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​乙女学園外伝~秘密の花園~

登場人物:6人(男:0人 女:6 不問:0)

・乙羽琴音 :女性

・長瀬葉月 :女性

・園田圭  :女性

・小日向透吏:女性

・竜崎雅  :女性

・母    :女性(兼ね役可)

・モブ生徒 :女性、複数人(兼ね役可)

琴音「『乙女学園シリーズ』それは魅力的な男子たちと愉快でちょっぴり切ない青春を過ごす大人気乙女ゲームシリーズ。私こと主人公、乙羽琴音の素直で明るい性格、そして各々のルートで描かれる重厚かつ繊細なストーリーから、男女ともに人気を博しているスーパーコンテンツ!売り上げはうなぎのぼり、新シリーズ発表のたびにトレンド1位をかっさらっていくその姿は、まさに乙女ゲーム界の超新星!今回も予約殺到で発売一日目から過去最高売り上げを更新したらしいし、向かうところ敵なしって感じだよぉ!」
琴音「……っと、いけないいけない。いくら絶好調でも、私はいつも通りでいなきゃね。キャラクターである以前に、プレイヤーの分身なんだから。」

SE:システム音

琴音「来た来た。頑張るぞー!いざ、ニューゲーム!」


SE:システム音

 


琴音「(前作は2年の秋、修学旅行までのお話だったんだよね。今回は本編から外れた番外編的なものって聞いたけど……)」
琴音「……ん、朝。えーっと、今日の日付は…」
琴音「(2021年5月…ってことは2年になってすぐか。少し遡ってるんだ。)」

SE:ノックの音

母 「琴音ー。もう葉月ちゃん来てるわよ!」
琴音「はーい!今行く!」
琴音「(キタ!いつものパターン!私の大好きな幼馴染、長瀬葉月のお迎えだ~!近所だし家族絡みで仲がいいから、お母さんも『葉月ちゃ~ん』って言って可愛がってるんだよね。)」

母 「はいお弁当。忘れ物ない?」
琴音「大丈夫だって!行ってくるね!」
琴音「(前作発売から約2年、久しぶりの葉月だ~!)」

SE:ドア開く音

琴音「ごめん葉月!お待たせ!」
葉月「琴音ちゃん。おはよう。今日も元気だね。」
琴音「……え?」
葉月「琴音ちゃん?どうしたの?」
琴音「……だ、」
琴音「(誰ぇええええええ!?)」

 


(琴音「だ、大丈夫!急いで出てきたからちょっと…胃がびっくりしちゃって!あはは!」)
琴音「(なんて言ってごまかしちゃったけど!誰だよこの女!優しくて押しに弱いけど絶対琴音守るマンな癒し系男子の葉月はどこにいっちゃったの!)」
(葉月くん「琴音ちゃーん。あははは~。」)
葉月「琴音ちゃん、やっぱり体調わるいんじゃ…?無理はよくないよ。」
琴音「無理なんかしてないよ~!学校が楽しみでちょっと張り切りすぎてるだけ!それより、葉月は?いつもと変わりない?」
葉月「うん。いつもより元気かも。琴音ちゃんと学校行くの、久しぶりだから…なんか嬉しくて。」
琴音「あはは、なにそれ照れるー。」
琴音「(久しぶり…?家隣だし、毎日一緒に学校行ってるはずだけど。)」
葉月「同じクラスになれたらよかったんだけどね。あ、でも困ったこととかあったらいつでも来て大丈夫だよ。休み時間は基本、教室にいるから。」
琴音「は、葉月って何組だっけ?」
葉月「D組だよ。琴音ちゃんはA組だよね。転校生が来るーって盛り上がってたよ。」
琴音「そう!A組!いやぁ会うのが楽しみだな~!」
琴音「(転校生!?今の流れからしてたぶん私のことだよね…?わからない、今までと違いすぎて何もわからない…!葉月は女の子だし、なぜか転校生ってことになってるし!一体どうなっちゃうんだろう…?)」

 


琴音「初めまして!乙羽琴音です。琴音って呼んでね!楽しい事するのが大好きだから、いっぱい話しかけて欲しいな!あ、勉強はちょっと苦手だから助けてもらえると嬉しいかも…!よろしくお願いします!」

SE:拍手

琴音「(掴みは上々……でも問題はそこじゃない!ここは乙女ゲームの世界。そして私は主人公!なのに、それなのに…!)」
生徒「ねー琴音ちゃんってどこ高だったの?」
生徒「琴音って呼んでいい?めっちゃ髪サラサラだね!」
生徒「彼氏いる?ってかNINE交換しよーよ。」
琴音「(圧倒的女子高……!男子が!一人も!いない!!!!)」
琴音「(これは由々しき事態だよ何があった制作会社…!シナリオライターの気が狂った?企画担当が美少女ゲームに魂売った?とにかく今の状況を整理しないと。生徒手帳にはしっかり女子高って書いてあった。しかも幼馴染で攻略対象の葉月が女になってる。わざわざ転校してきたってことは、この学園でお話を展開させるということ……ここから導き出される答えは即ち……)」
琴音「あー!そういえば職員室に行かなきゃいけないんだった!NINEこれね!あとでいっぱい話そ~!」
琴音「(確かめるしかない!この目で確認するまでは、シュレディンガーの乙女ゲームなんだから!)」

 


琴音「ま、迷った。」
琴音「(葉月を頼ればよかった……チュートリアル無視したせいでマップもないし、他に知り合いいないし…)」
圭 「そんなところで何をしているんだ。」
琴音「えっ。あー、えっと。迷っちゃって。」
圭 「迷った…ああ、件の転校生か。どこに行きたいんだ。」
琴音「職員室。先生に呼ばれてて。」
圭 「着いてこい。案内する。」
琴音「え…ありがとう!私、乙羽琴音。あなたは?」
圭 「3年B組、園田圭。とりあえず敬語を使え。」
琴音「あ、先輩……了解で~す!」
琴音「(いた、園田圭!クーデレ年上男子の攻略対象!……やっぱり女になってた。葉月だけならまだアシストキャラに転身した説もあったけど、これで確信した。ここは乙女ゲームの世界じゃない。乙女ゲーム原作の、百合ゲーム世界なんだ…!)」
圭 「知り合いはいないのか。」
琴音「幼馴染が一応。でも職員室ぐらい一人で行くべきでしょ~って思って歩いてたら…」
圭 「迷ったと。職員室は1階だ。というか大体の学校は1階の玄関近くにある。」
琴音「あはは、ですよね~。階段が見つからなくて。」
琴音「(チュートリアルやってないから階段が出現してなかったなんて口が裂けても言えない…)」
琴音「園田先輩は部活何やってるんですか?」
圭 「弓道部だ。それがなにか?」
琴音「実は部活何にしようか悩んでるんです。弓道ってかっこいいですよね!凛としてて、芯があって強そうな感じ!」
圭 「興味があるのか?」
琴音「興味は……あります!めっちゃありますね!」
琴音「(プレイヤアアアアア!園田先輩ルートに行くんだね!?そういうことだよねこれ!?)」
圭 「それなら見学に来るといい。放課後は毎日活動している。」
琴音「わ~行きます行きます!場所って弓道場ですか?」
圭 「ああ、体育館から西に行ったところに…いや、まず体育館の場所だが…」
透吏「圭、どこへ行くんだい?」
琴音「(この感じは…!)」
圭 「学校では園田と呼べと言っているだろう。小日向。」
琴音「(やっぱりそうだ小日向透吏!誰もが虜になる学園の王子様!人気投票1位に鎮座し続ける絶対覇者の攻略対象…!)」
生徒「透吏様!早く行きましょうよ~!」
透吏「うん。でも、少しだけ待っててね、子猫ちゃん。」
生徒「キャ~!」
圭 「相変わらず喧しいな。何の用だ。」
透吏「圭と話したかっただけだよ。今日も可愛いね…いや、綺麗の方がいいか。」
圭 「そうかありがとう失礼する。」
透吏「つれないなぁ。見かけない顔を連れていたから気になったんだよ。君が話題の転校生ちゃん?」
琴音「乙羽琴音です!道に迷って、園田先輩に助けてもらいました!」
透吏「なるほど。優しいじゃないか。」
圭 「揶揄うのはよせ。行くぞ、乙羽。」
琴音「はい!」
透吏「圭と仲良くしてあげてね。ああ、もちろん僕とも、ね?転校生ちゃん。」

 


SE:チャイム


琴音「(……はっ。私は今まで何を。)」
琴音「(そっか。久々すぎて忘れてたけど授業ってスキップされるんだ。なんかステータス的なものは獲得したっぽいけど……まあ後々わかるだろうしいっか。とりあえず葉月のところ行こ。)」
琴音「葉月?いるー?」
琴音「(…返事がない。あ、でもクラスの人からマップはもらえた。つまり何かのイベントと重なって、そっちが優先されたってことかな?)」
琴音「(行動できるのは1ターン2回まで。昼休みが終わったら次は放課後だから、実質残りは3回。行ける場所は…)」

 


SE:ドア開く音


琴音「ああ~!空気が美味しい!いい気分転換になるなぁ。」
琴音「(…なんで屋上?このプレイヤー、気になったものに片っ端から手出すタイプだ絶対そう。)」
雅 「おい、誰だてめぇ。」
琴音「(あ~この感じ!察した!攻略対象だこれ!)」
琴音「ごめん、邪魔しちゃった?私は乙羽琴音。2年A組。」
雅 「A組の……転校生か。D組、竜崎雅。ここは俺のシマだ。わかったらとっとと出てけよ。」
琴音「あなたの場所ではないと思うけど……まあいいや。じゃあね!」
雅 「え、ちょ、おい待てよ!少しは食い下がるとかしねぇのか!」
琴音「(たぶんプレイヤーの好みじゃないから)しないかな。(余計なフラグがたつのは)ごめん(だし)。」
雅 「俺様のお昼寝タイムを邪魔したんだ。ただで帰れると思うなよ。」
琴音「ええ、でもまだお金とかはちょっと準備できてなくて、っていうかカツアゲはたぶん炎上するからやめたほうが」
雅 「ああん?何訳わかんねーこと言ってんだよ。話し相手になれって言ってんの。」
琴音「ああ、そういう……雅はいつもここにいるの?」
雅 「詮索すんな。昼休みだけだよ。授業はちゃんと出てる。」
琴音「あ、やっぱり?提出物とかもきっちり出してそうだもんね。」
雅 「おいこら、分かったような気になってんじゃねーぞ。」
琴音「あはは、ごめ~ん。(知ってるんだよね!過去シリーズ全部出てるからね!)」
雅 「部活は。決めたのか。」
琴音「ううん、まだ。雅は何部なの?」
雅 「色々。人の足りないところに顔出したりとか、大会出たりとかだな。水泳以外は何でもやる。」
琴音「運動神経いいんだね!私はどうしようかな。弓道部とかカッコいいなって思う
   けど。」
雅 「!弓道、好きなのか。」
琴音「好き、かどうかはわからないけど。憧れはあるかな。」
雅 「わかる!憧れるよな!あの凛とした佇まい、しなやかな動きから放たれる鋭い矢!静と動、あのギャップがたまんなくかっけーんだよ!話がわかるじゃねーか!」
琴音「あ、あはは!そんなに好きなんだ。」
雅 「おう!でも弓道部は人数多いから助っ人に呼ばれることもねーんだよ。いいよなぁ……俺も一回やってみてー……。」
琴音「へーそうなんだ。」
琴音「(放課後、見学に行くフラグが立ってるんだよね。キャラ的には一緒に行く?って誘うのが自然…)」
琴音「似合いそうだよねー!かっこいいと思う!」
琴音「(ああー!フラグ管理的には正解だけど人間としては嫌すぎる選択~!)」
雅 「あ?おだてても何も出ねぇぞ。」
琴音「(順当に好感度下がってる!先輩ルートしか見えてないなこのプレイヤー!)」

SE:ドア開く音

葉月「竜崎さーん。って、あれ?琴音ちゃんもいる。二人って友達だったんだ。」
琴音「葉月!まあ色々あってね。」
雅 「んだよ、何か用か?イインチョー。」
葉月「先生が竜崎さんのこと探してたよ。職員室で待ってるって。」
雅 「だーりぃっ。HRのときでいいだろーが……じゃーな、転校生。もう来んなよ。」
琴音「あー。いってらっしゃい。」
葉月「琴音ちゃんも行こう?ここ使ってるのバレると怒られちゃうから。」
琴音「え、そうなの?やば早く行こ!」
葉月「あ、走ると危ないよ。待って~!」


SE:走る音

 


SE:チャイム


琴音「(最終フェーズ。まさかの追加チュートリアル発生で職員室に連行されたけど……まああと一回行動残ってるし、どうせ弓道場に向か…向かってない!?何がしたいのプレイヤー!私には君がわからない!)」
琴音「ここは…」
琴音「(空き教室。いかにも何かありそうな感じだけど…別のフラグが立ってたらイベントは起こらないんじゃ?)」

SE:ドア開く音

透吏「おや、昼間の。随分積極的なんだね。」
琴音「小日向先輩!ごめんなさい!ノック忘れてて。」
透吏「いいんだよ。まさかこんなところに人がいるなんて思わないだろう。それで、空き教室に何の用があるのかな?」
琴音「いえ、特には。探索して回ってたんです!」
透吏「そう。何か面白いものはあったかい?」
琴音「そうですね、一番印象に残ったのは…」
琴音「(来た、好感度調整イベント!全体に影響するからルート固定を目指すなら慎重に選ぶべき選択肢…!)」
琴音「先輩に会えたことですね!強烈な出会いだったので。」
琴音「(あああああそれ小日向先輩ルートの選択肢!プレイヤーやめて!私はどっつかずでみんなに媚びを売る尻軽女にはなりたくない!)」
透吏「ふふ、ありがとう。嬉しいよ。」
琴音「(ああ、罪悪感…!)」
透吏「でも……君が見ているのは本当に僕、かな?」
琴音「え…?」
透吏「君の瞳に、僕以外の誰かが映っている気がするんだ。ああ、妬けるね。ずるい人だ。」
琴音「せ、先輩…?」
透吏「なんてね。ごめん、少しいじわるだったかな。」
琴音「いえ、大丈夫です。びっくりしましたけど。」
透吏「さっきのことは二人だけの秘密だよ。僕は理想の王子様でいたいんだ。」
琴音「秘密…わかりました。誰にも言いません。」
透吏「ありがとう。暗いから気を付けて帰るんだよ。また明日、琴音ちゃん。」

SE:ドア閉じる音

琴音「(……なに、今の。なんか顔が熱い。相手は女の子なのに。)」
琴音「う、うわああああ!なにこれ!なにこれええええ!」

 


SE:システム音


琴音「(こうして一日目が終わった。新たな環境、懐かしいはずの初めまして。小さく芽吹いた感情。この奇妙な感覚は、どこか覚えがある様な、ないような……それが恋だと気づくまで、あと29日。)」

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