top of page

遅れたプレゼント

登場人物:4人(男:2人 女:1人 不問:1人)

・父 …男性

・母 …女性

・息子…男性

・? …不問

父 「さて、今日はクリスマスイブ!」

母 「そして今は二十三時!」

父 「息子は自分の部屋ですやすや状態!」

母 「つまり今からは私たちのサンタターイム!」

父母「イェーイ‼」

父 「と、いうわけでやって参りました、今年のサンタタイム。未だにサンタさんを信じている愛しき我が息子のために我々は絶対に正体を晒してはいけない」

母 「ええ、ええ。今年も例年通り正体を明かすことなく息子の枕元にこっそりプレゼントを置いて帰ってくるのよ!帰ってくるまでがサンタタイムよ」

息子「父さん母さんうるさいよ!寝られないじゃないか」

父母「ごめんなさい」

父 「(小声)お前がうるさいから怒られたじゃないか」

母 「(小声)うるさかったのは貴方でしょ」

? 「まぁまぁお互い様ということでじゃな」

父 「む、今日は折角のクリスマスだしな、喧嘩をしていても始まらないか」

母 「そうね、ここはお互いが悪かったということで一旦この話は置いておきましょう」

? 「うむうむ、して、今年のクリスマスプレゼントはなんじゃね?」

父 「よくぞ聞いてくれました、今年の息子のサンタさんへのお手紙に書かれていたのはー」

母 「ウンテンドーウイッチ!今話題のゲーム機ね」

? 「確かに今年はウンテンドーウイッチが欲しいという手紙が多かったのぅ」

父 「そして我々が用意したのはー」

母 「ウンテンドーシックスフォー‼」

? 「いやなんでじゃ、それ20年前くらいに流行ったゲーム機じゃろ?」

父 「ねだれば最新のものを買ってもらえるという息子のその幻想をぶち壊す!」

母 「私たちはね…息子に強く育ってほしいの」

? 「いやそれにしたってウンテンドーシックスフォーは酷くないかのぅ?」

父 「だって面白いんですよ?シックスフォー」

母 「ね!私たちも子供のころみんなで集まって良く遊んだわ」

? 「いやいや、面白いとかそう言う話ではなくてじゃな?せめてもうちょっと最近のゲーム機で…スィーとかな?あるじゃろ?」

父 「今時スィーってw」

母 「時代遅れねぇこのおじいさんw」

? 「ぶん殴りたい」

父 「おぉコワイコワイ、暴力的なのは息子の教育上悪いからやめてくださいよ?」

母 「そうね?あの子が変な風に育ったらどうするのよ」

? 「じゃあまず自分たちがまともになることをお勧めするぞい」

父母「???」

? 「その意味が分かりませんという顔を辞めんか…」

? 「はぁーこのような両親に育てられた息子がかわいそうじゃわい…」

息子「おじいさんもそう思う?僕もこの両親にはうんざりしてるんだよ」

父 「なにを言うか息子よ」

母 「私たちは貴方が強くまっすぐ育つことを願ってあえて辛い選択をしているのよ」

息子「あんたたちを見てたら誰でもまっすぐに育つと思うよ」

父 「嬉しいことを言ってくれるな!我が息子よ!」

母 「私たちの背中を見てまっすぐ育っているのね!」

? 「どう考えても反面教師だと思うがのぅ」

息子「そうなんですよ、おじいさん!聞いてくださいよこの両親ときたら……」

父 「お?なんだ?本人の前で自慢とかやめてくれ息子よ、照れてしまうじゃないか」

息子「去年のクリスマス、僕が何を頼んだと思います?非道戦死ガムダムエックスのプラモデル頼んだんですよ」

? 「そう言えば去年はそんなのがはやっとったのぅ」

息子「それで朝起きて枕元に置かれてたのは自動戦死ガムダムゼータの適役のディ・オのプラモデルなんですよ!」

息子「まず古い!ゼータは30年くらい前の作品だよ!」

息子「しかも主役機じゃない!なんで敵役のプラモなんだよ!ガムダムって言ってるじゃん!」

息子「最後にあれ古いプラモだから接着剤無いと作れないじゃん!せめて一緒に置いておいてよ!」

息子「はぁー…はぁー…」

? 「これは酷い」

母 「そうね、せっかくのサンタさんからの送り物にケチをつけるのは駄目よ?」

? 「違うそうじゃない」

父 「うむ、ディ・オは当時敵役でも人気があってなぁ、主役のゼータより人気があったんだぞ?」

? 「そこでもないわい!」

父母「???」

? 「だからその顔を辞めんか!」

? 「はぁ……ところでさっきから気になっとったんじゃが…」

母 「?なんです?」

? 「いや、お前らの息子思いっきり起きとるんじゃが?」

父母「え!?」

? 「いやいやいや、さっきから思いっきり会話に入ってきておったろうが」

父 「息子よ…なぜここに?」

息子「いやあんたたちがうるさくしてたからでしょうが」

母 「は、早く寝ないとサンタさんが来ないわよ?」

息子「いや、もうサンタさんとか信じる年じゃないし」

父 「な!?そんな馬鹿な!純粋無垢でちょっと天然で抜けたところのある間抜けな息子ならこの年になってもサンタさん信じていると思っていたのに!」

息子「おい」

? 「ただの悪口じゃなこれ」

母 「で、でもサンタさんの正体がまだばれたわけじゃないから…」

息子「いやさっきも言ったけど毎年枕元にくだらないプレゼント置いてるのはあんたたちだってもう知ってるので」

父 「そ、そんな……いつから…いつからバレていたんだ…」

息子「五年くらい前かな?イブの夜にうとうとしてたら突然両親が「サンタターイム」とか叫び出してくねくね変な動きしながら部屋に入ってきて枕元に欲しくもないプレゼントおいていったんですよね」

? 「うわぁ…トラウマものじゃなそれ」

息子「僕はそれまでサンタさんは子供の夢をぶっ壊す酷い奴だと思ってたんだけど」

? 「酷い風評被害じゃなぁ」

息子「その時悟ったよね、本当にクズだったのは自分の両親だったんだなって」

? 「誤解が解けたようで何よりだわい…いや現実はかなり残酷じゃけれども」

父 「そんな…我々は良かれと思って…」

母 「それが息子にそんな思いをさせていたなんて…」

? 「はぁ…まったく…しょうがないやつらじゃのう」

息子「おじいさん?これは?」

? 「今まで来れなかった分、それでこいつらも許してやってくれ、少年」

息子「これ…ウンテンドウウイッチ!?」

父 「おじさん?これは一体…って」

母 「もう居ない…」

息子「ところでずっと気になってたんだけど」

父 「なんだい?息子よ」

息子「あのおじいさん誰?」

 

bottom of page