過去の清算
登場人物:3人(男:3人 女:0人 不問:0人)
・篠田 …男性
・間島 …男性
・鏑木 …男性
篠田「おい、間島。落ち着け。」
間島「落ち着いてますよ、俺は。」
篠田「どこがだ。いいから少し頭を冷やせ。」
間島「篠田さんは良く落ち着いていられますね?警官が、俺らの仲間がやられたんですよ?」
篠田「わかってる。」
間島「アイツは…俺の同期の中でも正義感が強くて、他人を思いやれて、俺らを引っ張ってくれたやつなんすよ。」
篠田「ああ、聞いてるよ。というかお前から何度も聞いた。」
間島「なんでアイツが、殺されなきゃならないんですか?」
篠田「そいつは警官殺しに聞かなきゃわからんよ。」
間島「10年前……」
篠田「ん?」
間島「10年前の警官殺し、鏑木の担当は篠田さんだって聞きました。」
篠田「……誰から聞いたんだ、んな昔の事。」
間島「篠田さんがっ!10年前鏑木を捕まえてくれてれば!!」
篠田「…すまん……」
間島「…いえ…すみません。言葉が過ぎました。」
篠田「いや、お前の言ったことは間違っちゃいないよ。10年前俺がしっかりしてればこんなことにはなっちゃいない。」
間島「……」
篠田「だから、今回はしっかりしなきゃいけねぇ。だから頼むわ、間島。俺に10年前の償いをさせてくれ。」
間島「…はい。」
篠田「ここだ、鏑木が潜伏してるって場所は。」
間島「廃工場…いかにもって感じですね。」
篠田「油断するなよ、間島。それと…」
間島「わかってますよ。大丈夫です、俺は冷静です。」
篠田「ああ、それじゃあ二手に分かれるぞ。俺は表でお前は裏だ。」
間島「はい…篠田さん。」
篠田「なんだ?」
間島「さっきはすみませんでした。」
篠田「いいさ。さぁ気合い入れて行くぞ。」
間島「はい!」
間島「裏口は…こっちか。鏑木、アイツの敵。絶対に逃がさない。」
鏑木「それはこっちの台詞なんだよねぇ!」
SE:殴られる音
篠田「間島は大丈夫か?あいつちゃんと冷静になってただろうか?」
篠田「間島を見てるとアイツを思い出すな…あの時もこんな寒い夜だったか…」
篠田「なんだ?声?間島か?」
間島「鏑木ぃ!」
鏑木「おいおい、頭殴られたのに元気だねぇ刑事さん。」
間島「お前!お前が!」
鏑木「警察官がしていい顔じゃないぞ?今にも俺をぶっ殺しそうだなぁ?」
間島「うるさいっ!」
鏑木「ああ、あれか?この前ぶっ殺してやった警官、オトモダチか?」
間島「貴様ぁぁ!」
鏑木「おいおい、暴れるなって、頭から血ぃ出てんだから。」
間島「許さない…絶対に許さないぞ!」
鏑木「許さないって…オマエ状況わかってんの?これからお前はオレに殺されるんだぜ?」
篠田「動くな、鏑木」
鏑木「あん?なんだ、一人じゃなかったのか。」
篠田「そいつからナイフをどけて離れろ。」
鏑木「お前こそその拳銃降ろしてくんない?怖くて手がすべっちまいそうだからよ。」
間島「駄目だ、篠田さん!こいつは…」
SE:蹴る音
鏑木「急にデカイ声出すから思わず蹴っちまったじゃん、びっくりさせんなよ。」
間島「ぐっ…」
篠田「止めろ、鏑木。銃はここに置く。お前もそいつから離れろ。」
鏑木「はっ、そっちのおっさんは物分かりいいねぇ。皆アンタみたいに物分かり良かったら楽なんだけどねぇ?」
間島「篠田さん…」
篠田「大丈夫だ…間島。お前は大人しくしとけ。」
鏑木「篠田……篠田…?お前どっかであったことあるか?」
篠田「ある…十年前だ……」
鏑木「あん?十年前……?あぁ!お前あれかぁ!あの時のどんくさい刑事!」
篠田「そんなことはいいから早くそいつから離れろ。」
鏑木「いやいやいや。折角十年ぶりに合ったんだぜ?もっと旧交を温めようぜ篠田ちゃん。」
篠田「黙れ。貴様に話すことなど何もない。」
鏑木「おぉ怖。10年前とは見違えるように立派になっちゃって。なぁなぁ間島君、聞いてくれよ。」
間島「煩い…」
鏑木「そう邪険にするなって。篠田ちゃんさぁ?十年前はそこ、お前の寝っ転がったとこにいたの。」
間島「なに…を?」
鏑木「だからぁ、十年前はあの篠田ちゃんがお前みたいに無様に寝っ転がって相方の足引っ張ってたんだよ、今じゃあんなに偉そうなくせして。」
間島「篠田さんが…?」
鏑木「そうそう。んでその時の相方は俺がぶっ殺してやったわけよ。篠田ちゃんもぶっ殺してやりたかったけど一杯パトカー来ちゃって時間足りなくてねぇ?あの時は一人だけ生き残らしちゃってごめんね?」
篠田「貴様ぁ!」
鏑木「わぁお!篠田ちゃんそれそれ。十年前もそんな感じで掴みかかってきたよねぇ。いやぁ懐かしい。ま、あっさり返り討ちだったけどねぇ。」
間島「篠田さん……」
鏑木「まぁまぁ、今日十年ぶりに出会って早速だけどさ?あの時ぶっ殺したアイツも一人で寂しいだろうし、そろそろ篠田ちゃんもあっちに会いに行ってあげれば?喜ぶと思うよアイツ…あー名前なんだっけ?」
篠田「高坂…高坂真二郎。十年前お前に殺された男の名前だよ。正義感が強くて一人でよく突っ走って、でも仲間思いの良い奴だった。」
鏑木「あーそんな名前だったのね?知らなかったわ。でもまぁ俺がぶっ殺したのも良く分かるわ。だってそれ俺の一番嫌いなタイプだもん。この前ぶっ殺してやったやつもそんな感じでむかついたからさぁ?ついついやっちまったぜ。」
間島「貴様っ!ふざけるなぁ!」
SE:蹴る音
篠田「やめろっ!」
鏑木「急に元気になるなよ間島君。君はそこで篠田ちゃんが殺されるのを眺めてなって。すーぐあと追わせてやるからよ。」
間島「篠田さん…俺にかまわず……」
鏑木「だってよ?どうする篠田ちゃん。」
篠田「間島…これは俺の贖罪だ……十年前自分のミスで相方だった男を殺しちまったどうしようもない男のちっぽけなプライドの話だ。」
鏑木「無視すんなよ篠田ちゃん。なぁ?」
篠田「間島には手を出させん!」
鏑木「調子に乗るなよ篠田ちゃん。ちょっとでも妙な動きしたら間島君死んじゃうよ?」
間島「うわぁぁぁぁ!!」
鏑木「なっ!こいつまだこんなに動けてっ!ぐぁっ!」
篠田「間島っ!」
間島「篠田さんっ!今です!」
篠田「鏑木ィ!」
鏑木「離せっ!このクソ野郎!」
篠田「離すか!貴様はここで逮捕する!」
鏑木「クソがっ!ちっくしょう!!」
篠田「間島…お前に助けられちまったな…」
間島「いえ…足引っ張ってしまってすみません」
篠田「そんなことはないさ。十年前、俺が出来ないことをお前がやったんだ。誇れよ。」
間島「篠田さん…俺……十年前の事ちゃんと知らなくて……生意気なこと言ってすみませんでした。」
篠田「あれな?」
間島「はい。」
篠田「恥かしかったから黙っててもらうように頼んでたんだよ、課のやつらにな。」
間島「え?」
篠田「若いもんになめられたくなかったからな。だから、お前はあんまり気にすんな。」
間島「……はい。」
篠田「んじゃ今日は俺のおごりだ。一杯付き合え。」
間島「いえ、自分お酒飲めないので。」
篠田「はぁ…お前はそういうやつだよな……」