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​雪中ブランコジャンプ自由形の未来

登場人物:3人(男:1人 不問:2)

・寒田:男性

・郡山:不問

・雪下:不問

郡山「フンッ!フンッ!」
寒田「(うわぁ、雪の中公園で上半身裸でなんかやってる不審者がいる、通報しとこ。)」
郡山「おい。」
寒田「(えーと警察は…)」
郡山「おい、そこのお前。」
寒田「えっ?俺ですか?」
寒田「(やっば。不審者に声かけられちゃったわ。)」
郡山「今、俺の方をチラチラ見ていただろう?」
寒田「いえ、見てませんけど。それじゃあこれで。」
郡山「まぁ待て。」
寒田「いや、雪降ってるし滅茶苦茶寒いんで。」
郡山「怪しいな……さてはお前雇われて俺の偵察に来たな?」
寒田「いや、アンタにだけは怪しいって言われたくないんですけど…偵察?」
郡山「そのなんの特徴もない服装、印象に残らない顔、影の薄さ、凄腕のスパイだな?」
寒田「喧嘩売ってる?売ってるよね?」
郡山「ここで俺が、雪中ブランコジャンプ自由形世界記録保持者の郡山権蔵が秘密特訓しているのをどこで知った?」
寒田「雪中……なんだって?」
郡山「雪中ブランコジャンプ自由形だ。」
寒田「そもそもその単語を聞いたのが人生で初めてなんすけど。」
郡山「誤魔化すな!こんな雪の中寂れた公園の前をうろつく人間なんてそうそう居ない!」
寒田「それを言ったらこんな雪の中上半身裸で湯気出しながらブランコを全力で漕ぐ成人男性の方が珍しいと思いますけどねぇ!」
郡山「俺の知り合いには10人くらいいるが?」
寒田「こわ、え?こっわ。」
郡山「黙れスパイめ!」
寒田「だからぁ!」
雪下「郡山さん!」
郡山「雪下、何をしに来た。」
寒田「なんか変なのが増えたんだが。」
雪下「もうやめましょうよ!郡山さん!」
郡山「またそれか。」
雪下「どんだけあんたが頑張ったって雪中ブランコジャンプ自由形はオリンピック競技にはなれない!」
寒田「どうでもいいけどその競技名実況とかで言うの大変そうだな。」
郡山「それは俺の力が足りてないからだ!俺がもっと凄い記録を出せばきっと委員会だって認めてくれるはず!」
雪下「郡山さんだったらスケートだってスキーだってなんだってメダルが狙えるのに。なんでその競技にこだわるんですか!」
寒田「え?この人そんな凄い人なの?」
郡山「北上と……約束したからな。」
雪下「やっぱり……アンタまだあの人のこと引きずってるのかよ!」
寒田「俺そろそろ帰っていいですかね?」
雪下「そもそもアンタ誰なんだよ。」
寒田「それはこっちの台詞なんだよなぁ!」
郡山「こいつは俺の技術を盗みに来たスパイだ。」
寒田「いや違いますけど。」
雪下「今はこっちの話の方が大事だ!ちょっとどいてくれ。」
寒田「いや、もう帰りたいんですが。」
郡山「都合よく逃げようたってそうはいかんぞ!」
寒田「面倒くせぇぇぇぇ!」
雪下「北上さんが事故にあったのは、アンタのせいじゃないでしょう?」
寒田「急に話を戻すな。」
郡山「いや、俺のせいだ。俺のせいで雪中ブランコジャンプ自由形のエースだったアイツはもう二度と飛べなくなっちまったんだ。」
雪下「だからってアンタが雪中ブランコジャンプ自由形に捕らわれる必要はないでしょう?」
寒田「それもうちょっと言いやすく略せないの?雪ブラジャンとかさ。」
郡山「うるさい。とにかく俺は世界記録を破ってあの役人どもに雪中ブランコジャンプ自由形をオリンピック競技に認めさせてやるんだ!邪魔をするな!」
雪下「無理ですよ!郡山さんの体はもうボロボロなんですよ!無理をしたらアンタまで二度と飛べなくなっちまう!」
寒田「はぁ……なんでこんな雪の中でこんな話に付き合わされるんだよ。なんだよ雪中ブランコジャンプ自由形って。」

SE:ブランコを漕ぐ音

郡山「俺は……俺は北上の為にもやらねばならんのだ!」
雪下「止めてください!」

SE:着地する音

寒田「よっと。久しぶりにやったけど結構飛べたな。」
郡山「お、お前今……」
雪下「そ、そんな……」
寒田「え?なんかまずかったっすか?」
郡山「この距離……俺の記録を軽々越えやがった……」
寒田「予想以上に飛べてないなあんた。」
雪下「これは……北上さん以上の逸材かもしれませんね。」
郡山「お前なら……世界を取れる!」
寒田「いや……えっ?」
郡山「まさか俺の技術をここまで盗まれるとはな。だが、お前にならこの雪中ブランコジャンプ自由形を任せられる。」
寒田「変なものを勝手に託すな。」
雪下「悔しいが、アンタならきっと俺や北上さんより飛べるはずだ。」
寒田「いやもっと頑張れよアンタらは。」
郡山「俺がお前を一流の雪中ブランコジャンパーに鍛えてやる。一緒にオリンピックを目指すぞ!」
寒田「いやそもそも競技になってないって話だったよね?」
雪下「俺、今から委員会に掛け合ってきます!すごい新人が出てきたぞって!」
寒田「話を大きくするなぁ!」
郡山「よし!じゃあまずは服を脱ぐところからだな。この競技の基本だ!」
寒田「その恰好アンタの趣味じゃなかったのかよ!!びっくりだよ!!」
郡山「さぁ同士よ!共に高みを目指そう!」
寒田「だから俺は雪中ブランコジャンプ自由形なんてぜってぇやらないからなぁ!!!!」

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