FALLING
登場人物:4人(男:2人 女:1人 不問:1人)
・A …男性
・K …男性
・C …不問
・R …女性
A「なあ、空から”何か”が降ってくるとしたら何がいい?」
K「突飛な話だな。漫画の読み過ぎか?」
A「いや、なんとなく。ほら、よく言うだろ?雨じゃなくて飴が降ってきたらいいのになー……みたいな。」
K「……雨で外に出られないからって、そんな安直な。」
A「いいだろ別に!どうせお前も暇してるんだから付き合ってくれよ。」
K「俺を暇人の括りに入れるな。今朝の新聞を読むので忙しいんだ。」
A「つれねーなぁ。俺より活字かよ。」
K「お前の脳みそより有益な情報が詰まってるからな。当然だろ。」
C「……と言いつつも、なんやかんやでいつも付き合ってあげてますよね。Kくん?」
K「C。余計なこと言うな。」
A「お前のそういうところ、俺は好きだぜ。」
K「は?」
A「あ、ウッス……。」
C「あははっ。それで、何の話でしたっけ?振るわせるとしたら飴と鞭どっちがいいか……って話?僕は槍かな。鞭じ
ゃあ生ぬるいですからねぇ。」
K「違う。色々間違ってるしお前の性癖なんて聞きたくなかった。」
A「空から何か降ってくるとしたら何がいい?って話だよ。」
C「なるほど。ファンタジーな話でしたか。うーん悩みますねぇ。Kくんは何がいいです?」
K「何でもいいが……雨と雪以外のものが降ってきたら困る。」
A「夢ねぇなお前。もっといろいろあるだろー?UFOとか隕石とか星とか!」
C「Aくんも大概現実思考じゃないですか……僕はそうですね。蝋燭?いや、蝋だけの方がいいか。」
K「お前はSMから離れてくれ……。」
A「それで、Kは雨と雪以外で何が降って欲しいんだよ。」
K「ああ?そんなこと言われても……。」
A「女の子?」
K「殴るぞ。」
A「暴力反対!!!!」
C「この間金曜ロードショーでやってましたねぇそんなアニメ。」
A「さっきから文句ばっかじゃねーか!Kのバーカ!KY!!!!」
K「なんだその小学生みたいな煽り文句は。」
A「ちなみにKYは”空気読めない”の略じゃなくて”Kの野郎”の略だ!!!!」
K「どうでもいいし何一つ煽れてないじゃねぇか……。」
C「悪口にすらなってませんね。」
A「なーなーちょっとは真面目に考えろよ~もしくは面白いボケかませよ~。」
K「急にハードルあげやがったぞこいつ。」
C「Aくん、ハードルあげるなら自分が回答した後にしないと。Kくんにマウントとれないですよ。」
K「お前はどっちの味方なんだ……。」
A「えー、じゃあ俺わたあめがいい!あれ落ちてきたらうまそうじゃね?」
C「あれって……まさか雲のことですか?」
A「ん、そうそう。一回食べてみてぇんだよな~。」
K「……こいつがここまでアホだったとはな。」
C「驚きましたね。」
A「あ?どういうことだよ。」
K「そういうことだよ。」
A「いや、わっかんねぇよ!」
R「お前たちやかましいぞ。ここは動物園か何かか?」
K「R先生、すみません。うちの馬鹿が。」
A「馬鹿って誰のことだよ。俺か?」
K「他に誰がいる。」
A「手前ぇ!!!!」
R「うるさい!!!!はあ、やはり動物園ではないか……。」
C「あははは。今、空から何かが降ってくるとしたら何がいいかーっていう話で盛り上がっていたんですよ。先生もご
一緒にいかがです?」
R「なるほど、もしも話か……そうだな、少しだけ付き合おう。」
A「お、Rちゃん先生ノリいいね。どっかの誰かさんとは大違い。」
K「大違いで結構。あと先生にちゃん付けはやめろ。」
A「何て呼ぼうと俺の勝手だろー?な、Rちゃんセンセ。」
R「なんだ、単位をドブに投げ捨てられたいのか?」
A「ごめんなさぁい!!!!」
C「ちなみにAくんはわたあめ(笑)だそうですよ。……わたあめ(笑)」
A「なんで二回言ったの?なんで追加攻撃してくるの???」
R「なるほど、わたあめ(笑)か……。」
A「ねえなんでみんなして俺をタコ殴りにするの!?いじめ!?」
K「日頃の行いのせいに1ペリカ。」
C「あ、僕3ペリカ!」
R「賭け事は卒業してからにしろ!」
A「間違ってないけどツッコミどころはそこじゃないんだよなぁ!」
C「僕は蝋で……Kくんは保留のままですね。」
R「今しれっとヤバい単語が聞こえたな……。うむ、降ってきてほしいもの、か。」
A「やっぱり恋人?」
R「そうだな、結婚適齢期である30の誕生日を迎えた今日、そろそろ恋人の一人や二人は確保せねば……ってやかまし
いわ!」
A「え、今日誕生日なの?おめでと!やったじゃん夢の魔法使い。あ、センセの場合は女剣士?」
R「次の査定は救済措置がないと思えよ?」
A「ごめんて!俺の単位を人質にしないで!!!!」
K「馬鹿。いくらなんでも失礼が過ぎるぞ。」
C「そうですよ。妙齢の女性に結婚関係の話題を振っても場が凍るだけですからね。生暖かい目で見守りましょう?」
R「お前はどの立場からものを言っているんだ……?
ゴホンッ……まあいい。人恋しいのも事実ではあるが、そんな夢物語に己の希望を託すほど私は落ちぶれてはいな
い。」
A「お、じゃあなにがいいの?」
R「金だ。」
A「私欲にまみれてんじゃねぇか!!!!」
R「仕方ないだろう欲しいんだから!残業しても残業しても楽にならない生活!じっと手を見れば増えるペンだこ湿布
の跡!」
C「こんなに激しい宮沢賢治の引用は初めて聞きましたねぇ。」
K「先生落ち着いて。」
R「あああ金が……金が欲し……はっ!私は何を。なんだかとてつもない醜態をさらしていたような。」
C「録画してましたけど見ます?傑作ですよ。」
K「鬼かお前。やめてやれ。」
A「ま、いいんじゃねーの?欲望に忠実なのはアリだと思うぜ。少なくとも、本音吐きだせないまま溜めこむよりはい
いことっしょ。」
R「A、いい事言うじゃないか……。」
A「ってR先生が前に自分で言ってたぜ。」
R「自画自賛してしまったじゃないか!」
C「いえ、僕も同感ですよ。隠すよりは曝け出した方がいいってね……ねぇKくん?」
K「な、なぜ俺に振る。」
C「Kくんだけ答えていないからですよ。空から何が降ってきてほしいか。思いついてはいるんでしょう?」
K「そ、それは……」
A「あー!なんだよそれなら早く言えよ!で、なになに?気になるんだけど!」
K「は、いや、だから」
R「ほう、Kからそういう類の話はなかなか聞けないからな。興味深い。」
K「せ、先生!?俺はそんな非現実的な」
A「そういうのはいいから!言ってみろよ。な?」
K「は……はぁ、笑うなよ?」
A「笑わねーって。なあ?」
C「ええ、聞かせてください。」
K「……本当に笑うなよ。」
R「ああ。」
K「お、俺は……」
ACR「うん。」
K「ーーっ」
キーンコーンカーンコーン(チャイムの音)
C「あ、予鈴。」
A「やっべえ次パゲ先の授業じゃん!遅れたら居残りさせられる!!」
R「まずい、会議の資料を作らないと……すまないK。また後で聞かせてくれ。」
K「え。」
A「わりーな!後でじっくり聞くからよ!!!!」
K「いや。」
C「放課後にでもまた集まりましょう。では。」
K「ええ……嘘だろお前ら。……まあ、このまま話さない方がいいのかもな。皆に幸福の雨が降りかからんことを、な
んて。クサすぎて笑われちまうに決まってる。」