ。」
瀬戸「……」
鷺宮「おい、聞いてるのか?」
瀬戸「帰る家がないんです。」
鷺宮「さっき聞いた。別に事情なんて話さなくていいぞ。聞く気は無い。」
瀬戸「分からないんです。」
鷺宮「聞く気はないっつってんだろ。」
瀬戸「自分がどこから来たか、何者なのかわからないんです。」
鷺宮「……はぁ…そーですか、そりゃ大変だ。とっとと警察か病院にでも行けよ。」
瀬戸「誰もまともに取り合ってくれませんでした。」
鷺宮「そりゃそうだろ…っておい、なに泣いてんだよ。」
瀬戸「…ひっく……っうぅ……」
鷺宮「やめろ、泣くな。俺が白い目で見られるだろうが。」
瀬戸「だって……」
鷺宮「だから聞きたくなかったんだよ、ったく……」
瀬戸「えっ…?」
鷺宮「ついてこい、なんとかなるかもしれん。」
瀬戸「あの…まだ食べ終わってないです……」
鷺宮「…………食べ終わったらついてこい。」

 


瀬戸「あの…ここは?」
鷺宮「怪しい店…ではあるんだが大丈夫だ。知り合いの店だ。」
瀬戸「いえ、なんでここに?」
鷺宮「入りゃわかる」


SE:ドアの開く音


紫藤「あら、鷺宮じゃない、生きてたのね。」
鷺宮「勝手に殺すな。」
紫藤「どうやって生きてたの?」
鷺宮「人の生に疑問を持つな。普通に働いて飯食って生きてたが?」
紫藤「アナタみたいな仕事するくらいなら宝くじでも買ってた方がマシだと思うのよ。」
鷺宮「うるせぇよ。折角客を連れてきてやったのに。」
紫藤「あら?珍しいこともあるものね。」
鷺宮「まぁ偶にはな。」
紫藤「アナタに知り合いが居るなんて。」
鷺宮「そっちかよ、つーか余計なお世話だ。」
紫藤「で、そっちの可愛い子がお客さん?」
瀬戸「あ、あの…ここは一体?」
紫藤「アナタ何の説明もなしに連れてきたの?呆れた。」
鷺宮「別にいいだろ。あんたが話した方が早いんだから。」
紫藤「相変わらずねぇ。さて、瀬戸葵さん。」
瀬戸「は、はい…え?」
紫藤「私は、まぁ俗に言う占い師なんだけど。」
鷺宮「ちょっと席外すな?」
瀬戸「え?」
紫藤「ほったらかしはどうかと思うのだけれど?」
鷺宮「別に興味ないし、俺要らないだろ。」
紫藤「はいはい。30分くらいうろついたらちゃんと帰って来るのよ?」
鷺宮「へーへー。」


SE:ドアの開く音


瀬戸「ホントに行っちゃった…」
紫藤「ああいう奴なのよ、昔っから。」
瀬戸「付き合い、長いんですね。」
紫藤「腐れ縁ってやつよ。お互いぺーぺーの頃からのね。」
瀬戸「はぁ…あの、それで……」
紫藤「ああそうね。まぁ大体のことはわかってるわよ。なんと言っても私は占い師だもの。」
瀬戸「占い師って人の名前とかもわかるんですね。」
紫藤「私のは正確には占いとはちょっと違うからあれなんだけど、そうね。私にはあなたの名前や生い立ち、誕生日から血液型、スリーサイズまでなんでもわかっちゃう。」
瀬戸「そ、そんなコトまで…?」
紫藤「冗談よ、ジョーダン。でもアイツがあなたを連れてきた理由がわかってるのは本当よ」
瀬戸「凄いんですね。」
紫藤「まぁこう見えてこの業界ではちょっとした有名人だからね、私。」
瀬戸「因みになんですけど、あの人のお仕事って言うのは?」
紫藤「んー……詐欺師?」
瀬戸「えぇっ!」
紫藤「うそうそ。そんなに怯えなくて大丈夫よ。詐欺師みたいなもの、ってカンジかしら。」
瀬戸「良くわかりません……」
紫藤「ホントにね?まぁ私も似たような物だし。」
瀬戸「占い師、みたいなもの?」
紫藤「そうそう。と、いうわけで早速だけどあなたのお悩みを解決していきましょうか。」

 


神崎「おいおい、こっちは忙しいんだぞ?仕事の無いお前と違って。」
鷺宮「うるせぇ。……それで?」
神崎「瀬戸葵、だったか?」
鷺宮「ああ、ここ数日でその名前に関する事件、事故はあったか?」
神崎「ん。」
鷺宮「あ?」
神崎「先払いが基本だっていつも言ってるだろ?」
鷺宮「不良警官が……ほらよ。」
神崎「毎度。詐欺師まがいのお前さんには言われたくないねぇ。」
鷺宮「うっせ。それで?」
神崎「ゼロ。少なくてもここ1週間の警察のデータベースにはその名前は出てこなかった。」
鷺宮「引っかかる言い方だな?」
神崎「へっ、察しの良いことで。ほい。」
鷺宮「これは?」
神崎「ウチと敵対してるところの情報網に引っかかった。但し、5年前だ。」
鷺宮「流石不良警官、そっちにも繋がりあるんだな。」
神崎「ほっとけよ。ついでに忠告しとくが、お前、ウチにもアッチにも大分マークされてるからな?ちったぁ大人しくしとけ。」
鷺宮「ほっとけよ。大体俺は大人しくしときたいんだよ。」
神崎「はいはい。まぁ気を付けとけ。俺ぁ絶対庇ったりしねぇからな。」
鷺宮「そっちこそヘマこいて懲戒免職とか勘弁しろよ。」
神崎「人の心配とか、お前も丸くなったもんだ。」
鷺宮「いや、新しい情報源探すのたりぃから。」
神崎「もうちょっと他人を気遣えや。」
鷺宮「へーへー。んで?」
神崎「これは今はぶっつぶれちまった組の話なんだが……」


SE:ドアの開く音


鷺宮「終ったか?ってなにしてんだ?」
瀬戸「あ、鷺宮さん。」
紫藤「あんたがあんまりおそいからお茶会よ、お茶会。」
鷺宮「ふぅん。で?帰る家はわかったのか?」
瀬戸「はい、紫藤さんに占ってもらって…」
鷺宮「占い、ね。」
紫藤「何?」
鷺宮「なんでも。んじゃとっとと帰るぞ。」
瀬戸「送ってくれるんですか?」
鷺宮「ついでだよ、ついで。」
紫藤「それじゃあ料金はいつも通りで。」
鷺宮「ちったぁまけろよ、金の亡者。」
紫藤「そうなると手を抜くことになるけど?」
鷺宮「ちっ…行くぞ。」
瀬戸「は、はい…紫藤さん、ありがとうございました。」


SE:ドアの開く音


紫藤「まったく、相変わらず変なのに懐かれるわねぇ、アイツ。」

 


瀬戸「あの、鷺宮さん……」
鷺宮「んだよ。」
瀬戸「私…お金とか持ってなくて……」
鷺宮「いらね。」
瀬戸「でもっ…」
鷺宮「ガキがんなこと気にすんな。後でお前の両親にでも請求してやるよ。」
瀬戸「……」
鷺宮「それにしても、今日はやけに街が騒がしいな。なんかあったか?」
瀬戸「え?鷺宮さんハロウィンをご存じないんですか?」
鷺宮「今馬鹿にしたか?」
瀬戸「い、いえ…」
鷺宮「あぁ、そう言えば今日はハロウィンか…なるほどな。」
瀬戸「なんですか?」
鷺宮「いや、なるほどなぁって思っただけだ。オラ、とっとと行くぞ。」
瀬戸「ま、待ってください。」

 


鷺宮「ここがお前ん家、だな?」
瀬戸「そう……ですけど…」
鷺宮「そうか。」
瀬戸「なんで…なんで……」
鷺宮「……」
瀬戸「なんで私の家…ないんですか?」
鷺宮「5年前にこの家で一家心中があった。」
瀬戸「鷺宮、さん?」
鷺宮「借金をこさえた夫婦と、その一人娘。」
瀬戸「なに、を。言ってるんです?」
鷺宮「ハロウィンの夜だったそうだ。最後には食うのにも困ってたんだろうな。三人の体は恐ろしいほどやせ細ってたそうだ。」
瀬戸「……」
鷺宮「思いだしたか?」
瀬戸「……はい…」
鷺宮「そうかよ。」


SE:ライターの音


鷺宮「ふぅー。んじゃそろそろ始めるか。」
瀬戸「何をですか?」
鷺宮「言ったろ?送ってやるって。」
瀬戸「そうですね……私、ここに居たらいけないんですよね…」
鷺宮「まぁ、そうだな。」


SE:拍手の音


鷺宮「ひふみ よいむなや こともちろらね。」
瀬戸「ごめんなさい、私……」


SE:拍手の音


鷺宮「しきる ゆゐつわぬ そをたはくめか。」
瀬戸「私、ご迷惑を一杯かけてしまって……」


SE:拍手の音


鷺宮「うおえ にさりへて のますあせゑほれけ。」
瀬戸「本当に、ごめんなさい……」

 


鷺宮「瀬戸、瀬戸葵。」
瀬戸「はい……」
鷺宮「こういう時は、ありがとうでいいんだよ。」
瀬戸「っ……ありがとうっ…ございました……」
鷺宮「いいさ、こっちも仕事のついでだ。んじゃ迷わず行けよ。」
瀬戸「はいっ、さようなら。」


SE:拍手の音


神崎「(5年前、借金を苦に焼身自殺した家族があったらしい。そこの娘の名前が瀬戸葵。組
   の名簿に残ってたんだってよ。まぁお察しの通り、大分酷い追い込みをかけてたみたい
   だな。)」
神崎「(ここまでは俺らの仕事。んで、こっからがお前の仕事な?)」
神崎「(それから1年後、巷に妙な噂が流れ始めた。死んだはずの瀬戸葵が現れて、次々と組
   の連中を殺して回ったそうだ。もちろん組の連中はビビっちまって警察に泣きついてき
   たんだが、死んだ人間にヒトは殺せねぇ。警察はまともに取り合っちゃくれねぇ。)」
神崎「(その後はもう目も当てられねぇ。毎年毎年自分の命日に現れて組の連中を殺しまくっ
   て、んでそいつはなっちまったんだ。ハロウィンの夜にヒトを殺す怪異にな。)」
神崎「(依頼だ、祓い師。出会ったら最後取り殺される怪異。『ハロウィンの悪夢』。お前
   が祓ってくれ。)」


紫藤「それにしても運が良かったわねぇ、鷺宮。あの子にご飯食べさせてあげて無かったら、
   アナタとっくに死んでたわよ?恐ろしいわね、死に至るいたずらなんて。」

bottom of page