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この先の僕らは

登場人物:4人 (男:2女:1人 不問:1)

・律     :不問

・宗明    :男性

・透夏    :男性

・冬希    :女性

律 「春祭り?」
透夏「そう。冬希がさ、合格祝いにみんなでって。」
律 「いいね!ちょうど春休みだし。」
宗明「合格祝いだぁ?あいつ、うちの高校なんか全然余裕だっただろうが。」
透夏「そんなこと言って、誰よりも喜んでたのはどこのどいつかな?」
宗明「うるせぇ!てめーらはただ遊ぶ口実が欲しいだけだろ!」
律 「まあまあ。この一年、みんなが集まることなんてほとんどなかったし。いい機会なん
   じゃない?」
透夏「確かに…久しぶりだね、俺達4人が揃うのは。」

 


BGM:がやがや祭の音

律 「宗明。早いね。」
宗明「用事が早めに終わったんだよ。つーか、なんで制服なんだ?めんどくせぇ。」
律 「ああ、それは…」
冬希「わたしがお願いしたの。」
宗明「!」
律 「冬希!」
冬希「どう?似合ってる?」
律 「うん!すごくいい感じ。だよね、宗明?」
宗明「…はっ。」
律 「鼻で笑った!?最低だよ宗明!」
冬希「大丈夫だよぉ、りっちゃん。あれはしゅーちゃんなりの照れ隠しだから。」
宗明「馬鹿言ってんじゃねーよ。お前のことだから、食いもんに夢中になって汚すんだろうなって思っただけだ。」
冬希「あー。やりそ~。」
律 「そこは気をつけようよ…。」
透夏「おや、全員揃っているね。」
律 「透夏。手伝い終わったの?」
透夏「今日はもういいってさ。お駄賃に出店の引換券貰ったよ。これみんなの分。」
律 「いいの?僕たち何もしてないけど。」
透夏「ちょうど4枚綴りだったからね。これでご飯でも食べようか。」
冬希「やったぁ。ありがとうお兄ちゃん。」
宗明「おら、さっさと行くぞ。腹減った。」
冬希「あ、待って~しゅーちゃーん!」
律 「…あははっ。」
透夏「律、どうしたの。」
律 「なんか、昔に戻ったみたいだなって。」
透夏「…ああ。今日は楽しくなりそうだ。」

 


律 「ふーっ、おいしかった!屋台のお好み焼きなんて久々に食べたよ。」
宗明「全然足りねぇ…からあげ買ってくる。お前らは?」
透夏「俺も行く。ついでにゴミ捨ててくるよ。」
律 「じゃあこれお願い。冬希は…あれ、珍しいね。食べきれない?」
冬希「…うん。持ち帰ろうかなぁ。」
透夏「残しておいても食べないだろう?もういらないなら捨てていいよ。」
冬希「でも…」
宗明「…はぁ。いらねぇなら貰うけど。」
冬希「しゅーちゃん。いいの?」
宗明「食い物無駄にするよかいいだろ。寄越せよ。」
冬希「ありがとう。」
透夏「…。」

BGM:がやがや遠め

宗明「あいつ体調でも悪いのか。いつもはもっと食ってるだろ。」
透夏「最近はそうでもないよ。特にここ一年は…受験のストレスかな。」
宗明「んなわけあるか。お前ら頭いいだろ。」
透夏「まあ色々あるんだよ。思春期だからね。」
宗明「はぁ?訳わかんねぇ。」
透夏「気になるなら本人に聞けばいいのに。」
宗明「…野暮だろ。俺だってそれぐらいわかる。」
透夏「ははは。宗っていいやつだよね。」
宗明「はぁ?目腐ってんのか。」
透夏「見る目はある方だよ。見る目だけはね。」
宗明「あ…?」
律 「二人ともー!あっちで演舞やるって!」
冬希「一緒に見よ~!」
透夏「ああ!今行く!…行こう、宗。」
宗明「…おう。」

 


BGM:演舞・和楽器

律 「うわぁ…すごい。こんなに派手だったっけ。」
透夏「きっと変わってないんだろうけど…昔は興味もなかったからね。」
宗明「今も大して興味はねーよ…。」
透夏「ああ、あそこで舞ってるの副会長だ。」
律 「え、そうなの!?全然気づかなかった。」
透夏「化粧でだいぶ印象変わるよね。ちなみにあっちで太鼓叩いてる人は、昔よく行ってた駄菓子屋の…」
冬希「…しゅーちゃん。」
宗明「あ?どした。」
冬希「お手洗いどこだっけ。」
宗明「はぁ?お前……はぁ。行くぞ。」
律 「あー!あの優しいお兄さんか。懐かしいな。宗明は覚えて…あれ?宗明と冬希は?」
透夏「…さぁ。トイレにでも行ったんじゃないかな。」
律 「演舞の途中なのに…そうだ、動画撮っておこう。」
透夏「いいね、それ。きっと喜ぶよ。」

BGM:遠のく

宗明「おら、ここだ。」
冬希「ありがとうしゅーちゃん。そこで待っててねぇ。」
宗明「おー。早くしろよ。」
宗明「(…やっぱ、なんかおかしいよな。こんな簡単な道、あいつがわからないわけ…)」

 

SE:抱きつく音

宗明「!?なんだっ」
冬希「振り向いちゃだめだよ。」
宗明「冬希?お前何して」
冬希「真剣なお話、聞いてくれるかな。」
宗明「はぁ?なんだってこんな体勢で…おい、冬希。」
冬希「やだ。離さない。聞いてくれるまで離さないよ。」
宗明「聞く。聞いてやる。だから離せ。」
冬希「…。」
宗明「はぁ…どうしたんだよお前。なんかあったのか。」
冬希「何もないよ。ずっと思ってることだから。」
宗明「なんだよそれ…ずっとって、いつから。」
冬希「ずっとだよ。出会ってからずっと。わたしね、みんなと一緒に居られたらいいなって思ってたの。でも、みんなは先に高校生になって…この一年、みんなといられない時間が少し恨めしかった。」
宗明「しょうがねぇだろ、それは。」
冬希「うん。しょうがない。でも、そのおかげで分かったことがあるの。」
宗明「なんだよ。」
冬希「きっとこの先、みんなばらばらになっていく。りっちゃんも、お兄ちゃんも、しゅーちゃんも…それぞれ違う道に進む。そのとき、わたしはどうしたいのか…考えたの。」
宗明「…。」
冬希「わたし、しゅーちゃんと一緒に居たい。これからもずっと…一緒に居させて。」
宗明「な、……。」
冬希「……ごめんね。いきなりこんなこと言われたら、困っちゃうよね。」
宗明「困ってねぇ、けど…少し時間くれ。適当に返事、したくない。」
冬希「…うん。わたし待つよ。しゅーちゃんが優しいの、知ってるから。しゅーちゃんのこと大好きだから。」
宗明「…ちょっと、便所。」
冬希「うん。行ってらっしゃい。」

宗明「(あいつ、言葉の意味分かって言ってんのか?あれじゃまるで…)」


(冬希「わたし、しゅーちゃんと一緒に居たい。これからもずっと…一緒に居させて。」)

 

宗明「(…違う。あいつは本気で、あんなガキみてぇな願いを…なのに、俺は…)」
宗明「…はぁ。最低だ。」

 


律 「家族旅行か。いいなぁ。」
宗明「くそ透夏の野郎…旅行行くなら課題置いて行けよ!写せねぇだろうが!」
律 「なにその理不尽な怒り…因果応報でしょ。春休み中遊びほうけてたんだから。」
宗明「んなことはわかってんだよ。あーくそっ。律、ここ答えなんだ。」
律 「どこ?…あー、僕もわかんなかったとこだ。」
宗明「だめじゃねぇか。使えねぇな。」
律 「僕も古文は苦手なんだよ!…宗明、なんか今日機嫌悪くない?」
宗明「は?どこが。」
律 「今日というか、ここ最近。会うたびにイライラしてる気がする。何かあったの?」
宗明「なんもねーし。詮索してくんなようっぜぇな。」
律 「それ!冗談だってわかってても、少しは傷つくんだよ?言われる側の気持ちも考えないと。」
宗明「!……悪かった。」
律 「いいよ。お腹すいたし、何か頼もうか。食べたいものある?」
宗明「ピザ。味は任せる。」
律 「了解。じゃあクォーター系にしようかな。春限定のやつは…」
宗明「(だめだ。ここんとこ何も手につかねぇ。あの日からずっと…)」
律 「…酷い顔。本当に何があったの。」
宗明「……。」
律 「頼りないかもしれないけど、話聞くぐらいはできるからさ。一人で抱え込まないでよ。」
宗明「……お前、誰かとずっと一緒に居たい、って。思ったことあるか。」
律 「え、ずっとって、どのくらい?」
宗明「たぶん、一生。この先何があっても隣に居たいって思ったこと、あるか。」
律 「うーん、そうだな…ないわけじゃないよ。現実的に難しいってわかってるから、思うだけだけどね。」
宗明「なんでだよ。」
律 「人生いろいろあるでしょ。それこそ宗明たちとはずっと友達でいたいし、今みたいに馬鹿なことして笑っていられたらいいなって思うけど…いつまでもこうはいられない。就職、結婚…考えたくないけど、死んじゃったりとかさ。」
宗明「…。」
律 「だから、ずっと一緒に居たいって思っても口には出せない。子供の頃なら、何も考えずに言えたのにね。」
宗明「…そう、かもな。」
律 「宗明は?誰かと一緒に居たいって、思ったことあるの?」
宗明「わかんねぇ。でも…一緒にいるなら、俺はそいつを、一生かけて幸せにしたい。」
律 「わあ…なんか、プロポーズみたいだね。」
宗明「そんな綺麗なもんじゃねぇよ。」
律 「?そうかな。」
宗明「ただの我儘だ。だからビビっちまう。ビビって、踏み出せない。」
律 「…何が怖いの?」
宗明「知って、拒絶されるのが怖い。拒絶されなくても、俺に合わせて気を遣われるのが嫌だ。」
律 「確かに、受け入れてもらえないのも、ぎくしゃくするのも嫌だよね。でも…」
宗明「…。」
律 「宗明のことを大切にしたいって考えてる人なら、きっと受け止めて、少しでも歩み寄りたいと思うんじゃないかな。それはただの気遣いなんかじゃなくて、もっとこう……」

SE:ピーンポーン

律 「あ、はーい!」
宗明「おい、なんだよ。話せよ!」
律 「いやピザ!またあとで話すから!」
宗明「待たせておけばいいだろ!逃げんな!」
律 「そんなつもりは…っあーもう、わかったよ!それは気遣いじゃなくて、愛!!!!好きだから理解したいってこと!!!!…受け取ってくる!」
宗明「……そういうもん、か?」

 


SE:通知音

冬希「ん?……!」
透夏「どうしたの。」
冬希「…んーん。なんでもないよぉ。行こうお兄ちゃん。」
透夏「……ああ。」

 


BGM:がやがや

律 「どうだった?僕A組。」
透夏「俺はD。結構離れたね。」
律 「宗明は?」
透夏「俺と同じD組。」
律 「じゃあ休み時間はそっち行こうかな。また後でね。」
透夏「ああ。」

SE:ドア開ける音

透夏「(…いた。)」
透夏「おはよう。律はA組だってさ。」
宗明「おー。」
透夏「課題ちゃんとやってきた?」
宗明「途中まで。あとで写させてくれ。」
透夏「今やりなよ。HRまでまだ時間あるし。」
宗明「いや、いい。コピーだけ取る。」
透夏「…そう。どうぞ。」
宗明「おー。」
透夏「……冬希がさ。」
宗明「!」
透夏「旅行の土産、あとで持ってくるって。俺が渡しておこうかって言ったんだけど、自分で渡したいってきかなかったんだ。」
宗明「ああ、そうか。」
透夏「変な所で律義なんだよ、あいつ。」
宗明「そうだな。」
透夏「……。」

SE:チャイム

宗明「やべ、予鈴。これ借りる!」
透夏「廊下走るなよ。コピー機は逃げないから。」
宗明「わーってるよ!」

SE:走り去る音

 

 


BGM:がやがや遠め

律 「入学おめでとう、冬希。」
冬希「わ~、ありがとうりっちゃん。これお土産のバターサンド。」
律 「ありがと。どこ行ってきたの?」
冬希「箱根だよぉ。…しゅーちゃんは?」
律 「あー、用事があるって言って、そそくさ出て行っちゃったらしいよ。」
冬希「そっかぁ。じゃあまた次の機会に~。」
律 「だね。僕そろそろ帰るけど、冬希は?」
冬希「友達と約束してるんだぁ。ごめんね。」
律 「そっか。楽しんできてね!じゃあまた明日!」
冬希「うん。また明日~。」

SE:歩き去る音

冬希「…そこで何してるの?」
透夏「ああ、冬希。奇遇だね。」
冬希「ずっと見てたでしょ?それぐらい気づくよ。」
透夏「ははは。鋭いね。」
冬希「生徒会のお仕事終わったの?」
透夏「いや、まだ。だいぶかかりそうだから先に帰ってていいよ。」
冬希「そっか。頑張ってね。」
透夏「ああ、冬希もね。」
冬希「……うん。」

BGM:がやがや遠のく

 


SE:歩いてくる音

冬希「しゅーちゃん。おまたせ、しちゃったかな。」
宗明「…いや、別に。」
冬希「そっかぁ、よかった。これお土産。バターサンドだから早めに食べてね。」
宗明「ああ。」
冬希「……。」
宗明「……返事、ずっと考えてんだけど。」
冬希「…うん。」
宗明「まとまらねぇんだ。だから、思ってることそのまま喋ってもいいか。」
冬希「うん。聞かせて。」
宗明「あの後…初めて、将来のこととか、これからどうしたいかとか、まじめに考えた。なんとなくだけどよ、今みたいなのがずっと続くと思ってたんだ。そんなわけねーのに。…ガキみたいだろ。」
冬希「しゅーちゃん…。」
宗明「お前らといるのが当たりまえになってた。だから将来バラバラになるとか、あんま考えたくねぇし。もしそうなら、つまんねーなって思った。大人になんか、なりたくねぇなって……でも、違ぇんだよな。お前らにはお前らの、俺には俺の人生がある。こんな我儘でお前らを縛り付けるのは、違う。俺はそんなこと望んじゃいない。」
冬希「じゃあ、わたしのこれも我儘?」
宗明「わかんねぇよ。お前の想いが俺と同じなら、そうかもな。」
冬希「…しゅーちゃんは、どうしたいの。何を望んでるの。」
宗明「俺らみんなが笑顔で、幸せに生きていけたらそれで十分だろ。たまに遊んで、話して、こんなことあったな、バカやってたなって笑えれば、それで…。」
冬希「そっか、しゅーちゃんには伝わってなかったんだね。」
宗明「?何が…」
冬希「しゅーちゃん、わたしはね、しゅーちゃんの彼女になりたいの。」
宗明「……は。」
冬希「誰よりも近くにいたい。しゅーちゃんを独り占めしたい。いつか家族になって、ずっと一緒にいたいの。それがわたしの、幸せ。」
宗明「本気で…言ってんのか。」
冬希「そうだよ。……わたしのこと、嫌いになった?」
宗明「っんなわけねぇだろ!…くそっ。なんだよ。なんだよ…!」
冬希「しゅー、ちゃん?」
宗明「全部俺の勘違いじゃねーか…。」
冬希「へ…えぇ?」
宗明「あー、その…悪い。ちょっとタンマ。色々パンクしてる。」
冬希「うん。ゆっくりでいいよ?」
宗明「その、だな。俺は…………俺もだ。」
冬希「……わたしのこと、好き?」
宗明「っそうだよ!ずっと…ガキの頃から。」
冬希「!…そっかぁ。そうだったんだぁ。えへへ。」
宗明「なに笑ってんだよ。」
冬希「おんなじ気持ちなんだなぁって。嬉しくて。」
宗明「…全部同じかは分かんねぇだろ。」
冬希「そう?じゃあお話しようよ。わたしが考えてたこと、しゅーちゃんの勘違い、これからのこと…全部話したいし、聞きたい。」
宗明「…長くなるぞ。」
冬希「いいの。時間はいっぱいあるから。」
宗明「…冬希。」
冬希「なぁに。」
宗明「俺は、お前を───」

 


律 「つ、付き合うことになった!?」
冬希「そう~。ね?しゅーちゃん。」
宗明「…おう。」
律 「ええー!おめでとう!透夏は知ってたの?」
透夏「さっき聞いた。やっとかぁって感じだよ。」
宗明「は?んだよその”ずっと前から知ってました”面は。」
透夏「すごく分かりやすかったけど。自覚ないんだ?」
宗明「はぁ!?どこがだ言ってみろ!」※同時
律 「ええ!?全然気づかなかった!」※同時
透夏「うわぁうるさ。」
宗明「おいこら被せんな!」
律 「ごめん!わざとじゃないんだよ!」
冬希「ふふふ。仲良しだねぇ。」
透夏「…よかったね。冬希。」
冬希「うん。…お兄ちゃんは、嬉しい?」
透夏「もちろん。どうして?」
冬希「…ううん。わたしも嬉しいよ。これでずっと一緒だもん。」
透夏「……そうだね。ずっと、一緒だ。」

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