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​その名前は雷神

登場人物:3人(男:2人 不問:1)

・ゲイン …男性

・アル  …不問

・リック …男性

・部下(兼ね役) …不問

SE:近づいて来る足音


リック「おい、そこの東洋人。」
ゲイン「私ですか?」
リック「そうだ。この辺で身なりの良い金髪の子供を見なかったか?」
ゲイン「子供…ですか?見ていませんね。」
リック「本当だろうな?」
ゲイン「ええ。」
リック「チッ、そうかよ。あのガキどこへ行きやがった。」


SE:遠ざかる足音


ゲイン「お前、何やった。」
アル 「な、なんのこと?」
ゲイン「あれはこの辺を仕切ってるマフィアの連中だろ?お前はなんでそんな連中に追われてるんだ?」
アル 「……言いたくない。」
ゲイン「そうか、じゃあな。」
アル 「あ、あの…」
ゲイン「なんだ?」
アル 「助けてくれてありがとう、おじさん。」


SE:遠ざかる足音


ゲイン「失礼な子供だな、俺はまだ30代だ。」

 

 

 

リック「まだ見つからねぇのか?あのガキはよぉ!早く見つけねぇとあのクソ親父が雇った雷
    神とかいう傭兵と合流しちまうかもしれねぇだろ!とっとと探し出せ!」


SE:電話を切る音


リック「どこへ行きやがった!あのクソガキィ!」


SE:物を蹴り飛ばす音

 

ゲイン「よう、また会ったな。」
アル 「昨日のおじさん。」
ゲイン「こんなところうろうろしてていいのか?まだあいつらに追いかけられてるんだろ?」
アル 「おじさんには関係ないでしょ。」
ゲイン「確かに関係はない。だがな?お前みたいな子供がガラの悪い連中に追いかけられてるんだ。お節介ぐらい焼きたくなる。」
アル 「余計なお世話だよ。僕はもう一人前だ。」
ゲイン「笑わせるな。あんな連中の一人や二人どうもできなくて何が一人前だ。」
アル 「本当はどうとでもできたんだ。でも、あいつらが僕のパパを…」
ゲイン「マフィアのお家騒動って奴か、くだらん。」
アル 「なんだと!」
ゲイン「お家の力がなけりゃ何もできない子供が、一人前ぶるな。」
アル 「なにも知らない癖に!」
ゲイン「知らないし、知りたくもない。」
アル 「じゃあもう放って置いてくれよ!僕は早く雷神を探さないと……」


SE:走り去る音


ゲイン「面倒くさい。これだから子供は苦手だ……」

 

リック「こんなところに居たんですねぇ、坊ちゃん。探しましたよ。」
アル 「リック!この恩知らずめ!よくもパパを裏切ったな!」
リック「裏切ったなんて人聞きが悪いですよ坊ちゃん。俺らの忠告を聞いてくれなかった坊ちゃんのお父様が悪いんですよ。俺ら幹部じゃなくて坊ちゃんに組織を継がせるって言うんだから。そりゃ手元も狂っちまうってもんですよ。」
アル 「黙れ!リックゥ!お前は絶対に許さない!」
リック「今の坊ちゃんになにが出来るって言うんです?」
アル 「パパが雇った雷神が…」
リック「そんなやつどこにもいませんぜ?お父様に騙されたんじゃないですか?」
アル 「そんなことは無い!パパは…」
ゲイン「あのースミマセン。」
リック「あぁ?なんだぁ東洋人。今こっちは取り込み中だ。見りゃわかるだろ。」
アル 「おじさん…?」
ゲイン「いやぁ、そんな小さい子をね。大人が寄ってたかって囲んでるのはちょっと。」
リック「うるせぇよ!部外者がしゃしゃってんじゃねぇ!それともまさかお前ぇ見たいなひょろっちいのが雷神ですって言うんじゃねぇだろうなぁ!」
ゲイン「いえいえ、私はゲインと申します。」
リック「誰が自己紹介しろって言った!ぶっ殺されてぇのか!」
アル 「駄目!おじさん逃げて!」
ゲイン「大丈夫だ、アル。」
リック「うぜぇ!うぜぇうぜぇうぜぇ!もういい。おい、こいつからぶっ殺せ。」
部下 「はい。」


SE:銃声


リック「……は?」
アル 「え?」
ゲイン「遅い。」


SE:連続する銃声


ゲイン「マフィアと言っても素人に毛が生えた程度か。」
リック「てめぇ!」


SE:銃声


ゲイン「だから遅いと…もう聞こえて無いか。」
アル 「おじ…さん…?」
ゲイン「少し待ってろ。残りも片づけてくる。」


SE:歩き去る音

 


アル 「どういうことなの?おじさんが…雷神?」
ゲイン「雷神が誰かは知らないが、お前の父親に雇われたのは俺だ。」
アル 「パパが……」
ゲイン「お前の父親は自分が殺されることをわかっていたんだろう。死ぬ前に俺に連絡をよこし、お前を守ってくれと。」
アル 「そんな…」
ゲイン「さて、これからどうする?」
アル 「……」
ゲイン「お前が望むなら、この街のマフィアは全て殺す。」
アル 「そんな事が出来るの?」
ゲイン「お前の父親はそれに見合うだけの金額を支払った。だから、お前を守るために殺す。俺は守るのが苦手だからな。皆殺しの方が楽なんだが、どうだ?」
アル 「……いや。皆殺しは駄目だ。」
ゲイン「そうか。」
アル 「追加料金を支払うから、しばらく僕を守ってくれないか?」
ゲイン「いつまでだ?」
アル 「僕が本当に一人前になるまで。」
ゲイン「……良いだろう。」
アル 「ありがとうゲイン。」
ゲイン「トオル。」
アル 「え?」
ゲイン「外院透。それが俺の名前だ。」
アル 「…っぷ…あはは。」
ゲイン「なにがおかしい。」
アル 「トオル、トール。やっぱり君が雷神じゃないか。」
ゲイン「そうなのか、初めて聞いたな。」

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